2015年21日から26日に実施された、中国東北地方?吉林省でのスタディツアー 《「満洲」の記憶?忘却?痕跡 中国東北地方?吉林省を訪ねて》 について報告いたします。
本事業は、昨年度の同事業(テーマ:沖縄)にひきつづき、本学と、協定校である中国の寧波大学、韓国の韓信大学校および聖公会大学校との 《東アジア合同授業》 において実施されました。スタディツアーに先立って春期に設定された、ビデオ通信による国際合同授業では、《植民地主義と人々の移動?暮らし》 および 《「満洲国」支配とその痕跡》 という二つの観点のもとで、学生たちは講義を受け、また自主調査を組織したうえで、プレゼンテーションと討論をおこなうことにより、能動的に予備知識を深めました。
スタディツアーでは、中国吉林省の長春市、および延辺朝鮮族自治州(延吉市、竜井市、汪清県)を訪問し、さまざまな史跡や施設でフィールドワークをおこない、また現地の方々のお話を伺い、交流をもちました。
長春市では、偽満皇宮博物館や東北淪陷史陳列館、長影旧址博物館(旧満映)のほか、偽満洲国国務院旧址、中国共産党省委員(旧関東軍司令部)、旧給水塔等、「満洲国」時代の建物などの跡を見学しました。学生たちは、「満洲国」支配の「記憶」が市内のいたるところに痕跡としてはっきりと残っていたことに驚くと同時に、1945年の「満洲国」崩壊以降もそこに生き続けた/生き続けなければならなかった人々について、さまざまな思いをめぐらせていました。
また、長春市動植物園(旧新京動物園)を訪れたうえで、馮英華先生(日本で博士学位取得、現在は長春で研究継続)による講義 《村上春樹『ねじまき鳥クロニクル』における「新京の動物園」》 を聞き、活発な討論を行いました。
延吉市では、延辺大学にてその後の行動をともにする延辺大学の学生たちと合流し、ともに延辺大学の孫春日教授による講義 《満洲の東北アジア諸民族 文化景観と中、韓、日の対置される歴史談論》 を聞きました。延辺博物館や延吉監獄抗日闘争記念碑の見学も行い、中国朝鮮族の歴史や抗日闘争史について体系的に学習することができました。
竜井市では、現地のドキュメンタリー写真作家で、李光平先生(竜井市文化館館長)によるご案内のもと、植民地期朝鮮人の抵抗作家である尹東柱の生家と尹の通った明東学校跡(展示館)、旧大成中学校(展示館)のほか、1919年の朝鮮における「三?一独立運動」を契機に起こった「間島三?一三運動」で犠牲になった14名を追悼するための記念碑「三?一三反日義士陵」、1909年に建てられた間島日本総領事館跡(現在の建物は火災による焼失後、1926年に再建されたもの)などを訪れました。
また、「満洲国」期に軍事目的等のためにつくられた朝鮮人「集団部落」があった村々をバスの車窓から眺めながら、汪清県にある日本百草溝領事館分館跡にまで足を延ばし、今もそのまま残っている建物と、同じ敷地内にある独立運動家の首が吊るされたという木を見ました。
日本による朝鮮?朝鮮人支配が中国東北にまでおよぶ苛酷なものであったことを、学生たちは自分たちの目でしっかりと確認し、また、その支配のもとで抵抗し、命を落とした多くの朝鮮の人びとがいたことを学びました。
最終日には延辺大学にて、三カ国の学生が入り混じった三つのグループがそれぞれ、共同レポート作成のために討論しました。起草された文案は、最後に全員の前で、中国語、朝鮮語、日本語により発表され、承認されました。
日本の侵略や植民地支配の歴史をいかに記憶するかが問題となっている現在、その現場に実際に足を運んで調査をおこなったことや、韓国や中国の、そして中国朝鮮族の学生と夜遅くまで熱く語り、意見をぶつけ合った経験は、参加した学生たちにとって非常に貴重な経験となりました。本事業にご協力いただいた、本学協定校の皆さまや、長春市、延吉市、竜井市の方々には、この場を借りて、深く御礼を申し上げます。