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沼野恭子著、NHK出版、2009年1月29日
ロシア文学は、多彩で、美味しい!
ロシア文学というと、思想や哲学を語る難解で深遠なものというイメージが強かった。でも実際は、楽しいもの、世俗的なもの、ファンタスティックなもの、グロテスクなもの……と多彩で、美味しい! ロシア文学を、即物的な「食」「料理」という観点から読みなおし、新しい鑑賞の地平を開く画期的な書。
今福龍太著、東京外国語大学出版会、2009年3月31日
書物はたえず世界へと生成する!?
ボルヘス、ジャベス、ベンヤミン、グリッサンらの独創的なテクストを読み解きながら開示される、「書物」という理念と感触をめぐる新たな身体哲学。
「世界のなかに私が住むこと。そして世界のなかに書物が存在すること。この二つの事実の偶然の関わりをめぐる、限りある消息をさまざまに探究することが、本書のテクストとして再現された講義の目的であった―」。
本という物質的存在のゆらぎをたえず傍らに感じながら行われた画期的な書物論、全14講。
柴田勝二著、東京外国語大学出版会、2009年3月
「大きな物語」としての“60年代”をくぐりぬけて作家となった中上と村上。その差異と重なりを緻密に読み解き、ポストモダンの様相を浮かび上がらせる画期的文学論。
亀山郁夫著、東京外国語大学出版会、2009年4月30日
そこに人間の精神のすべてが書かれている
『罪と罰』『白痴』『悪霊』『カラマーゾフの兄弟』のドストエフスキー四大長編の深奥に分け入り、
そこに隠された秘密のメッセージを多様に読み解きながら、神なき時代に生きる現代人の救いのありかをさぐる。
ベルトルト?ブレヒト著、谷川道子訳、光文社、2009年8月6日
17世紀、三十年戦争下のドイツ。軍隊に従って幌車を引きながら、戦場で抜け目なく生計を立てる女商人アンナ。度胸と愛嬌で戦争を行きぬく母の賢さ、強さ、そして愚かさを生き生きと描いた、劇作家ブレヒトの代表作を待望の新訳で贈る。母アンナはこんなにも魅力的だった!
チャッタワーラック著?宇戸清治訳、講談社、2009年9月10日
残された証拠などから同時刻に3つの殺人事件が発生したとされていた。王族の道楽息子が全てのの犯人と考え捜査する二人の警察官に迫る脅迫の嵐。波乱の結末!
リュドミラ?ウリツカヤ著?前田和泉訳、新潮社、2009年8月31日
ポーランドのユダヤ人一家に生まれ、奇跡的にホロコーストを逃れてゲシュタポでナチの通訳をしながらユダヤ人脱走計画を成功させた男は、戦後カトリック神父になりエルサレムへと渡った。――ナチズムの東欧からパレスチナ問題のイスラエルへ。心から人を愛し、共存の理想を胸に戦い続けた、魂の通訳ダニエル?シュタインの波乱の生涯。
ホミ?バーバ、W?J?T?ミッチェル編?上村忠男、八木久美子、粟屋利江訳、みすず書房、2009年10月21日
「不可能なことをやらかしてみよう、長期間にわたって友人であり協力者であった知識人たちに、突然中断してしまったエドワードとの対話を続けるよう求めてみよう…わたしたちが狙ったのは、サイードの仕事を学問分野や論点ごとに仕分けしたり、さまざまな問題への彼の対応の仕方をいわゆる客観的な立場から〈査定〉したり、彼の仕事をなんらかの特殊な政治的ないし知的なアジェンダのために動員したりすることではなかった。わたしたちはむしろ、サイードの思想の生きた繊維がどのように織り合わさって、彼が書いたものや語ったもの、彼の公的な人格と私的な自我のなかで、彼の声となって立ち現れているのかということをこそ、追跡しようとしたのだった」
(W?J?T?ミッチェル)
2003年9月25日、サイード死去の翌日、本書の編者であるミッチェルとホミ?バーバは電話で相談し、サイードの精神にふさわしい追悼集がつくられることになった。その結果、17名の多方向からの文章をとおして、その人と思想と実践の全貌が、ここに明らかになったのである。