学部長メッセージ
言語文化学部長
三宅 登之
東京外国語大学はその名称から、あたかも語学の勉強ばかりするところであるかのような誤解を受けることが、時にはないわけでもありません。私自身は言語研究者であり語学教師なので、語学の勉強だけでも素晴らしいではないかという気持ちもあるのですが、今それはちょっと脇に置いておくとして、言うまでもなく本学は語学の勉強「だけ」をするところではありません。しかし一方で、言語の学習が本学で重要な位置を占めていることも事実です。それは、言語文化学部も国際社会学部もまず入学後の1?2年次では、世界教養プログラムで専攻言語を学習し世界の様々な地域の言語の基礎を身につけるという本学のカリキュラムにも表れています。
さて、言語文化学部という名称にも「言語」という用語が出てきます。しかしここで言うところの言語は、1?2年次の専攻言語科目で学習する言語とは異なる意味合いを持っています。言語にはそれを用いて活動を行うといういわばツールとしての側面もありますが、一方では人間の精神活動の表象たる言語は単なるツールではない文化的側面を持つ研究対象になりうるものであることは言うまでもありません。言語文化学部の3?4年次で研究するディシプリンとしては、言語学で言語そのものを研究することもできますし、世界の諸地域の文学以外にも、映画や音楽、芸術など広く様々な文化を研究対象としています。
このように、言語と文化への深い理解を通じて、世界の架け橋として活躍する国際教養人の養成を目指す言語文化学部で研究が可能なディシプリンは、特定の国や地域についての研究を深めてゆく地域コースであっても、地域横断的に専門的学びを究めてゆく超域コースであっても、基本的にはやはり世界諸地域の言語に根ざした人文科学であると言えます。現在世界では、地域間や社会の分断が起きるなど、様々な問題が発生しています。このような問題の解決に寄与できるのは、なにも社会科学の研究だけではありません。言語文化学部で学んだ皆さんは、人文科学的視点から人間とは何かを考察し、多様性を力に変え多文化共生に寄与するという本学の使命を、言語と文化という切り口から果たすことが可能となるのです。
グローバル化の進む現代では、共通言語の一つとなっている英語の学習も必要です。他方では同時に、多言語多文化の環境の中で、それぞれの国や地域の言語や文化を尊重し、その地域の言語を用いた高いコミュニケーション力を有し、文字通りグローバルに活躍していく力も求められます。その時に、言語文化学部で学んだ皆さんの世界諸地域の言語や文化に対する深い知見が、真の意味で人と人を結び、力を発揮することは間違いありません。