2019年度 活動日誌
3月 活動日誌
2020年3月31日
GJOコーディネーター 久保 賢子
「新型コロナウイルス」この言葉を聞かない日はありませんでした。このウイルス関連のニュースで埋め尽くされた一か月。今振り返れば、3月初めの一週間は全て通常どおりでした。暖かい日にはマヨール広場での日向ぼっこを楽しんでいる様子も見受けられました(写真1)。二週間目はマドリッド州及びバスク州での件数が突出したことにより、その州のみ学校が閉鎖され、なるべく集団を避けよう、あいさつもなるべく触れないでしよう、という感覚でした。少数の授業ならいいのか、準備してあったイベント、講演会はどうなるのかと、一般の観客を呼ばずにすれば大丈夫なのかと、いろいろ疑問が湧きましたが、州政府の一貫した対策は出ず、サラマンカ大学は対策に先手を打った形で大学閉鎖とし、それに続いて、突然スペイン全土に警戒事態宣言が出されました(写真2, 3, 4, 5)。外出は生活を送るのに必要不可欠な食糧入手、薬局、銀行などのみで、すべて一人での行動となりました。
大学では、授業も学生指導もオンラインへと切り替わり、教師側は対応に追われました。「休暇ではない」が、まるで合言葉のように謳われ、課題の量が少なく感じた教員もいたのでしょうか。学生側は、それぞれの科目から出される課題の量に四苦八苦したようです。
日本人留学生においては、大学寮が閉寮となったところ、日本の大学から帰国要請が来た人など、留学継続を断念し、日本に帰国した人がほとんどですが、中にはサラマンカに残った人もいます。日本行きの航空便も3月3週目で終わってしまい、今は身動きがとれないですが、必ず事態は収束に向かうでしょうから、気長に待つしかないですね。周りに心配してくれる人がいる、手伝ってくれる人がいるという普段の生活では見えなかったことに気づいた、とのコメントもありました。
3月の最終の週末にはサマータイムの導入となり、一時間の時差でも、このモノトーンな生活にはかなり響きます。睡眠、食事、運動を守り、それにユーモアも積極的に取り込んで、できるだけ心身ともにバランスのいい生活を心がけることが大切ですね。
予定イベントは休止、中止となりましたが、学生主体となって企画していた日本週間については、この状況から回復できたときにしようという意気込みです(写真)。また、秋学期から日本留学を予定している人の中には、提出書類の期日がありますが、先を考えて準備をすることも、平常を保つ上で大切な役割を果たすのだと思いました。





2月 活動日誌
2020年3月5日
GJOコーディネーター 久保 賢子
後期授業が始まりました。今年の後期留学の学生は、開始から一週間遅れでの合流となり、わずかながらやはりハードルが高くなったのではないかと心配でしたが、上手く馴染んで勉強も順調のようです。
2月4日、文献学部では、前期同様、留学生に対するオリエンテーションが行われました。前期と比べると留学生数は少なくなったものの、毎年これだけの留学生の内外への移動があることに思いを巡らせます。ヨーロッパ圏内では特に大学在学中での留学の必須性が謳われていますが、それが浮き彫りになって見えてきます(写真1)。
授業が始まってから1、2週間の授業見学ののち、履修登録変更期間が終了しましたが、それぞれの科目が自分の学習目的にあっているか、見直した人が多かったように思います。また、科目ごとの課題の量などを念頭に学習プランを組みなおした人も目立ちました。文献学部での留学ということで、外国人向けのスペイン語コースはありません。直接スペイン人たちと同等に授業に入っていくことはかなり大変なことと思いますが、四苦八苦しながらも奮闘している様子です。きっと、厳しい授業についていったという今後の自信につながると思います。マスターの学生による無料スペイン語講座、日本語学習者との交流会、または日本人留学生同士の輪など、どれも上手く使えるといいですね。
また、後期が始まって少し落ち着いてから、日本への留学が決まっている日本語の学生を対象に、単位認定の手続きに関して説明会を行いました。初めての試みでしたが、事務の方にも来ていただいたこともあり、多くの疑問が解決しました。留学へ行くにあたって、一つではなく、いくつものミーティングがあります。一言で留学といっても、留学生数の増加はもちろん、行先、学習内容、それぞれの大学の特徴、学習者層など、留学も多様化している証拠なのではないかと思いました。ちょうど同じころに日西文化センターでは、日本学術振興会による外国人研究者招へい事業の紹介があり、多様な聴衆が見受けられました。大学留学、ワーキングホリデーだけではなく、色々な可能性を皆見極めているようでした(写真2)。
ところで、2月といえば、アーモンドの花(写真3)。白やピンクなどかわいらしい花でサクラの花にとても似ています。また、咲いたかと思ったらすぐ散ってしまうこともサクラのはかなさの美を思わせます。留学も人生の道のりから見たら一瞬の出来事かもしれませんが、その経験や努力はその人に強い印象を与え、その後に大いなる影響を与えるのかもしれません。



1月 活動日誌
2020年1月31日
GJOコーディネーター 久保 賢子
同じイベリア半島でもポルトガルでは1月2日から大学が始まるそうですが、スペインでは1月6日の公現祭(Epiphany / Three Kings’ Day)が終わってからです。また、ほとんどの大学では1月は試験期間となるため、元日が過ぎたら試験勉強の態勢に入る学生が多いようです。大学では自習室の公開をしたり、大学の大きな図書館では、試験期間中の臨時措置として、夜中まで開館を延長したり、24時間体制をとるところもあります (資料1)。文献学部付属の図書館では、10年位前までは大学の休暇中でも祝日以外は開館しており、勉強に集中できる場がありましたが、今は人件費削減のため、大学の休暇中は閉館となってしまいました。ですから、いろんな学部の学生が駆けつける図書館ではとにかく自分の席を確保するのが大変です。フランスからのある留学生はテスト前にだけ集中的に勉強するスペインの習慣に「不思議」が隠せないようでした。それにしても、夜間勉学に励む学生さんも勤務されている職員さんも、お疲れさまでした!(写真1)
試験が終わり晴れ晴れした様子の学生たちはすぐ次の準備に取り掛かります。日本への留学の切符を手に入れた日本語の学生は、留学先となる大学のコースや履修する科目を調査し始め、何人かはもう単位認定内諾書の手続きができました。この単位認定というのは、授業内容はもちろん、授業時間数も関わってきます。ヨーロッパの単位システムと日本のとは大分違いますし、大学によって異なるので大変です。でも具体的に内容が決まると、目標ができ、目標があると後期の授業も夏休みの期間も継続的に学習できて、時間を有効活用できるようですし、着実な進歩がうかがえます。留学手続きは大変ですが、サラマンカでの日本人留学生との交流経験が背中を後押ししてくれています。その交流会も試験期間中は中断していましたが、後期開始と同時に、学生たちの時間割と相談し、また再開したいと思っています。
また、日本人留学生も前期を終え、後期の授業計画を考え直し、変更することがあります。もっとできる、こっちの授業の方が面白そうだ、など、その変更内容はとても前向きです。
さて、サラマンカ大学にはご存知の通りいろんな学部がありますが、大学のカレンダーに沿い、学部によってそのカレンダーを多少調整することができます。そのため、文献学部ではいつもは2月に入ってからの授業開始が、今年度は1月27日から後期授業が開始されました。後期からの留学生は大学全体のカレンダーに合わせたため後期の授業初回には間に合いませんが、フォローアップできればと思います。寒さ厳しい冬ですが、体調管理をしっかりと、有意義な留学生活が送れますように!(写真2)



12月 活動日誌
2019年12月
GJOコーディネーター 久保 賢子
?Feliz A?o Nuevo! 明けましておめでとうございます。
今年もいろいろな活動でいっぱいの年にしたいと思っています。
12月は前期の授業が終わる月です。前期の公式の試験は1月ですが、1月がテスト、テストと追われることになるのを避けるため、12月中に試験をしてしまう科目もあり、留学生にとっては、提出物や試験勉強に追われる一方、憲法記念日(Constitution Day)や聖母受胎日(Feast of the Immaculate Conception)と、連休がある上、クリスマスの雰囲気に覆われ、とても忙しくにぎやかな「師走」といったところでしょうか。授業が終わったら大学生たちは一斉に帰省し、学内は元より街中がいつもとは違った不思議な雰囲気です(写真1, 2, 3) 。
寒さも厳しくなると同時にスペインに来てから3か月の節目のこの時期は、ホームシックが心配な頃。ほとんどの大学寮なども閉まってしまうため、旅行に行く絶好のチャンスを得た人、勉強に専念した人、スペインのクリスマスの雰囲気を楽しんだ人、あいにく怪我をしてしまった人…。大事に至ることなく休暇を過ごせているようです。スペインでは1月6日の公現祭(Epiphany / Three Kings’ Day)に子供たちがプレゼントを受け取るため、その日までクリスマスのお祝いは続きます。
ところで、今月は日本への留学を申請した学生に対して、留学先の結果が発表されました。サラマンカ大学文献学部(Faculty of philology)東アジア学士課程(East Asian Studies Grade)日本語専攻(Japanese Studies)から来年度留学に行ける学生はなんと31人。早速選考された学生たちに対して手続きなどに関するオリエンテーションがありました。期待通りだった学生もそうでない学生も、日本への留学の切符に自信と希望に満ちています。大学ごとに提出書類や期限、またレベルや科目などが違うため、心配になってすぐに国際課事務所へ尋ねに行く人もいたようです。日本への留学は特に手続きが複雑のようですが、落ち着いて着実にすることが肝心です。
また、3月の日本週間に向けて準備が始まりました。目標は「学生主体で」実行することです。ゲストや講演者に頼るだけではなく、自分たちで考案し、実行に移す、ということです。とくに1年生と2年生からは大勢の参加希望があり、学生たちからの提案は今まで思いつかなかったこともありました。また、話し合いをしているうちに、だんだんアイデアが固まっていくこともあります。初めは控えめだった学生も段々話が盛り上がり、どのように仕上がるか、大変興味深いです。日本への関心が高まるのはもちろん、学生たちそれぞれがあらゆる「可能性」に挑戦できればなと思います。
写真2:マヨール広場からカテドラル(Cathedral)へ。今年のクリスマスのイルミネーションもは星が映った飾り玉です。
写真3:文献学部独自のクリスマスのメッセージビデオより学部の正面玄関の1カット。
写真1:文献学部(Faculty of philology)からマヨール広場(Main Square)へ行く通り。帰路を急ぐ人々。
11月 活動日誌
2019年11月
GJOコーディネーター 久保 賢子
11月1日、「聖人の日 All Saints’ Day」として知られる全国の祝日から始まった月ですが、外国の習慣であるハローウィーンも流入しており、10月最終日は大学生も仮装して楽しみ、学業に一息といった様子でした。11月1日は死者を弔う日として、家族で墓参りをするのが習慣ですが、この日を境に秋の深まりとともに更に冬が近づく感覚はスペイン人みんなが持っているのではないでしょうか。道端で売っている焼き栗もちょうどこの季節楽しめます。次のイベントとなるクリスマスのライトアップの準備もいたるところで見かけらます。
11月といえば、授業内容もかなり進んでスペイン語が楽しい、難しい、通じるようになってきた、など、色々な進歩がうかがえます。文献学部では、外国人対象のスペイン語コースが開講されているわけではなく、あくまで在学生と同じ扱いですので、スペイン語が初級レベルの学生にとってはかなり厳しいプランかもしれません。自分に親しみがある内容の科目を受講する学生、文学や言語学にチャレンジする学生、スペイン語の外国語教育という観点の授業を取る学生と、さまざまですが、それぞれがスペイン語学習に力を注いでいるようです。また、いろいろなところへ旅行へ行ったり、次なる旅の計画もして、余すことなくスペイン留学を有意義に過ごしている様子も見られ、頼もしいです。
また、今月は、サラマンカ郊外のサンタマルタ Santa Marta de Tormes という町へ行く機会がありました。この小さな町でも春に日本文化週間 Japanese Culture Weekが行われるのですが、日西文化センター Spanish-Japanese Cultural Center が協賛で行っており、交流があります。今回は、日本人留学生対象で生ハム講座が開かれました。この町には公立の料理学校があり、大きなホールで、生ハムカットの職人直々、説明を受けました(図1-1)。分かりやすいスペイン語で説明してくださったので、皆よく理解できたようです。生ハムに使われる豚の種類や、飼育についての説明から始まり、生ハムの商品としてのカテゴリー、旨味の秘密など、イラストつきで説明してくださいました。私も何度か生ハムの説明を受けたことがありますが、知らなかったことなどがあり、生ハムの奥深さを感じました。説明の後、早速カットに移りましたが、なかなか生ハムの原木からカットするというのは難しく、職人さんも上手くカットできるようになるには何年もかかる、と言っていました(図1-2)。参加者全員が実際にカットし、薄く美しく切り、更に美しく盛る、という重要さを経験しました(図1-3)。できた20皿分の生ハムは全員で試食し、ワインとともに話も弾みました。次の春には、日本を紹介するイベントに是非参加したくなった人も多いのではないでしょうか。サラマンカ市内だけでなく、また更なる広がりができ、楽しみも増えますね。また、いつもは大学生同士のつながりですが、一般の人ともスペイン語でコミュニケーションできる機会があるということは、大変貴重だと思いました。
最後に、日本人ピアニスト西澤安澄Nishizawa Azumiさんによるコンサートが文献学部構内のホール、ホアン?デル?エンーナ Juan del Enzina で行われました。日本人作曲家およびスペイン人作曲家による楽曲が演奏されましたが、何と言ってもピアニストご自身がスペイン留学中に鍛えたスペイン語で説明を交えて演奏されたことは、留学生にとっても励みになったのではないかと思います(図2-1、2-2)。





10月 活動日誌
2019年10月
GJOサラマンカコーディネーター 久保 賢子
10月に入ると、夏を思わせる強い日差しが一転、朝晩の気温差はもちろん、日中も寒い陰を避け日向を探し歩く日々で、雨もよく降る時期です。学生の中でも風邪で授業を休む人がちらほら。留学生たちとっては特に慣れない気候で、体調管理は大切です。
今月は先月に引き続き、留学生の履修登録に関する相談や手続きがありましたが、最終調整が終わり、ようやくほぼ全員が履修登録を無事済ませることができました。また、履修登録が終わると、授業も一旦リズムが掴め、次の目標としての留学を考える人が多くいます。
そこで、留学申請に関する説明会を開きました。国際課課長をはじめ、日本への派遣担当者、語学証明などで必ずお世話になる、言語サービスセンターの方々にも来ていただき、皆真剣にメモを取っていました(図1-1参照)。その後、日本へ留学へ行っていた先輩にあたる学生、または日本人留学生への相談会へと続き、集中して情報を収集する、必死な姿がうかがえました(図1-2参照)。
また、文献学部では、「現代言語の日」が設けられており、言語及び文化を紹介する機会があります。今回は何と言っても、一日中、学生が主体となって運営することができました。折り紙、名前を日本語で書く、日本の遊び、など、日本ブースは大好評でした(図2参照)。このような経験を共にした人たちは、仲間意識が深まり、自然とクラス全体または学年全体の雰囲気もよくしてくれます。何かにくじけそうになっても、日本語を断念しようか悩んでも、強く前へ一歩進むことができるだろうと思います。写真には参加者全員は映っていませんが、本当に多くの日本語の学生が参加してくれ、全ての人にとって、ポジティブな一日だったと思います(図3参照)。
最後に、日本語の学習者が、授業で習ったことを実践してみる機会をもつという目的で