カンボジア バンテアイ?ミアンチェイの記憶:ルム?スレイネイさんインタビュー
外大生インタビュー
「私のふるさと~外大生にインタビュー~」企画第8弾では、カンボジアのバンテアイ?ミアンチェイ州出身、交換留学生のルム?スレイネイさん(国際教育プログラム生(ISEP生)、2021年10月?)に、彼女のふるさとの魅力を取材しました。カンボジアのおすすめスポットや美味しい料理、地域の人々の人柄について、その魅力を存分に語っていただきました。またスレイネイさんは、新型コロナウイルス感染症の世界的な拡大による入国制限の影響で、10月から3月までは本学の講義をカンボジアからオンラインで受講しました(2022年4月にようやく来日を果たし、春学期は本学のキャンパスで学生生活を送りました)。入国制限の中でオンライン留学を継続した心境についても、併せて伺いました。
インタビュー?取材担当
- 取材担当:国際社会学部中央ヨーロッパ地域/チェコ語3年 金澤鼓(かなざわつづみ)さん
- 記事担当:言語文化学部中央ヨーロッパ地域/ポーランド語3年 山口紗和(やまぐちさわ)さん
- 通訳担当:国際社会学部東南アジア地域/カンボジア語4年 野口亜依(のぐちあい)さん
(いずれも広報マネジメント?オフィス学生取材班)
おいでよ、カンボジア!~観光名所、地元の味、伝統行事紹介~
―――こちらはどこで撮ったお写真ですか。
これはカエプというビーチで撮った写真です。ここには1年に2回ほど遊びに行っています。私が住んでいた町からは離れたところにあるのですが、泳いだりご飯を食べに行ったりして楽しく過ごすことができる場所です。カンボジアだと1年中海水浴をすることができます。
―――とても素敵ですね。手前に写っている蟹のようなものは、このビーチのシンボルですか。
そうですね、このビーチにはたくさんの蟹がいます。泳いでいる時もたくさん見られますし、小さな蟹は素手で捕まえたりすることもあります。蟹を取る漁師もいるので、レストランでも食べられます。まさにシンボルのような存在です。
―――こちらに写っているのは大仏ですか。
いいえ、これは2年前ボコール山を訪れた時に撮影した、“マオおばあさん”の銅像です。マオおばあさんのところに行ってお参りをすると、病気が治るという言い伝えがあり、多くの人々から崇められ続けています。
―――こちら、スレイネイさんおすすめのお料理とのことですが、とても美味しそうですね!
これはスガオ?チュロ?トライという料理です。作り方がとても簡単で、お気に入りの料理の1つです。辛すぎることもなく、酸っぱすぎることもない、塩味とスパイスの効いた味が魅力です。
―――こちらはどのような時に食べられるものですか。
これは、カンボジアの伝統行事、プチュム?バンでお供えするノム?オンソームです。プチュム?バンは、日本のお盆にあたる仏教の伝統行事で、亡くなった家族やご先祖様にお供え物としてこのお菓子を準備します。毎年プチュム?バンの度に手作りして、お寺などに持っていきます。バナナの葉で包まれたケーキのようなお菓子なのですが、カンボジアではバナナの葉を料理を包むのによく使います。
ふるさとでの暮らし
―――ふるさとではどのような幼少期を過ごされていたのですか。
両親が田んぼを持っていて米作りをしていたので、稲刈りの時期になると、私と近所の子どもたちみんなでそれを手伝っていました。生まれてからずっとここに住んでいるのですが、とにかく楽しい想い出でいっぱいです。
―――ふるさとの好きなところを教えてください。
地域の人、料理、学校が好きです。村に住んでいる人たちは心が温かく、両親が仕事で忙しい時、近所で子どもたちの面倒を見合うなど、困った時はお互いに助け合います。それから、先ほどご紹介したようなカンボジア料理が大好きです。通っていた村の小学校も大好きで、さまざまな学びを得た大切な場所です。
―――可愛らしい猫ちゃんですね!! お名前は何というのですか。
ありがとうございます。この子はアウアウといいます。両親は、私が生まれる前から猫を飼っていたそうです。両親が飼っていた猫はもう死んでしまったのですが、今はその子どものアウアウと、ソンボーの2匹と一緒に暮らしています。猫たちといると元気をもらえて、いつも癒されています。
オンライン留学への葛藤と決意
―――プログラムを開始した昨年10月から、入国制限の影響でオンラインでの留学を余儀なくされていたと伺いました。オンライン留学についてスレイネイさんの率直なご意見をお聞かせください。
長所と短所を両方感じています。まず長所としては、オンライン上ではありますが、日本、フランス、フィリピン、ケニア、モンゴル、コロンビアなど、世界中にたくさんの友人ができたことも嬉しく思っています。一方、短所としては、やはり友達に会えないことが大きいです。加えて、パソコンの画面と毎日にらめっこしないといけないので目が疲れること、インターネット代が負担になっていることも挙げられます。
―――半年以上、終わりがなかなか見えない入国待機をされていたわけですが、どのような思いで日々生活されていましたか。
日本に直接行って友人や先生と交流したいという思いがあったため、それが叶わず、精神的につらかったですね。しかしながら、日本語や日本文化が学べる機会は貴重なため、オンラインであっても何とか留学を諦めずに継続しました。
スレイネイさんと日本
―――多くの国々の中から、日本を留学先として選んだきっかけを教えてください。
着物やお寿司などの文化に惹かれたからです。日本人の友人が欲しかったこと、日本語を学んでみたいと思っていたことも決め手になりました。
―――日本へ留学することが決まった時、ご家族の反応はいかがでしたか。
新しい言語や文化を学ぶには非常に良い機会だと喜んでくれました。カンボジア文化を広めてほしい、また日本文化についてももっと知りたいと言っていました。
―――4月から来日ができたのですね。日本ではどんなことを学びましたか。
はい、これまで学んできた日本語の勉強をさらに深めることが出来ました。また留学生や日本人学生と共に日本文化を学び、日本の様々な場所へ遊びに行ったり、日本料理を食べたことが思い出深いです。
―――どんな所へ行ったのでしょう。
富士山やディズニーランド、東京スカイツリー、東京タワー、松本城、鎌倉などです。
―――どんな日本文化が印象に残りましたか。
まず日本の神社が印象に残っています。日本の歴史的な建物がとても美しかったです。また日本の人たちが神社にお祈りをするとき、お賽銭を投げることには驚きました。次に日本食の中では納豆を初めて食べました。見た目がとてもねばねばしているのに、食べてみるとすごく美味しかったです。最後に日本の電車はとても種類が多いですね!カンボジアの電車はゆっくり走るので、日本の電車の速度の速さにもとても驚きました。
―――カンボジアに帰ってからは、どんなことを勉強するのですか。
はい、この夏に留学期間が終わり、カンボジアに帰ります。カンボジアでも引き続き日本の言語?文化を学び、他のカンボジア学生たちにも教えていきたいと思っています。
―――将来の夢や目標はありますか。
私の将来の夢は、日本でカンボジア語の先生になることです。現在東京外国語大学に客員教授としていらしている王立プノンペン大学の教授、ロアト先生に憧れています。ロアト先生のような先生になるために、日本語も日本文化についてもたくさん学んでいきたいと思います。
おわりに
―――スレイネイさんにとってふるさととは、どのような存在ですか。
私にとって、ふるさとは単なる出身地に留まらず、幼い頃から家族や多くの友人たちに囲まれて育った、人々とのつながりがたくさんある想い出の場所です。
編集後記
スレイネイさんのお話からは、カンボジアと日本、両方の国に対する愛が非常に伝わってきました。スレイネイさんのふんわりとした柔和な雰囲気と優しいお人柄がインタビューを通して伝わり、バンテアイ?ミアンチェイ州で豊かな心を持つ人々に囲まれ育ったからであろうと実感しました。伺った内容すべてを記事に収め切ることはできませんでしたが、素敵なお話をたくさんお聞かせいただき感謝しています。また、お忙しい中、本インタビューで通訳を務めてくださった野口亜依さんにも、この場をお借りしてお礼申し上げます。ありがとうございました。
取材担当:山口紗和(言語文化学部ポーランド語3年)