第5回講演 「世界システムとBLM:極東からグローバルサウスを考える」/「アフリカ研究者がBLMから学んだこと」
第5回目のテーマは「アフリカ?グローバリゼーション?BLM」です。
「アメリカの黒人」という言葉が特殊な意味をもつように、黒人問題はアフリカとアメリカで異なる位相をもつ。だが近代以降のグローバル世界で奴隷制と資本主義が進展し、科学的普遍主義を携えた西洋的意識が、「黒」や「有色」を貶めてきた歴史は厳然と存在する。連続セミナー第5回は、第一期の締めとして、セミナー企画者であるサステイナビリティ研究の担当者2名がアフリカとグローバリゼーションの観点からBLMを考察する。
講演者/講演タイトル
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中山智香子(大学院総合国際学研究院教授)
「世界システムとBLM:極東からグローバルサウスを考える」
https://www.tufs.ac.jp/research/researcher/people/nakayama_chikako.html
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武内進一(現代アフリカ地域研究センター/大学院総合国際学研究院教授)
「アフリカ研究者がBLMから学んだこと」
https://www.tufs.ac.jp/research/researcher/people/takeuchi_shinichi.html
日時
2021年2月10日(水)17時40分~19時40分
Zoomウェビナーでのオンライン開催
プログラム
1.開会(0:00)
2.講演「アフリカ研究者がBLMから学んだこと」武内進一教授(4:53)
3.講演「世界システムとBLM:極東からグローバルサウスを考える」中山智香子教授(36:58)
4.講演者間のコメント、質問(1:04:06)
5.振り返り(1:19:55)
6.参加者との質疑応答(1:30:37)
7.閉会(2:03:03)
備考
使用言語:日本語
参加費:無料
事前申し込み必要(本学学生優先。先着受付順。)
共催
東京外国語大学多文化共生研究創生WG、現代アフリカ地域研究センター、海外事情研究所
講演「世界システムとBLM:極東からグローバルサウスを考える」参考文献
- 荒このみ 2009.『マルコムX—人権への闘い』岩波書店.
- デパント, V. 2020.「何が問題なのかわからない白人の友人たちへ」『世界』8月号、52-55.
- 中村隆之 2020.『野蛮の言説—差別と排除の精神史』春陽堂.
- 中山智香子 2015.「世界システム論の潜勢力—ヘゲモニー論を超えて」菅孝之編『叢書ヒドラ—批判と運動1』お茶の水書房 55-78.
- 松本尚之 2014.「在日アフリカ人の定住化とトランスナショナルな移動—ナイジェリア出身者の経済活動を通じて」『アフリカ研究』85, 1-12.
- 牧野良成 2020.「研究ノート—フェミニズムの歴史化における<波>区分を問い直す―日本語圏では、なんのために、どんな風に用いられたか」『女性学年報』41, 41-62.
- ヤン, M. 2020.「ブラック?ライヴズ?マターとは何か」『ブラック?ライヴズ?マター—黒人たちの叛乱は何を問うのか』河出書房新社, 2-13.
- Arrighi, G. 2009. The Winding Paths of Capital: Interview by David Harvey. New Left Review 56, pp.61-94.(「資本の曲がりくねった道」『北京のアダム?スミス—21世紀の諸系譜』中山智香子他訳、2011、作品社、541-588)
- Balibar, E. and Wallerstein, I. -1988. Race, Nation, Class.(『人種?国民?階級:揺らぐアイデンティティ』唯学書房、2014年)
- Balibar, E. Wallerstein, I. Bojadziv, M. 2018. Is there an option to go beyond racism? Bjadzijev, M. and Klingan, K(ed.), Balibar/Wallerstein’s “Race, Nation, Class”: Reflecting Dialogue for our Times, Berlin: Haus derKulture der Welt., pp.240-254.(「人種主義を乗り越えることはできるか:エティエンヌ?バリバールとイマニュエル?ウォーラーステインの対話」太田悠介、中山智香子訳?解題『神戸市外大叢論』73(1), 2021年3月刊行予定)
- Collins, P. H. and Bilge, S. 2016/2020. Intersectionality, 2md ed. Cambridge/ Medford: Polity Press.
- Garza, A. 2020, The Purpose of Power: How We Come Together When We Fall Apart, Random House LLC.(アリシア?ガーザ『世界を動かす変革の力:ブラック?ライブズ?マター共同代表からのメッセージ』人権学習コレクティブ監訳、明石書店、2021)
- Lopez, A. J. 2007. Introduction: The (Post) Global South, The Global South 1(1), pp.1-11.
- Mahler, A. G. -2015. The Global South in the belly of the beast: Viewing African American Civil Rights through a Tricontinental Lens, Latin American Research Review 50(1), pp.95-116.
- Mahler, A. G. 2017. Global South, Oxford Bibliographies in Literary and Critical Theory, O’brien E. (ed.), New York: Oxford University Press.
- Young, R. J. C. 2003. Postcolonialism : A Very Short Introduction, Oxford University Press.(『ポストコロニアリズム』本橋哲也訳、2005年、岩波書店)
講演「アフリカ研究者がBLMから学んだこと」参考文献
- 上杉忍 2013.『アメリカ黒人の歴史—奴隷貿易からオバマ大統領まで』中公新書.
- 中篠献 2016.「アメリカ合衆国—ヘイトクライムと監獄社会」西崎文子?武内進一編『紛争?対立?暴力—世界の地域から考える』岩波ジュニア新書 45-64.
- 中野聡 2009.「『植民地責任』論と米国社会—承認?抗議?生存戦略』青木書店.
- 本田創造 1991.『アメリカ黒人の歴史(新版)』岩波新書.
- 宮本正興?松本素二編 2018.『新書アフリカ史(改訂新版)』講談社現代新書.
- 牧野久美子 2016.「『Must Fall』運動を振り返る―2015年の南アフリカにおけるプロテストの軌跡」『アフリカレポート』54: 44-49.
- モリスン、トニ 2019.『「他者」の起源—ノーベル賞作家のハーバード連続講演録』集英社新書.
- Acharya, Amitav & Barry Buzan 2019. The making of Global International Relations. CambridgeUP.
- De Witte, Ludo 2000. L’assassinat de Lumumba. Karthala.
- Hochschild, Adam 1999. King Leopold’s Ghost: A Story of Greed, Terror, Heroism in Colonial Africa. Mariner Books.
参加者の声
- 最後に過去のセミナーのふりかえりも含めて、BLMが突きつける問題を解説してくださり、理解が深まりました。
- コンゴ?主共和国とベルギーについて専門の方からのお話を聞くことが出来て、非常に良かったです。今後も様々な角度から、BLMについて、また人権差別問題について理解を深めていきたいと考えています。
- All lives matterやAsian lives matterなどの言葉は、一見BLMへの連帯を示しているようですが、しかし、既存の問題を別の次元(すべての人々の命が大切だなど)にずらしてしまうものであり、連帯を示したことにはならないのだということが、とても印象的でした。BLMを唱えなければならない状況が今まで続いてきていたのだという事実をまず受けとめることが大切なのではないかなと感じました。
- 今回は、Rhodes Must Fall運動やGlobal Southについて知ることができたのは大きな収穫でした。これまで開催された5回のうち、3回を受講しましたが、ポストコロニアリズムという大きな流れや、今回武内先生のおっしゃった「変わらないこと?変わりつつあること」の交差が大変印象に残りました。様々な角度から、現在の世界の流れを見ることができ、有意義なセミナーであったと感じます。