2019年度 活動日誌
3月 活動日誌
2020年3月31日
GJOコーディネーター 久保 賢子
「新型コロナウイルス」この言葉を聞かない日はありませんでした。このウイルス関連のニュースで埋め尽くされた一か月。今振り返れば、3月初めの一週間は全て通常どおりでした。暖かい日にはマヨール広場での日向ぼっこを楽しんでいる様子も見受けられました(写真1)。二週間目はマドリッド州及びバスク州での件数が突出したことにより、その州のみ学校が閉鎖され、なるべく集団を避けよう、あいさつもなるべく触れないでしよう、という感覚でした。少数の授業ならいいのか、準備してあったイベント、講演会はどうなるのかと、一般の観客を呼ばずにすれば大丈夫なのかと、いろいろ疑問が湧きましたが、州政府の一貫した対策は出ず、サラマンカ大学は対策に先手を打った形で大学閉鎖とし、それに続いて、突然スペイン全土に警戒事態宣言が出されました(写真2, 3, 4, 5)。外出は生活を送るのに必要不可欠な食糧入手、薬局、銀行などのみで、すべて一人での行動となりました。
大学では、授業も学生指導もオンラインへと切り替わり、教師側は対応に追われました。「休暇ではない」が、まるで合言葉のように謳われ、課題の量が少なく感じた教員もいたのでしょうか。学生側は、それぞれの科目から出される課題の量に四苦八苦したようです。
日本人留学生においては、大学寮が閉寮となったところ、日本の大学から帰国要請が来た人など、留学継続を断念し、日本に帰国した人がほとんどですが、中にはサラマンカに残った人もいます。日本行きの航空便も3月3週目で終わってしまい、今は身動きがとれないですが、必ず事態は収束に向かうでしょうから、気長に待つしかないですね。周りに心配してくれる人がいる、手伝ってくれる人がいるという普段の生活では見えなかったことに気づいた、とのコメントもありました。
3月の最終の週末にはサマータイムの導入となり、一時間の時差でも、このモノトーンな生活にはかなり響きます。睡眠、食事、運動を守り、それにユーモアも積極的に取り込んで、できるだけ心身ともにバランスのいい生活を心がけることが大切ですね。
予定イベントは休止、中止となりましたが、学生主体となって企画していた日本週間については、この状況から回復できたときにしようという意気込みです(写真)。また、秋学期から日本留学を予定している人の中には、提出書類の期日がありますが、先を考えて準備をすることも、平常を保つ上で大切な役割を果たすのだと思いました。
2月 活動日誌
2020年3月5日
GJOコーディネーター 久保 賢子
後期授業が始まりました。今年の後期留学の学生は、開始から一週間遅れでの合流となり、わずかながらやはりハードルが高くなったのではないかと心配でしたが、上手く馴染んで勉強も順調のようです。
2月4日、文献学部では、前期同様、留学生に対するオリエンテーションが行われました。前期と比べると留学生数は少なくなったものの、毎年これだけの留学生の内外への移動があることに思いを巡らせます。ヨーロッパ圏内では特に大学在学中での留学の必須性が謳われていますが、それが浮き彫りになって見えてきます(写真1)。
授業が始まってから1、2週間の授業見学ののち、履修登録変更期間が終了しましたが、それぞれの科目が自分の学習目的にあっているか、見直した人が多かったように思います。また、科目ごとの課題の量などを念頭に学習プランを組みなおした人も目立ちました。文献学部での留学ということで、外国人向けのスペイン語コースはありません。直接スペイン人たちと同等に授業に入っていくことはかなり大変なことと思いますが、四苦八苦しながらも奮闘している様子です。きっと、厳しい授業についていったという今後の自信につながると思います。マスターの学生による無料スペイン語講座、日本語学習者との交流会、または日本人留学生同士の輪など、どれも上手く使えるといいですね。
また、後期が始まって少し落ち着いてから、日本への留学が決まっている日本語の学生を対象に、単位認定の手続きに関して説明会を行いました。初めての試みでしたが、事務の方にも来ていただいたこともあり、多くの疑問が解決しました。留学へ行くにあたって、一つではなく、いくつものミーティングがあります。一言で留学といっても、留学生数の増加はもちろん、行先、学習内容、それぞれの大学の特徴、学習者層など、留学も多様化している証拠なのではないかと思いました。ちょうど同じころに日西文化センターでは、日本学術振興会による外国人研究者招へい事業の紹介があり、多様な聴衆が見受けられました。大学留学、ワーキングホリデーだけではなく、色々な可能性を皆見極めているようでした(写真2)。
ところで、2月といえば、アーモンドの花(写真3)。白やピンクなどかわいらしい花でサクラの花にとても似ています。また、咲いたかと思ったらすぐ散ってしまうこともサクラのはかなさの美を思わせます。留学も人生の道のりから見たら一瞬の出来事かもしれませんが、その経験や努力はその人に強い印象を与え、その後に大いなる影響を与えるのかもしれません。
1月 活動日誌
2020年1月31日
GJOコーディネーター 久保 賢子
同じイベリア半島でもポルトガルでは1月2日から大学が始まるそうですが、スペインでは1月6日の公現祭(Epiphany / Three Kings’ Day)が終わってからです。また、ほとんどの大学では1月は試験期間となるため、元日が過ぎたら試験勉強の態勢に入る学生が多いようです。大学では自習室の公開をしたり、大学の大きな図書館では、試験期間中の臨時措置として、夜中まで開館を延長したり、24時間体制をとるところもあります (資料1)。文献学部付属の図書館では、10年位前までは大学の休暇中でも祝日以外は開館しており、勉強に集中できる場がありましたが、今は人件費削減のため、大学の休暇中は閉館となってしまいました。ですから、いろんな学部の学生が駆けつける図書館ではとにかく自分の席を確保するのが大変です。フランスからのある留学生はテスト前にだけ集中的に勉強するスペインの習慣に「不思議」が隠せないようでした。それにしても、夜間勉学に励む学生さんも勤務されている職員さんも、お疲れさまでした!(写真1)
試験が終わり晴れ晴れした様子の学生たちはすぐ次の準備に取り掛かります。日本への留学の切符を手に入れた日本語の学生は、留学先となる大学のコースや履修する科目を調査し始め、何人かはもう単位認定内諾書の手続きができました。この単位認定というのは、授業内容はもちろん、授業時間数も関わってきます。ヨーロッパの単位システムと日本のとは大分違いますし、大学によって異なるので大変です。でも具体的に内容が決まると、目標ができ、目標があると後期の授業も夏休みの期間も継続的に学習できて、時間を有効活用できるようですし、着実な進歩がうかがえます。留学手続きは大変ですが、サラマンカでの日本人留学生との交流経験が背中を後押ししてくれています。その交流会も試験期間中は中断していましたが、後期開始と同時に、学生たちの時間割と相談し、また再開したいと思っています。
また、日本人留学生も前期を終え、後期の授業計画を考え直し、変更することがあります。もっとできる、こっちの授業の方が面白そうだ、など、その変更内容はとても前向きです。
さて、サラマンカ大学にはご存知の通りいろんな学部がありますが、大学のカレンダーに沿い、学部によってそのカレンダーを多少調整することができます。そのため、文献学部ではいつもは2月に入ってからの授業開始が、今年度は1月27日から後期授業が開始されました。後期からの留学生は大学全体のカレンダーに合わせたため後期の授業初回には間に合いませんが、フォローアップできればと思います。寒さ厳しい冬ですが、体調管理をしっかりと、有意義な留学生活が送れますように!(写真2)
12月 活動日誌
2019年12月
GJOコーディネーター 久保 賢子
?Feliz A?o Nuevo! 明けましておめでとうございます。
今年もいろいろな活動でいっぱいの年にしたいと思っています。
12月は前期の授業が終わる月です。前期の公式の試験は1月ですが、1月がテスト、テストと追われることになるのを避けるため、12月中に試験をしてしまう科目もあり、留学生にとっては、提出物や試験勉強に追われる一方、憲法記念日(Constitution Day)や聖母受胎日(Feast of the Immaculate Conception)と、連休がある上、クリスマスの雰囲気に覆われ、とても忙しくにぎやかな「師走」といったところでしょうか。授業が終わったら大学生たちは一斉に帰省し、学内は元より街中がいつもとは違った不思議な雰囲気です(写真1, 2, 3) 。
寒さも厳しくなると同時にスペインに来てから3か月の節目のこの時期は、ホームシックが心配な頃。ほとんどの大学寮なども閉まってしまうため、旅行に行く絶好のチャンスを得た人、勉強に専念した人、スペインのクリスマスの雰囲気を楽しんだ人、あいにく怪我をしてしまった人…。大事に至ることなく休暇を過ごせているようです。スペインでは1月6日の公現祭(Epiphany / Three Kings’ Day)に子供たちがプレゼントを受け取るため、その日までクリスマスのお祝いは続きます。
ところで、今月は日本への留学を申請した学生に対して、留学先の結果が発表されました。サラマンカ大学文献学部(Faculty of philology)東アジア学士課程(East Asian Studies Grade)日本語専攻(Japanese Studies)から来年度留学に行ける学生はなんと31人。早速選考された学生たちに対して手続きなどに関するオリエンテーションがありました。期待通りだった学生もそうでない学生も、日本への留学の切符に自信と希望に満ちています。大学ごとに提出書類や期限、またレベルや科目などが違うため、心配になってすぐに国際課事務所へ尋ねに行く人もいたようです。日本への留学は特に手続きが複雑のようですが、落ち着いて着実にすることが肝心です。
また、3月の日本週間に向けて準備が始まりました。目標は「学生主体で」実行することです。ゲストや講演者に頼るだけではなく、自分たちで考案し、実行に移す、ということです。とくに1年生と2年生からは大勢の参加希望があり、学生たちからの提案は今まで思いつかなかったこともありました。また、話し合いをしているうちに、だんだんアイデアが固まっていくこともあります。初めは控えめだった学生も段々話が盛り上がり、どのように仕上がるか、大変興味深いです。日本への関心が高まるのはもちろん、学生たちそれぞれがあらゆる「可能性」に挑戦できればなと思います。
写真2:マヨール広場からカテドラル(Cathedral)へ。今年のクリスマスのイルミネーションもは星が映った飾り玉です。
写真3:文献学部独自のクリスマスのメッセージビデオより学部の正面玄関の1カット。
写真1:文献学部(Faculty of philology)からマヨール広場(Main Square)へ行く通り。帰路を急ぐ人々。
11月 活動日誌
2019年11月
GJOコーディネーター 久保 賢子
11月1日、「聖人の日 All Saints’ Day」として知られる全国の祝日から始まった月ですが、外国の習慣であるハローウィーンも流入しており、10月最終日は大学生も仮装して楽しみ、学業に一息といった様子でした。11月1日は死者を弔う日として、家族で墓参りをするのが習慣ですが、この日を境に秋の深まりとともに更に冬が近づく感覚はスペイン人みんなが持っているのではないでしょうか。道端で売っている焼き栗もちょうどこの季節楽しめます。次のイベントとなるクリスマスのライトアップの準備もいたるところで見かけらます。
11月といえば、授業内容もかなり進んでスペイン語が楽しい、難しい、通じるようになってきた、など、色々な進歩がうかがえます。文献学部では、外国人対象のスペイン語コースが開講されているわけではなく、あくまで在学生と同じ扱いですので、スペイン語が初級レベルの学生にとってはかなり厳しいプランかもしれません。自分に親しみがある内容の科目を受講する学生、文学や言語学にチャレンジする学生、スペイン語の外国語教育という観点の授業を取る学生と、さまざまですが、それぞれがスペイン語学習に力を注いでいるようです。また、いろいろなところへ旅行へ行ったり、次なる旅の計画もして、余すことなくスペイン留学を有意義に過ごしている様子も見られ、頼もしいです。
また、今月は、サラマンカ郊外のサンタマルタ Santa Marta de Tormes という町へ行く機会がありました。この小さな町でも春に日本文化週間 Japanese Culture Weekが行われるのですが、日西文化センター Spanish-Japanese Cultural Center が協賛で行っており、交流があります。今回は、日本人留学生対象で生ハム講座が開かれました。この町には公立の料理学校があり、大きなホールで、生ハムカットの職人直々、説明を受けました(図1-1)。分かりやすいスペイン語で説明してくださったので、皆よく理解できたようです。生ハムに使われる豚の種類や、飼育についての説明から始まり、生ハムの商品としてのカテゴリー、旨味の秘密など、イラストつきで説明してくださいました。私も何度か生ハムの説明を受けたことがありますが、知らなかったことなどがあり、生ハムの奥深さを感じました。説明の後、早速カットに移りましたが、なかなか生ハムの原木からカットするというのは難しく、職人さんも上手くカットできるようになるには何年もかかる、と言っていました(図1-2)。参加者全員が実際にカットし、薄く美しく切り、更に美しく盛る、という重要さを経験しました(図1-3)。できた20皿分の生ハムは全員で試食し、ワインとともに話も弾みました。次の春には、日本を紹介するイベントに是非参加したくなった人も多いのではないでしょうか。サラマンカ市内だけでなく、また更なる広がりができ、楽しみも増えますね。また、いつもは大学生同士のつながりですが、一般の人ともスペイン語でコミュニケーションできる機会があるということは、大変貴重だと思いました。
最後に、日本人ピアニスト西澤安澄Nishizawa Azumiさんによるコンサートが文献学部構内のホール、ホアン?デル?エンーナ Juan del Enzina で行われました。日本人作曲家およびスペイン人作曲家による楽曲が演奏されましたが、何と言ってもピアニストご自身がスペイン留学中に鍛えたスペイン語で説明を交えて演奏されたことは、留学生にとっても励みになったのではないかと思います(図2-1、2-2)。
10月 活動日誌
2019年10月
GJOサラマンカコーディネーター 久保 賢子
10月に入ると、夏を思わせる強い日差しが一転、朝晩の気温差はもちろん、日中も寒い陰を避け日向を探し歩く日々で、雨もよく降る時期です。学生の中でも風邪で授業を休む人がちらほら。留学生たちとっては特に慣れない気候で、体調管理は大切です。
今月は先月に引き続き、留学生の履修登録に関する相談や手続きがありましたが、最終調整が終わり、ようやくほぼ全員が履修登録を無事済ませることができました。また、履修登録が終わると、授業も一旦リズムが掴め、次の目標としての留学を考える人が多くいます。
そこで、留学申請に関する説明会を開きました。国際課課長をはじめ、日本への派遣担当者、語学証明などで必ずお世話になる、言語サービスセンターの方々にも来ていただき、皆真剣にメモを取っていました(図1-1参照)。その後、日本へ留学へ行っていた先輩にあたる学生、または日本人留学生への相談会へと続き、集中して情報を収集する、必死な姿がうかがえました(図1-2参照)。
また、文献学部では、「現代言語の日」が設けられており、言語及び文化を紹介する機会があります。今回は何と言っても、一日中、学生が主体となって運営することができました。折り紙、名前を日本語で書く、日本の遊び、など、日本ブースは大好評でした(図2参照)。このような経験を共にした人たちは、仲間意識が深まり、自然とクラス全体または学年全体の雰囲気もよくしてくれます。何かにくじけそうになっても、日本語を断念しようか悩んでも、強く前へ一歩進むことができるだろうと思います。写真には参加者全員は映っていませんが、本当に多くの日本語の学生が参加してくれ、全ての人にとって、ポジティブな一日だったと思います(図3参照)。
最後に、日本語の学習者が、授業で習ったことを実践してみる機会をもつという目的で、日本人の留学生との交流会を始めることができました。初めは時間割が合わない、教室がないなど、なかなかうまくいきませんでしたが、週に3回教室を予約し、軌道に乗ったところです。1セッションは50分弱ですが、母語話者同士で話しているときには気づかないことなど、いろいろな発見があって、お互い楽しくてあっという間だそうです。日本語の学習者は、スペイン語でも話しかけたりして気配りも忘れず、またスペイン語に関して探究していくなど、お互いにとっていい場となりそうで、今後どう発展していくか楽しみです(図4)。
9月 活動日誌
2019年9月
GJOコーディネーター 久保 賢子
9月、長いようで短かった夏期休暇が終わり、一気に新学期が始まりました。新入生は何とも新鮮な雰囲気を醸し出し、いろいろなことへやる気に満ちています。在学生は、早い人なら6月上旬にはテストが終わり、およそ2か月半のバケーションを過ごしたことになります。留学へ行ったメンバーに留学から帰ってきたメンバーと、様々な出入りがありますが、それぞれが学友との再会に歓喜を上げ、いろんな目標をもって、勉強への意欲に溢れています。
そんな中、多くの著名な学者を生んだサラマンカ大学では、その由緒あるスペイン語を学ぼうと、留学に来る学生の姿が顕著です。留学生を受け入れる学部は社会学部、法学部、哲学部、地理歴史学部、通訳翻訳学部など、多岐にわたりますが、その中でも特に文献学部は大きな受け皿となっています。
文献学部では、サラマンカに到着したばかりの留学生を迎え、9月11日12時より学部の大講堂でオリエンテーションが開かれました(図1-1および1-2参照)。それぞれの言語のコーディネーターも出席し、盛大な顔合わせの会ともなりました。履修に関する注意事項から、学生の街ともいわれるサラマンカでの生活での注意点などが伝えられました。初めの1,2週間は、授業に参加してみてどの授業が自分に合っているか、どの授業を取るべきか、吟味する期間。文献学部内のみならず、他学部の授業も取ることができますから、非常に多くの興味そそられる科目の中からそれぞれの時間割と相談しながら自分の計画を立てなければなりません。履修計画をコーディネーターの先生と確認し、その後、事前予約をしてからの履修登録となります。以前は事務室の前に長蛇の列がありましたが、大分改善されました。
また、文献学部では、外国人対象のスペイン語コースのような第二言語としてのスペイン語の授業はなく、スペイン語教育や、スペイン語史、スペイン語音韻論など、言語そのものの授業が行われます。そこで、修士課程の学生有志の研究プロジェクトの一環として、「外国人向けスペイン語教室(Proyecto Puntal)」というスペースが設けられているというお知らせもありました(図2参照)。様々なレベルに対応しており、コース終了時には証明書も発行してくれます。さらにコースは無料と、これ以上にない絶好の機会とも言えます。
始まったのは授業だけではありません。様々な文化事業、講演会なども目に留まります。日西文化センターでも日本の歴史に関する一連の講演があり、日本やスペイン各地から研究者が訪れ、研究発表を聞く機会がありました。センターの講堂満席で、日本に対する関心の深さがうかがえました(図3参照)。
7月 活動日誌
2019年7月
GJOコーディネーター 小澤 咲
7月になりました。今月は、試験期間も終了し、学生はそれぞれの家族のもとへ帰り、それに代わるように、ヨーロッパ各地、また世界各地からの観光客が街中にあふれる時期になりました。大学スタッフは成績の処理等に忙しく、教員も、一般科目の成績等の業務を終え、TFG(Trabajo Fin de Grado:卒業論文)の提出に向けて、最後の指導および受理を行いました。
東アジア学士課程の学生も、13名が今夏、第一締め切りにおいて卒業論文を提出し、卒業が確定しました。なお、9月にも第二締め切りがあり、そちらでもたくさんの学生が卒業論文を提出し、今年度の卒業生として、続いて卒業していく見通しです。
東アジア学士課程の第一期生が、たくさんの思い出のつまったサラマンカ大学を、それぞれの思いを胸に羽ばたいていきました。これは設立以来、教員にとっても、ずっと目標になってきたことであり、ひとつの大きな節目を迎えた気持ちです。
サラマンカ大学GJOコーディネーターに就任し、早3年が経過しました。この間、継続して第一期生を任せていただき、3年間のうちに学生たちは2年生から4年生となり、立派な成長を遂げました。学業面のみならず、学生としての姿勢も見違えるほど洗練され、頼もしい学生となりました。これも、ともに働き、支えてくれた同僚のおかげと感じています。
来年度以降は、サラマンカへの就任以来、お世話になった現地教員である久保先生にGJOコーディネーターの職を引き継ぎ、継続してサラマンカ大学および東京外国語大学の協力のますますの発展、また日本関連の活動のますますの振興に、尽力いただきます。今月は、後任の先生への引継ぎをし、問題なく次年度はじめから業務が進むようにしました。また、お世話になったサラマンカ大学の同僚、大学スタッフ、守衛さん、様々な人々との別れの挨拶をし、本格的な帰任の最終準備となりました。
新しく着任される久保先生は、スペイン語も堪能で、これからのサラマンカGJOに、さらに活発な風を取り込んでくれるものと思います。これからも、サラマンカの日本関連の環境がさらによくなり、文献学部東アジア学士課程が、第二期生からも順調に学生を輩出し、ますます発展していくことを心より願っています。
最後になりますが、着任以来、サラマンカでお世話になった同僚の先生方、大学スタッフ、常に連携して公私ともにお世話になった国際交流基金マドリードの皆様、また、着任時より、日本から常に支えてくださった、東京外国語大学国際化拠点室の皆様に心より感謝申し上げます。
6月 活動日誌
2019年6月
GJOコーディネーター 小澤 咲
6月になると、サラマンカもだいぶ夏らしい日差しとなり、肌が出ているだけでも、日焼けというよりもむしろ、文字通りに焼き付けられているような気分になります。
今月8日には、サラマンカ大学文献学部東アジア学士課程第一期生の卒業式が行われました。卒業式は文献学部で最も大きい建物Palacio de Anayaの中庭にて行われ、招待状を持参した父兄も多数参加しました。式は、ゴンサレス文献学部長、日本専攻のファレロ先生の挨拶から始まり、英語はじめとする各言語の代表者がそれぞれにスピーチをして、大学生活を振り返りました。
日本大使館からは、清水公使が出席され、東アジア学士課程の学生への卒業証書授与では、学科のコーディネーターであるファレロ先生や学部長とともに、公使も授与に参加されました。設立以来、初めての卒業生の輩出とあって、メディアにも注目されました。
しかしながら、すべての先生が参加するわけでもなく、参加していない学生もいるなど、日本の卒業式とはまったく異なる点もあり、大変興味深く思います。最も異なる点は、まだ追試験などが終了していない段階、つまり卒業できるかできないかがまだわからない状態で卒業式をしてしまうことです。そのため、卒業式とは名ばかりで、数名の学生に対しては、「また数日後の追試で会おうね」、という不思議な状況が生まれました。
とはいえ、私も着任以降、継続して3年間担任をしていた4年生が卒業とあって、学生からのプレゼントを受け取って、感慨深い気持ちにもなりました。この4年間、学生たちはこの学部でどんな学びを得たのか、これからそれぞれの夢に向かって、繋がっていくように心から応援するとともに、彼らの門出を祝えたことを、心底嬉しく思います。
また、同日夜には、先月もお伝えしていたサラマンカの市が主催する文化紹介イベントに参加し、お手伝いを行いました。先生は、サラマンカ在住の日本人の手芸の先生で、先生のご指導のもと、つまみ細工で魚のキーホルダーと桜の花を作りました。参加者はみな真剣な様子で、一生懸命に慣れない日本の手芸に取り組んでいました。
完成品を見ては嬉しそうにしている姿を見て、これを機に日本のものづくりに親しみを持ってもらえたらと感じています。
アラビア語の書道というイベントと同時開催だったのですが、そちらのグループにも少し参加したので、最後につまみ細工をプレゼントしたところ、大変喜ばれました。ついには、そちらのグループに参加していたスペイン人の若者も、日本ブースのある教室に遊びにきてくれるほど人気を集めました。
卒業式についてお話しながら少し触れたことですが、今月も、引き続き、追試験が続いています。先月もお伝えしたとおり、サラマンカ大学を含むスペインの教育制度では、前期あるいは後期の期末試験で不合格となった場合、追試験を受けることができます。とくに追試験は、前期分?後期分ともに、後期末に行われるため、後期の追試が終わるためには6月末までかかります。
6月をもって、追試を含むすべての試験が無事に終了し、今期に卒業することができる学生が正式に決まりました。
サラマンカ外では、スペイン日本語教師会のシンポジウムにて、本文献学部東アジア学士課程における、授業の試みについて発表し、ありがたいことに、たくさんの質問や共感、素晴らしいフィードバックをいただくことができました。マドリードアウトノマ大学の先生をはじめ、同じく大学の課程のなかで日本語を教えている教師仲間同士、話し合い、切磋琢磨する絶好の機会となりました。ポルトガルのミーニョ大学をはじめ、スペイン外の先生とも、親身に相談する中で協力関係を築くことができ、これをぜひ来年からのサラマンカ大学外との交流にもつなげていければと考えています。
今月は、学年の締めくくりとなるひと月で、卒業式をはじめ、試験や相談と、忙しく過ぎていきました。また、学外のイベントやシンポジウムにおいても、日本、およびサラマンカ大学での活動をひろく知ってもらうことができ、実り多い一か月になりました。
これからも、継続して外の人々との交流を積極的に持ち続け、活発な教育活動を行っていければと考えています。
5月 活動日誌
2019年5月
GJOコーディネーター 小澤 咲
5月になり、サラマンカもやっと暖かくなってきました。いまだにウインドブレーカーが必要な気候になることも多いですが、真夏日も増えてきました。20度にもなる寒暖差に、よりいっそうの体調管理が必要な時期にもなってきています。
そんな5月ですが、サラマンカ大学では、学期のまとめの月となりました。実はサラマンカ大学では、春休みというものは一切なく、9月から1月の前期が終了した後、間髪を入れずに2月頭からすぐに授業が始まります。そのため、前期と同じく15週間の授業を行うと、後期の授業は5月半ばまでとなります。
そのため、毎年5月は、学期の授業の締めくくりと、試験開始の月という運びになるのですが、後期の期末は前期のそれとは一味違います。サラマンカ大学を含むスペインの教育制度では、前期あるいは後期の期末試験で不合格となった場合、追試験を受けることができます。しかし、追試験は、不合格が判明したあとすぐに行うわけではなく、前期分?後期分ともに、後期末に行われます。そのため、後期末の試験期間は、5月後半から6月いっぱいまで続く大型の試験期間と相成ります。
毎度、試験ごとの説明は詳しく行っていますが、とくに今年度末は、文献学部日本専攻にとって、始めての卒業生を輩出する年度末ということで、4年次の学生にも、教員である私にも、熱が入ります。試験に対する質問は絶え間なく続くほどでした。現在は、試験への問い合わせも大方済み、また試験も無事に終了し、学生、教員共々、ほっと胸をなでおろしています。
今月も、卒業後についての進路相談を中心に、相談業務を継続しています。日本での入学手続きに入った学生もいます。日本での仲介人物も必要になるのですが、その仲介人への依頼と手続きも自分でできるようになってきた学生を誇らしく思います。
大学外では、サラマンカの市が主催するイベントに向けて、GJOでもお手伝いをしました。日本のつまみ細工を紹介?体験する内容で、今月はその下準備として私も練習に参加しました。若者を対象としたイベントでありながら、学生が減ってくる時期の開催となりますが、どのような人たちが来てくれるのか、私たちも来月の開催が楽しみです。
また、スペイン日本語教師会のマドリードでの5月研修会にも参加し、4年生の授業でも扱っている重要テーマである文化について、研修会に参加しました。教員同士の意見交換も含む内容で、大学での教務にも反映できるものでした。
今月は、試験を中心に回ったひと月となりましたが、大学外での活動も複数あり、総合的にバランスのよい一か月となりました。来月は、先ほど言及した大型試験期間が継続し、卒業をかけた追試験などが行われる予定です。前期の成績に安心して気を緩めすぎることなく、最後まであきらめずに、試験に臨めるようにと願っています。
4月 活動日誌
2019年4月
GJOコーディネーター 小澤 咲
4月になりました。サラマンカでは、なぜか一気に冬に逆戻りしたような気候が続いています。5日には、ひょうも降りました。Semana Santa(神聖な週:イースターのこと)期間中は寒かったり夏のようになったり、年によって気候は様々ですが、Semana Santa明けを区切りに一気に夏めくというのが例年の傾向です。しかし今年のサラマンカは、Semana Santaが明けてもダウンやジャケットが手放せない気候が続いています。
今月はSemana Santaの影響で、授業が少なかったのですが、とくに新年号の発表に関して、また新紙幣のデザインに関して、大いに盛り上がりました。これらのトピックを授業中に取り上げ、教材として扱ったところ、学生たちは、とても興味深そうにニュースに見入っていました。とくに、最近福沢諭吉について授業で扱い、一万円札の人だね、と学んだばかりだったので、学生たちにとっても、タイムリーな話題だったようです。
スペインでは現在、通貨がユーロのシステムに準拠するため、日本との通貨のシステムの差異についても新発見があったようです。最近は、日本語の言語そのものではなく、日本語を使って読み物を通して日本の様々な側面にアプローチする授業をしているので、ニュースの内容も身近に感じ、以前よりも興味がわいている様子です。
また、Semana Santa明けの授業では、学生たちの興味を引くように、すごろくを使った復習を行いました。自分で復習すべき語彙をさらったり、自分で文を考えたりする自発的なアクティビティも、やり様によっては、とても喜んでする姿を見て、改めて良い授業のヒントを学生に教えてもらったような気持ちです。
今月も、卒業後についての進路相談を中心に、相談業務を継続しています。必要な資料を見つけだして渡してあげることや、情報をたくさん提供することもとても重要ですが、学生にとって日本の希望進路を、将来にわたって慎重に考えるために、日本社会における大学院進学の位置づけなども説明しながら、慎重に指導するように心がけています。
卒業後の進路指導は、学生の希望と、金銭的な問題、時間的な問題、様々な事情を考慮しながら、本人と相談しつつ、少しずつ進めています。