東京外国語大学日本課程推薦図書リスト・ 日本語教育学

  1. 日本語教授法
  2. 外国語教授法
  3. 第二言語習得論
  4. シラバス・カリキュラム・教材作成
  5. 代表的日本語教科書・教材
  6. 雑誌
  7. 資料
  8. 講座

 


1. 日本語教授法 

 

 基本レベル

 

木村 宗男 ほか 編『日本語教授法』(桜楓社 1989 \2100)

 日本語教育の基礎的な事柄をカバーした入門書。内容は、日本語教育の目的と方法、日本語教育の歴史、教授法、評価法、コースデザイン・授業に分かれており、特に歴史の部分が興味深い。現在の日本語教育の先駆者たちが長年の経験に即して論じているだけあって信頼のおける一冊である。

 

岡崎 敏雄 ほか 編『ケーススタディ日本語教育』(桜楓社 1992 \1845)

 日本語教育に関わる諸問題をトピックごとに分け、初心者が抱く問いに答える形で書かれている。キーワード、問い、今後の学習、参考文献も示してある。トピックは、教授法や教材に限らず誤用分析、自律的学習、学習ストラテジーなど幅広い。各トピックの概要を得るにはいいが、より深く知るには「参考文献」にある文献で補う必要があろう。

 

・関 正昭・平高 史也 編『日本語教育史』(アルク 1997 \2800)

 日本語教育の歴史が教授法、教科書、人物、地域、言語政策などテーマごとに綴られている。『日葡辞書』に始まり、戦時中の占領地での日本語教育など、現在の日本語教育の原点となる事柄を易しく解説してある。写真や図解が豊富で、歴史的な人物や教科書が身近に感じられる一冊である。ぜひ目を通してみてほしい。

 

・高見沢 孟『新しい外国語教授法と日本語教育』(アルク 1989 \2621)

 オーディオ・リンガル・アプローチ以降の教授法(コミュニカティブ・アプローチ、TPR、サイレント・ウエイ、CLL、サジェストペディア、ナチュラル・アプローチ)を中心に、基本理念とその技法について解説してある。アメリカの教授法が中心であるため、それ以外については木村ほか(編)『日本語教授法』や言語文化研究所(編)『長沼直兄と日本語教育』などで補うとよい。

 

・高見澤 孟 監修『はじめての日本語教育・1』(アスク 1996 \1900)

 日本語の音声、文法、文字・表記、語彙の他に社会言語学、心理学、第二言語習得など広い範囲に渡る解説がついているのが特徴。音声の解説にはビデオ・テープも別売されている。


  中級レベル

 

・国立国語研究所 編『日本語教育指導参考書  21. 視聴覚教育の基礎』

 (大蔵省印刷局 \650)

日本語教育において欠かせない、視聴覚教育の基礎について一通り解説してある。

 その他のシリーズの内容も示しておくので参考にしてほしい。 [  1. 音声と音声教育(文化庁編)/ 2. 待遇表現(文化庁編)/   3. 日本語教授法の諸問題 / 4. 日本語の文法(上)/  5. 日本語の文法(下)/ 6. 日本語教育の評価法/  7. 中・上級の教授法 / 8. 日本語の指示詞 /  9. 日本語教育基本語彙七種比較対照表/ 10. 日本語教育文献索引/  11. 談話の研究と教育 I / 12. 語彙の研究と教育(上)/  13. 語彙の研究と教育(下)/ 14. 文字・表記の教育 /  15. 談話の研究と教育 II / 16. 外来語の形成とその教育 / 17. 敬語教育の基本問題(上) / 18. 敬語教育の基本問題(下)/  19. 副詞の意味と用法 /   20. 方言と日本語教育 ] 

 

・国際交流基金『教師用日本語教育ハンドブックF・教授法入門』(凡人社 \979)

 日本語教師になる人が考えておいたほうがいい事柄をざっと網羅している。難しい内容ではないが、具体的な授業の方法など、かなり実践的な内容が書かれている。

 その他のシリーズの内容:[@文章表現/A表記/B文法I /C文法II/D語彙/E発音]

 

・言語文化研究所 編『長沼直兄と日本語教育』(開拓社 1981 \2800)

 現在の直接日本語教授法の基礎を作ったともいえる長沼直兄の戦前、戦後の働きと日本語教育の歴史的歩みが綴られている。

 

・岡崎 敏雄・岡崎 眸『日本語教育におけるコミュニカティブ・アプローチ』

 (凡人社 1990 \3200)

 コミュニカティブ・アプローチの理論的発展の歴史とともに教室での具体的な指導法が詳しく書いてある。今後の展望として最新の学習者研究や第二言語習得研究にも触れている。

 

・石田 敏子『入門日本語テスト法』(大修館 1992 \1553)

 日本語教師なら避けて通ることのできない言語テストについての入門書。

 

・川口 義一 ほか 編『日本語教師のための漢字指導アイディアブック』

 (創拓社 1995 \2400)

 漢字指導法のアイディアをふんだんに紹介している。学部生には実践的すぎるかもしれないが、漢字がどのように指導されているのかのイメージはつかめるのではないか。

 

・水谷 信子『実例で学ぶ誤用分析の方法』(アルク 1994 \2136)

 主に英語話者の日本語の誤用例の分析を通して、日本語の特徴や指導のポイントを考えられる一冊。どんな誤用例があるのかを知りたい人は目を通してみるといい。

・姫野 昌子 ほか 編ここからはじまる日本語教育』(ひつじ書房 1998 \1600)

 日本語を初めて教える人に対して教え方や留意点を分かり易く解説してある。

 

・永保 澄雄『日本語直接教授法』(創拓社 1987 \1545)

 学習者の母語を介さずに、日本語で日本語を教えるとはどのようなことかを扱った本。実践例が多く、非常に具体的に書かれている。

 

永保 澄雄『絵を描いて教える日本語』(創拓社 1995 \2200)

 「ドアが開いている」と「ドアが開けてある」の違いを絵で描き表わせるか。直接教授法で必須となる、絵による技法へのヒントがたくさんつまっている。

 

 

2.外国語教授法 

 

 基本レベル

 

Larsen-Freeman, D. Techniques and Principles in Language Teaching.

 (Oxford University Press, 1986 \2310)

 文法訳読法、ディレクト・メソッドなど8つの外国語教授法の基本理念を分かりやすく解説したもの。各教授法に基づいた授業の描写から始まり、その根底にある原則を導き出していく。分かりやすくしようと単純化しすぎた箇所もあるが、全くの初心者へのとりかかりとしてはお勧めである。「どのような教授法があるのか」をとりあえず知りたい人にお勧め。

 

Richards, J., & Rodgers, T. Approaches and Methods in Language Teaching.

 (Cambridge University Press, 1986 ¥4530)

 Larsen-Freemanよりもう少し詳しいこの教授法入門書は、教授法分析の概念として理論(Approach)、計画(Design)、手順(Procedure)を出したことで有名。これに基づいてオーディオリンガル・メソッド、コミュニカティブ・アプローチなど代表的な教授法を分析している。各教授法の特徴をより詳しく知るのに便利だが、歴史的な流れは弱いため、より専門的な概観にはHowatt (1984)を。

 

Littlewood, W.  Foreign and Second Language Learning.

 (Cambridge University Press, 1984 \4180)

 教育的な観点から外国語の学習を捉えている。誤用分析、学習者の個人差、学習ストラテジーなど外国語学習の諸分野を総轄した上で、教育への示唆を探る。文体は易しく、分かりやすく書かれている。

 

・伊藤 嘉一『英語教授法の全て』(大修館 1983 \1400)

 英語の教授法を、概念、歴史、種類、分類、評価、運用などの諸側面から検討している。また、個々の教授法として22の教授法を論じている。歴史的な流れはつかみにくいが、教授法を多方面から包括的に理解できる。

 

・スティービック, E.W. (梅田 巌 ほか 訳)『外国語の教え方』

 (サイマル出版会 1986 \2300)

 ベテランの外国語教師であるスティービックが、教室という場面に基づいた言語教授法を書き下ろしたもの。記憶のメカニズムを考慮した上で、一台のテープレコーダーの活用法から学習者とのインターアクションのしかたまで詳しく論じている。

 

  中級レベル

 

・リヴァーズ, M.W.(天満 美智子 訳)『外国語学習のスキル- その教え方』第2版

 (研究社 1987 \3000)  (Rivers, M. Wilga. Teaching Foreign-Language Skills.

  (University of Chicago Press, Second Edition, 1981 \4980).

 外国語教育を目指す人は一度は必ず読んでほしい図書。オーディオ・リンガル以降の言語学と教授法の変遷の概観を得たい人にもお勧め。

 

Stern, H. H. Fundamental Concepts of Language Teaching.

 (Oxford University Press, 1983 \6690)

 タイトルの通り、外国語教育における最も基本的な事項を概観したもの。この分野を本格的に勉強したい人は本の厚さにめげずにぜひチャレンジしてみてほしい。

 

Howatt, A. P. R. A History of English Language Teaching.

 (Oxford University Press, 1984 \4680)

 英語教育の歴史について最も詳しくかつ信頼できる一冊。古くからある優れた教授法や教材の記述には感動する。英語が多少難しいのが難だが、参考用として、通読は無理でも目を通してみてほしい。

 

Brumfit, C. J. & Johnson, K. The Communicative Approach to Language Teaching.

 (Oxford University Press, 1979 \4190)

 ハリデイ、ハイムズ、ウイドウソン、トリムなどなど、コミュニカティブ・アプローチの創始者達が書いたコミュニカティブ・アプローチについての本。多少上級者向け。

 

クラッシェン, S.D. & テレル, T. D.(藤森 和子 訳)『ナチュラル・アプローチのすす

 め』(大修館 1986 \1900)(Krashen, S. D. & Terrell, T. D. The Natural Approach :

 Language Acquisition in the Classroom. Alemany, 1983)

 多くの批判を受けながらもいまだにアメリカで根強い影響力を持つクラッシェンのナチュラル・アプローチの原点。これを知らないと外国語教育の議論についていけないことが多いだろう。

 

Widdowson, H. Teaching Language as Communication.

 (Oxford University Press, 1978 \4170)

 コミュニカティブ・アプローチとは一体何なのか、応用言語の創始者の一人、ウイドウソンが問いかける。かなり有名な本。

 

・スティービック, E. W. (石田 敏子 訳)『新しい外国語教育- サイレント・ウエイの

 すすめ』(日本ブリタニカ 1979 \2816)

 外国語教育なのにサイレント(沈黙した)とはどういうことか?と思うかもしれないが、いわゆる「革新的な」教授法の一つ、サイレント・ウエイのメカニズムをスティービックが解説する。

 

・長澤 邦紘『コミュニカティブ・アプローチとは何か』(三友社 1988 \2000)

 日本の英語教育の文脈で見た場合、コミュニカティブ・アプローチはどのように適用できるのか、という視点から書かれたもの。日本語で読めるのが利点。

 

=古典=

 

・パーマー, H. E.(野田 育成 訳)『言語学習の原理』(リーベル出版 1989 \2300)

 (Palmer, H. E. The Principles of Language-Study. George G. Harrap & Co., 1992)

 著者のハロルド・パーマーは戦前の日本に14年間にわたって住み、日本の英語教育に尽くした英語教育学者で、外語大でも教えていたことがあるという。その間、長沼直兄などを通して日本語教授法にも多大な影響を与えた。これはパーマーの初期の著書で、タイトルの通り言語教育を「言語学習」(language study) として捉え、最も効果的に(学習者が)学ぶための基本原理を基に教授法を論じている。母語を介さない教え方やコースデザインの基本原理は現代でも参考になる。また、幼児の母語の習得過程に通じる「無意識的な学習」と成人の学習過程に通じる「意識的学習」など、非常に現代的な問題も論じている。外国語教育の原点としてぜひ読んでみてもらいたい。

 

・フリーズ, C. C.(太田 朗 訳)『外国語としての英語の教授と学習』(研究社1957絶版)

 (Fries, C. C. The Teaching and Learning of English as a Foreign Language.

  University of Michigan, 1945)

 アメリカのミシガン大学でいわゆるオーラル・アプローチを開発したチャールズ・フリーズの著書。アメリカ構造言語学の影響を色濃く受けたオーラル・アプローチは、戦後の日本にELECなどを通して入り、日本語教育にも多大な影響を残している。教授法自体は後に大きな批判を受けるが、有名な「パターン・プラクティス」は現在も練習形態として欠かせない。この後登場するコミュニカティブ・アプローチの真価を理解するためにも、ぜひ原典にあたって徹底した構造主義、行動主義ぶりを味わってほしい。

 

・イェスペルセン, O. (前田 太郎 訳、大塚 高信 補訳)『語学教授法新論』

 (富山房 1941 絶版) (Jespersen, O. How to teach a foreign language.

 George Allen and Unwin Ltd., 1904)

 デンマーク人の英語学者であるオットー・イエスペルセンは、20世紀初頭にヨーロッパで起った外国語教育改革運動の提唱者の一人でもある。文法訳読法にかわる、より近代的な教授法の原理を説いたもので、その神髄は後にハロルド・パーマーなどに受け継がれて、現代の直接教授法の基盤となっている。読んでいると、直接教授法に関する諸概念が実はここにあったと驚かされる。また、彼が提案する教室活動例は非常に興味深く、読んでいて新鮮である。英語版は原語(デンマーク語)からの翻訳。

 

 

3.第二言語習得論 

 

 基本レベル

 

・吉田 研作・ダグラス・ブラウン『英語上達15のメニュー』

 (ザ・ジャパン・タイムズ 1990 \1030)

 さまざまなテストを通して自分の外国語学習のスタイルを知ることができるようになっている。気軽に読めて、また第二言語習得について考えるきっかけにもなるのでは。

 

Lightbown, Patsy M. & Spada, Nina. How Languages are Learned.

 (Oxford University Press, 1993 \3160)

 外国語はどのようにして学ばれるのか、についてのこれまでの研究成果をイラストを交えて分かり易く書いたもの。同テーマを扱った下記のエリスよりも一段階やさしい。

 

・エリス, R.(牧野 高吉 訳)『第2言語習得の基礎』(ニューカレンツインターナショナル 1988 \3900)

 (Ellis, R. Understanding Second Language Acquisition. Oxford University Press,

 1986 \4960)

 第二言語習得について勉強したい人は一度は読むべき図書。これまでの研究の成果をうまくまとめている。

 

・クック, V.(米山 朝二 訳)『第2言語の学習と教授』(研究社  1993 \2900)

 (Cook, Vivian, Second Language Learning and Language Teaching. Edward Arnold,

 1991 \3620)

 第二言語の学習と教授についての入門書だが、どちらかというと学習の側に焦点がある。また、外国語学習の意義についてのいろいろな観点の紹介は参考になる。

 

・ルービン, J., トンプソン, I. (西嶋 久雄 訳)『外国語の効果的な学び方』

 (大修館 1998 \1500)

 これは、外国語を、学校や先生に頼るのでなく自分自身で効果的に学んでいくためのヒントを与えてくれる本だが、随所随所に第二言語習得研究の重要な成果がかいまみられる。上の『英語上達15のメニュー』よりも詳しい。

  中級レベル

 

・デュレイ, H., バート, M., & クラッシェン, S.(牧野 高吉 訳)『第2言語の習得』

 (弓書房 1984 \3398)

 (Dulay, H., Burt, M., & Krashen, S. Language Two. Oxford University Press, 1982)

 「教授法」の箇所で載せたクラッシェンのナチュラル・アプローチの理論編。クラッシェンはやはり一読するべきであろう。

 

Wenden, A. & Rubin, J. Learner Strategies in Language Learning.

 (Prentice Hall, 1987 \4320)

 外国語学習者が使うストラテジーについての研究を集めたもの。この分野ではかなり有名な本。将来自分が研究をする際に参考になる例が多数見られよう。内容はかなり高度。

 

McLaughlin, B. Theories of Second Language Learning.(Edward Arnold, 1987 \3900)

 第二言語習得の諸理論を評価しようするもの。有名なクラッシェン批判や、また著者自身が提唱する認知的理論は多くの示唆を与えてくれる。

 

・迫田 久美子『中間言語研究』(渓水社 1998 \8000)

 日本語学習者はどのようにして「コ・ソ・ア」の体系を学んでいくのか。数多くのデータを通して日本語習得の一面を明らかにする実証的研究書。かなり専門的。

 

Brown, H. D. Principles of Language Learning and Teaching.

 (Prentice Hall, 1994 ¥3960)

 特に学習スタイルや学習ストラテジーについて知りたい人は参考にするべき本。

 

 

4.シラバス・カリキュラム・教材作成 

 

 基本レベル

 

Krankhe, K. Approaches to Syllabus Design for Foreign Language Teaching.

 (Prentice Hall, 1986 \1750)

 外国語教育の内容編成(シラバス・デザイン)の基本的なタイプを分かりやすく解説。この分野では入門書といえるだろう。

 

Nunan, D. Syllabus Design. (Oxford University Press, 1988 \3100)

 特にタスク・シラバスについて、比較的やさしく書かれた本。

 

 

・日本語教育学会コースデザイン研究委員会『日本語教育機関におけるコース・デザイン』

 (凡人社 1991 \3107)

 主な日本語教育機関や教科書で教えられている内容(音声、文字、語彙、文型、機能、場面)を調査、分析したもの。参考資料として役に立つであろう。

 

・岡崎 敏雄『日本語教育の教材』(アルク 1989 \2800)

 日本語教育における「教材」の役割を教授法との関係で捉え、教師が教材を分析的に見るための指針を与えてくれる。

 

・フィノキィアーロ, M. & ブラムフィット, C.(織田 稔・萬戸 克憲 訳)

 『言語活動中心の英語教授法』(大修館 1987 \2781)

 言語の構造だけでなく場面や機能も取り入れたシラバス・デザインの方法を具体例を通して示してくれる。実践的だがやや専門的。

 

  中級レベル

 

White, R. V. The ELT Curriculum : Design, innovation and management.

 (Blackwells, 1988 \5030)

 歴史上存在したシラバスのタイプを2つに大別し、その特徴を記述する。上述のKrankheより一段階上のシラバス・カリキュラムの入門書。

 

・ウィルキンズ, D. A. (島岡 丘 訳注)『ノーショナル・シラバス』

(桐原書店/オックスフォード 1984 \1900)(Wilkins, D.A.  Notional Syllabuses.

 (Oxford University Press, 1976)

 言語を構造だけでなく概念・機能の観点から捉え直し言語教育に応用するために提案された内容項目のリストが中心。シラバス・デザインに大きな転換をもたらした有名な本。

 

・ジョンソン, K. & モロウ, K. (小笠原 八重 訳)『コミュニカティブ・アプローチと

英語教育』(桐原書店 1984 \3296)

 コミュニケーションを重視した概念/機能別シラバスとは何か。それを用いてどのように教えていくのか。英国の教材作成者、現場教師が書き下ろした多少専門的な図書。

 

Prabhu, N. S. Second Language Pedagogy. (Oxford University Press, 1987 \3490)

 インドの学校で始まったある英語教育のシラバスを理論化し、タスクシラバスとして世界に知らしめた一冊。

 

Nunan, D. Designing Tasks for the Communicative Classroom.

 (Cambridge University Press, 1989 \4530)

 基礎レベルのSyllabus Designより一段階専門的なタスク・シラバスについての一冊。

代表的日本語教科書・教材 

  (教材研究の上で一度は目を通してもらいたいもの)

 

長沼 直兄『(再訂)標準日本語読本 巻一』(東京日本語学校 1950 全8巻 \72600)

 H. PalmerやM. Berlitzの教授法を取り入れ、教室で実物や文脈を通して日本語が教えられるように体系的に内容が段階づけられている。日本語教科書の草分け的存在として広く利用されてきたもの。

 

Elenor Harz Jorden Beginning Japanese Part I (Yale University Press 1962 \4120)

 いわゆるオーディオ・リンガル・メソッドに基づいてアメリカで編纂された教科書。構造言語学の立場での言語分析に基づき、話し言葉の特徴の徹底的な教授を目指し、語句や文にはすべてアクセント記号がついている。

 

国際基督教大学語学科 編『Modern Japanese for University Students Part I』

 (国際基督教大学語学科 日本語研究室 1963 \1800当時価格)

 いわゆるオーディオ・リンガル・メソッドに基づき日本で編纂された教科書。構造言語学に基づいており、語句にはすべてアクセント記号がついている。また典型的な各文型ドリルが示されている。

 

(財)海外技術研修調査会編『Nihongo no Kiso I (日本語の基礎)』

 (漢字かなまじり版)(スリーエーネットワーク 1972)

 もともと技術研修生に短期間で日本語を習得させるために編纂されたものだが、その後様々な教育機関で広く使われてきた。基本的にオーラル・メソッドに基づいている。

 

水谷 修・水谷 信子『An Introduction to Modern Japanese』

 (ジャパンタイムズ 1977 \3578)

 構造シラバスでありながら、自然な会話の流れの中で適切な文が使えるようにすることをねらったもの。文法説明だけでなく言語の運用面の説明がついている点で出版当時画期的な教科書であった。

 

文化庁文化部国語科 編『中国からの帰国者のための生活日本語 I』

 (文化庁 1983 \1900)

 中国からの帰国者が日常生活を営むのに必要となる日本語を編纂したもの。場面を中心に内容が編成されている(場面シラバス)のが特徴的。

 

大坪 一夫 監修『Situational Functional Japanese I』

 (凡人社 1991 ノート・ドリル \3000,\2600)

 いわゆるコミュニカティブ・アプローチに基づいた教科書で、文法項目を場面と機能と結び付けて提示し、コミュニケーション・ストラテジーも扱っている。

 

国立国語研究所 企画『日本語教育映画基礎編』全30巻

 (日本シネセル(株)制作 1983 NTSC: 全\432000)

国際交流基金 企画『テレビ日本語講座初級I スキット ヤンさんと日本の人々』

 ((株)ビデオペディック制作 1984 VHS 120分1本\28000)

 上記2つは代表的映像教材として国内外で広く使われてきた。『基礎編』は文法項目重視、『ヤン』は場面における自然な言語使用の提示を特徴とし、しばしば対比的に論じられてきた。

 

国際交流基金 企画『写真パネルバンク』T〜X(日本出版貿易 \124263)

 日本人の日常生活に関係の深い場所や事物を表わした写真パネル。実物や絵で提示できないものの提示用に広く使われてきた。

 

海外技術者研修協会 編『新絵教材』(スリーエーネットワークカラー326枚 \58252)

 『日本語の基礎』に伴う絵パネルだが、パネルだけでも国内外で広く使用されている。言語表現の提示にどのような絵が用いられているかを見る上でも興味深いだろう。

 

 

6.雑誌 

 

日本語教育学会『日本語教育』(平均 \2500)

 日本語教育学会の刊行誌。日本語教育関係としては最も代表的なもの。第1号からずっと見ていくとそのまま日本語教育の歩みが浮かび上がってくる。

 

国際交流基金『世界の日本語教育』(平均 \2000)

 世界各地の日本語教育関連の研究が見つかる雑誌。

 

第二言語習得研究会 編『第二言語としての日本語習得研究』\1500)

 特に第二言語習得研究を中心に集めたもの。

 

Applied Linguistics

 応用言語学で最もハイレベルの雑誌。

 

Language Learning

 外国語の教育よりは習得の研究に重点をおいた雑誌。

 

Language Teaching

 その年に発表された外国語教育関係の論文の要旨をテーマ別に載せたもの。資料を探す上で便利。

 

 

Language Teaching Research

 外国語教育関係の研究のために最近作られたもの。

 

JALT Journal

 日本最大の外国語教育の学会であるJALT(全国語学教育学会)の刊行誌。

 

System

 もともとテクノロジーと外国語教育を中心に扱った雑誌だが、最近はいろいろな研究が載っている。

 

 

7.資料 

 

日本語教育学会『日本語教育事典(縮刷版)』(大修館 1993 \6695)

日本語教育学会『日本語教育ハンドブック』(大修館 1990 \4796)

 上記2冊は日本語教育関係の代表的な事典。内容面(音声・音韻、文法、意味、文字など)と教授法が中心なので、第二言語習得論などについて調べる時は後述のRichardsほか(1992)を見るといい。

 

日本語教育学会『日本語テストハンドブック』(大修館 1991 \4175)

 日本語のテストに関する事典。テストの理論から作り方までがカバーされている。また、「日本語習得適性テスト」や「日本語能力試験」についても詳しく書いてあるので参考になる。

 

国立国語研究所『日本語教育のための基本語彙調査』(国立国語研究所 1984 \6000)

 日本語教育の内容を考える上で資料となる語彙調査として代表的なもの。

 

国立国語研究所『日本語教育文献索引』(大蔵省印刷局 1982 \1398)

 日本語教育の文献が載っている。

 

河原崎幹夫 ほか 編『日本語教材概説』(北星堂書店 1992 \2250) 

 代表的日本語教材の内容、特徴を解説したもの。

 

国際交流基金『海外の日本語教育の現状』(国際交流基金 1993 \4500)

 国際交流基金が行った海外の日本語教育の現状の大々的調査結果。海外の学習者の数や種類から、使われている教材まで概観がつかめる。

 

日本語教育学会『日本語教育の概観』(日本語教育学会 1995 \1000)

 1995年時点での国内外の日本語教育の現状を統計資料を基に概観したもの。

 

国際交流基金・日本国際教育協会『日本語能力試験 出題基準』(凡人社 1994 \1950)

 日本語能力試験の内容の基準を示したもの。初・中・上級の内容範囲を定める上での目安になる。

日本語教育史資料叢書<復刻版>『日本語教授法基本文献』 I, II, III(全10巻 \95146)

 日本語教育の歴史上重要な教材、書物などを復刻したもの。

市河 三喜 監修『英語教授法事典』(語学教育研究所 開拓社 1970 \2000)

 「語研」が編纂したもので、主にH. パーマーのメソッドに詳しい。

 

Richards, J. C. et. al. Longman Dictionary of Language Teaching and Applied Linguistics. ( Longman 1992 \4270)

 応用言語学用語についての辞典。外国語教育一般、第二言語習得関係の用語はこれをひくと良い。

 

 

8.講座 

 

宮地 裕 ほか 編『講座日本語と日本語教育』全16巻(明治書院 1989〜91 全\44800 )

 

 

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