2020年度 活動日誌
3月 活動日誌
2021年3月31日
GJOコーディネーター 久保 賢子
雨が降ったり風が強かったり…暖かかったり寒かったり…時には春を通り過ぎ夏日よりという、毎日天気が予測できない日々が続いています。アーモンドの花はすっかり散ってしまいましたが、様々な花が次々に咲いています。
コロナウイルスに振り回され一年以上がたちましたが、ワクチン接種がようやく再開されたようで、一歩ずつコロナウイルスから解放される日に近づいている気もします。一方、3月下旬からの聖週間を前に、メディアでは政府の対策に対して「クリスマス休暇の二の舞だ」と批判したり、「必ず第4波が来る」「もうすでに第4波が来ている」と市民に警鐘を鳴らす声が聞かれます。春の到来に聖週間の休暇が重なり、みんな気が緩んできてしまうところ、もうひとふんばりといったところです。(写真1)
さて、今月は、日本映画祭に続き、恒例の日本文化週間が行われました。全面オンラインでの開催となり、人が集まる楽しみはなかったものの、オンラインだからこそ参加できた、参加してみた、という人もいました。
文献学部内、サラマンカGJOでは、留学生を迎えて留学談話会なるものをシリーズで始めました(写真2)。第一回は留学準備について。持ち物、お金、保険、ビザ、住むところなど、大学によって若干違うものの、経験者による話で、「見えないこと」に対する不安が少しは消えたようです。第二回は奨学金と早稲田大学の授業、大学生活について。文部科学省の奨学金MEXT (Ministry of Education, Culture, Sports, Science and Technology) と日本学生支援機構JASSO (Japan Student Services Organization) を受けて留学に行っていた学生から、どのように申請したか、採用されたときの義務など、いろいろなことが聞けました。スピーカーとなってくれた学生たちは、初め奨学金に対して何も分からず、書類を集めているときもどうしたらいいのか大変困ったようで、経験者から話が聞ける場があったらどんなに助かったことかと思い、参加してくれたそうです。日本留学に限ったことではないですが、特に日本での書類はややこしいと皆声を揃えていました。また、早稲田大学の日本語教育プログラムには履修できる科目が多く揃っており、選択するときの注意点などが聞けたのも有益でした。この回では更に、古い寮に当たってしまった、病院に行かなければならなかった、など、日本留学で一見マイナスの経験をしたと語っていた学生が、実はその後その苦境を挽回し、留学を通して忍耐強く、大きく成長したことが垣間見えたのも頼もしかったです。
2月 活動日誌
2021年2月28日
GJOコーディネーター 久保 賢子
今年はコロナ対策による教室確保のため、1月から始まった試験は、2月上旬までずれ込みましたが、ゆとりを持った理想的な時間の組み方となったように見受けられました。学生からしてみれば、長く続く冬のように、延々と続くテストマラソンだったかもしれません。結果が良かった学生も悪かった学生も、学習内容を振り返る充実した期間となったことと思います。晴れて試験が終わり、2月中旬にはそれぞれが授業スケジュールを前もって確認及び調整をし、準備万端で後期の授業が始まりました。教室もコロナウイルス感染症の第三波の影響を考慮して、距離を確保するだけでなく教室の設備も念頭に再び検討され、使用許可席が見直されました。その結果、若干収容人数が減った教室もありました。
第三波はピークを過ぎましたが、そんな中、カスティーヤイレオン州 (autonomous community of Castile and León) 政府が独自に設定した20時以降の夜間外出禁止という規制が違反だという見解が示されました。ちょうど試験期間が終了したことと週末直前というタイミングでの発表に、早速20時から22時までの貴重な2時間を楽しもうと、街全体で人の行き交いが見られました。特に若者は今まで控えていたのだなと思わせる勢いでした。バルやレストランは相変わらず屋内での飲食は禁止なので、今まで屋内だけだったお店も、テラス席を始め、テイクアウトと合わせて、生き残りにかけています。(写真1、2) 大学キャンパスの周りでも特に休憩時間や授業後、店内でのカフェができない今、テイクアウトカフェを手にみんな居場所を求めています。天気が良い日には文献学部前の階段や広場での集いも以前のように戻ってきました。(写真3)
後期授業開始と同時に、外国人留学生を見かけることも多くなりました。ドイツ、イギリス、フランス…。アジア系も増えたので、もしや日本からも留学に来ているかと思い、再び国際課に問い合わせてしまいましたが、日本からはどの学部にも来ていませんでした。ところでサラマンカ大学には、留学生用のスペイン語講座というものがなく、日本からの留学生は、文献学部をはじめ、地理歴史学部、社会科学部、経済学部、法学部、美術学部などに籍を置いているようです。また、学部間で自由に取れる科目もあるので、幅広い選択肢があり、履修計画を立てるのは楽しい反面大変です。
今月は留学決定者向けに、留学先との手続きに関する説明会が開かれました。日本でも日本語コースだけではなく、学部での共通科目を選択できる学生は履修したい科目がたくさんあって困るようですが、楽しい悩みで羨ましいです。
サラマンカではアーモンドの花が開花しましたが、もうすぐ出番となる桜の花もとなりでつぼみを見せ、先の夢を見させてくれています。(写真4、5)
1月 活動日誌
2021年1月31日
GJOコーディネーター 久保 賢子
クリスマス休暇が終わり、大学再開は11日で、一週間の前期最後の授業がありましたが、ちょうどその直前にスペインの多くの地域が「フィロメナ (Filomena)」と名のついた大寒波に覆われ、雪の影響で、または交通の便のキャンセルなどにより、サラマンカに戻って来られなくなった学生が多くいました。スペインの首都マドリッドでは、20センチの雪が積もるほど (写真1)。サラマンカでも16年ぶり、もしくは、46年ぶりの大雪となったそうで、あまり雪に慣れていないため多くの都市では、雪かきや凍結防止の塩(塩化ナトリウム sodium chloride)も追いついていませんでした。石畳などの通りは凍り付いて行きかう人皆が、ひどい下りの山道かのように足元に注意して歩いていました (写真2, 3)。
その後、前期の試験が始まりましたが、コロナ対策のため、ゆとりを持った時間配分での教室確保で、試験期間は3週間続きます。それでもコロナ関連の何らかの症状のある学生、ルームメイトがPCR検査の結果待ちなどで、一度で試験が終わらず、それぞれの対応を余儀なくされました。また、ヨーロッパからの留学生はクリスマス休暇中一旦実家に戻り、休暇後、出国できなくなったケースもあり、少し心配は続きます。
やはり、休暇中の制限緩和に伴い、コロナ第三波の到来は予見できたことですが、休暇明け一週間でカスティーヤイレオン州 (autonomous community of Castile and León) 政府は、再びレストランなどの閉鎖、20時以降の夜間外出禁止を適用しました。スペインでは、それぞれの州が独自に制限を設定するようにとしていますが、20時という時間の繰り上げには多くの人が驚いただけでなく、スペイン政府の設定する外出制限の22時から6時までの目安から違反していると反対意見も出ました。しかし、州政府は断固として姿勢を崩さず、この規則は警戒事態終了予定の5月9日まで当面続くようです。大学の授業は夜9時までですが、大学証や、順ずる証明書を携行することを義務付けたうえで、公教育は今まで通り続行されます。また、食料品や薬品類の購入のためなら20時以降でも許可されるなど、今まで外食や夜出歩く生活をしていなかった人にとってはあまり変わりなく生活ができています。
ただ、春学期から日本に留学へ行けるようスタンバイしている学生も、ここまでくると、諦めの心境に陥ってしまいそうです。もし今回留学を逃したとしても、サラマンカ大学は幸い日本の協定大学が多く揃っているので、希望を捨てず、来年度、再来年度と目標を持ってもらいたいです。
11月頃から始めたオンライン交流会ですが、試験期間中にもかかわらず、熱心な参加があり、日本の大学の春休み中も個人的に連絡を取り合うということにつながりました。留学で学べる事は交流会で得ること以上に多くのものがありますが、今オンラインで日本とつながり、広がった可能性を上手く利用し、いろんな要素を意識して駆使していく時なのでしょう。
12月 活動日誌
2020年12月31日
GJOコーディネーター 久保 賢子
12月はスペイン国の祝日が立て続けに2日もあり、たいてい週末と重なり即座に連休へと早変わりしてしまいます。23日からクリスマス休暇を迎えるとなると、残された授業日数はわずか。学生がソワソワするのも無理はありません。しかし一方で、教員には年内に科目のプログラム内容を終了させ、1月にはその評価を出すべく試験をしなければならないという使命があるのです。出席率が下がる中、授業を維持していくのは毎年ため息が出ますが、出席した人にはその分より丁寧な指導、または、有意義な内容だと感じられるような授業にしようと頑張りたくなる時期でもあります。
遠方から来た人は、帰省準備に入り、交通機関を確保するため、または、特に飛行機などを利用しなければならない人は高値を避けるため、授業を欠席するというケースは恒例です。今年はコロナウイルスの影響がここでも見受けられ、公共交通機関を避けるため、親が仕事の休暇を取って自家用車で迎えに来る、という手段も耳にしました。更に帰省先へコロナ感染リスクを避けるため、帰省前10日間はなるべく人とのコンタクトを最小限に留めるよう、国を挙げてスローガンが掲げられましたし、国営鉄道RENFEでは、高齢の家族には敢えて会いに行かないという宣伝文句を流していました。その反面、移動制限が解除され、「緊急事態」も一旦休止といった状況に、町ではやはりあまり会うことのない友達と出かけたりする様子が多く見られました(写真1)。
そんな中、来年度日本の大学への留学枠に選出された学生向けに、留学準備説明会がクリスマス休暇前に行われました。(写真2) 休暇中に是非パスポート申請ができるように、また、日本語コ-ス以外の科目が取れる留学先であれば、どんな科目を取りたいか吟味できる期間になるように休み明けではなく休み前に行われています。まだ新型ウイルスの感染症が収まらない中準備を進めていくのは大きな不安が伴いますが、活発な質疑応答で、日本の大学が留学を受け入れる限りこのチャンスを逃さないと思っている人がほとんどだと感じました。参加者の中には心理学部の学生も。言語を専攻している人も負けていられません。
ちなみに、本学文献学部には、外国人向けのスペイン語コースではなく、スペイン語言語学、スペイン語圏の文学、スペイン語教育などの多彩な科目が揃っていますので、日本から留学に来た人も、まずはどんな科目を取るかを決めるのには、吟味熟考するところでしょう。
オンラインでのスペイン語‐日本語の交流会も、祝日返上で一か月無事続きました。文法を少しくらい間違えても、単語が出てこなくても、会話のリズムを崩さないで、相手の意図しようとしていることをとにかくいろんな方法で掴んでいきます。このような交流を見ていて、やはり言葉や話の内容からだけではなく、考え方、話し方などからも、参加者は、文化を学びとっているのだなと、しみじみ感じました。
11月 活動日誌
2020年11月30日
GJOコーディネーター 久保 賢子
授業が始まってからのスペインの祝日といえば、10月12日の「イスパニアの日」(National Day of Spain) と、11月1日の「諸聖人の日」(All Saints’ Day) がありましたが、今年は移動制限もあり、多くの学生にとっては、実家に帰省するというより、あまり動きのない、自宅で課題をこなす連休といった感じだったのではないでしょうか。
10月終わりには大学の学部長および学科長選挙があり、再選挙には持ち越さず、11月に入り確定され、メンバーが一新されました。実はこの選挙は、3月から選挙期間に入る予定だったもので、コロナを挟み、延々と先延ばしになっていた選挙です。文献学部でも個性の違う3人の立候補者が出馬し、それぞれのプログラムが吟味され、オンラインによる演説会など、活発でした。ようやく新しい学部長および学科長が選出され、学部組織が統制された感じがしました。
大学の授業はといえば、前期中盤、秋真っただ中です。うまく波に乗って順調な人、調子が出てきた人、悪戦苦闘している人、いろいろですが、年明けには試験が待っています。その試験方式はどうなるか、など、徐々に不安な声が聞かれるようになりましたが、今のところ、その都度対応するように指示されています。
また、早くて後期に向けて日本留学を準備する学生がいますが、来年度の日本留学選出も行われ、今度はその学生に向けた留学準備説明会が12月のクリスマス休暇前に予定されています。
去年まで行っていた留学生との交流会は、今年はできていませんでしたが、オンラインでスペイン語‐日本語の交流会を始めることができました。インターネットを通じてでも日本人学生と対面する新鮮さは味わえ、参加した学生は日本への思いを募らせている様子です。
コロナ関係で授業にオンラインで参加していた学生たちも大分復帰し、もう学内でのコロナはほぼ制御できているのではないかと感じますが、数字を見ると、11月27日現在、全学生23485名中、41名、文献学部では1名の陽性者との報告になっています。日本の「3密」ならず、こちらでは、「6M」として、クリスマスに向けたキャンペーンがはじまりました。ちなみに、その「M」とは、マスク、手洗い、距離、換気、接触減、自宅待機、となっています。
いつもは11月中にクリスマスのイルミネーションが準備され、11月最後の週末に点灯されますが、今年は前倒ししたようで、10月から徐々に準備にかかり、11月中旬には街の至る所で華やかなライトアップが楽しめています。少しでも街の雰囲気を高めていこうという役所の意図でしょう。クリスマスの風物詩とも言える宝くじの販売も始まりました。スペインではクリスマスの宝くじは大きな意味があり、大切な友人と番号を共有し、夢や楽しみを分かち合うというのが伝統です。毎年この宝くじのCMが流れるのですが、今年のCMは外出禁止期間中に培ったご近所の人たちとの仲間意識を一層高め、宝くじも共に分かち合い、助け合おうと購入を促進しています。なんと、サラマンカ大学でもくじ番号があり、各キャンパスで宝くじが販売されています。みんなコロナに打ち勝てという意味を込めて、実は私も今年初めて買いました!文献学部の地下にあるカフェテリアの番号です!あたるでしょうか???
10月 活動日誌
2020年10月31日
GJOコーディネーター 久保 賢子
3月から5月までオンライン授業となり、その後もオンライン試験にオンライン評価、教務も事務も会議やミ-ティングはもちろん、学生指導まで、何もかもがオンラインが当然となった今日、サラマンカ大学は授業においては、できるだけ対面で行うという趣旨を全うし、10月1日から対面授業を開始しました。校舎内では矢印に従って歩き、人の流れを一方通行にするなどの対策はもちろん、教室内(写真1)においては、間隔を空けた席に番号が振られており常に同じ番号の席に座ることにしたり、使用後は机も椅子も各自消毒するなど、徹底されており、窓もドアも全開で半年以上ぶりに対面授業が叶いました。始めはよかったものの、すぐさま冬になったらどうするのかと、不安な声も聞かれました(写真2)。
一方では、恒例の新入生歓迎会などが一部のグループで行われたようで、身元が分かった学生には2週間の大学追放措置がとられましたが、罰金などが発生しても規則を破ってしまう光景を前に、「赤信号、みんなで渡れば怖くない」を思い出さずにはいられませんでした。9月から10月19日の時点での集計によると、サラマンカ大学内の新型コロナの感染者は238人に上り(教職員の感染者は6人以下)、他大学に比べるとまだ少なく、また、全て大学とは関係ない活動や場所での感染だと報告されています。日本では考えられない数字だと思いますが、毎日コロナ関連のニュ-スばかりで、このような数字に鈍感になってきているのも確かです。夏の休暇が終わってからの拡大が急激で、サラマンカでは10月中旬から再び移動規制がかかり、下旬には22時以降夜間外出禁止令が出ています。こういった制限は、州によって違う上、逐一変わるため、十分注意しなければなりません。
そんな10月でしたが、10月2日には新入生のオリエンテ―ションが行われました。4年生の先輩からは、コロナ渦にありながらも、学生生活におけるいろいろなアクティビティが紹介されました。東アジア研究学士過程(Bachelor’s Degree in East Asian Studies)には中国語、韓国語、日本語と、3専攻ありますが、このように全員が揃うのはなかなかありません(写真3)。
10月5日、サラマンカ大学文献学部に来た留学生向けに、説明会が開かれました。アジアからの留学生はいませんが、ヨ-ロッパからの留学はあり、また、後期から留学予定の学生も、ホ-ム大学からオンラインで参加し、今後に備えていました(写真4)。
後日、来年度日本留学を考えている人を対象にGJOの主催としてオンライン留学説明会を開催し、多くの人が出席してくれました。国際課のスタッフ、また、日本からは東海大学の先生の参加があり、申請手続きや留学先に関する質問など、一気に解決できる有意義な時間となりました。
また、初の試みとして、留学生体験報告会を行うことができました。サラマンカ大学は、日本に20校以上の協定校がありますから、日本語留学プログラムも各大学の特徴が反映されており、様々な学生の需要に対応できていると感じます。出席してくれた学生からは、パンデミックに遭ったにも関わらず、留学体験が人生にプラスになったという声が聴けました。また、体験談としての報告書をまとめ、大学のプラットフォームで共有させていただきました。コロナウイルスは世界を自由に飛び回っていますが、土地ごとに対処方法が違うように、「留学」と一言で言っても、留学先の選定から始まり、留学中もその土地の性格を知り、ある事態をいかに判断するか、または、どのように受け止めるかが、その人の経験知を変えていくのだなと感じました。
9月 活動日誌
2020年9月30日
GJOコーディネーター 久保 賢子
7月、8月の2か月という暑く長い夏休みが終わりました。日本では冷房が当たり前に効いていますが、こちらスペインでは、デパ-トやス-パ-、少し大きめの店か新しい店くらいでしょうか。冷房なしでは過ごせない街中に住んでいない限り、こちらでの暑さしのぎは、日中シャッタ-やヒサシを下ろしてもっぱら日差しをよける方法です。また、プ-ルや海で一日中過ごすという方法など、なんとも時間の流れがゆったりしています。暑さのため、営業も半日とするなどして、夏期営業時間が導入されています。世界各地で毎日ニュ-スの大枠を占めているコロナウイルスのため、夏休みがいくら長くても、第二の住居、別荘への移動、近場での観光にとどまっていたように思います。近場といってもサラマンカはポルトガルとの国境まで1時間半ですから、サラマンカの人にとってポルトガルはお手軽な旅先として人気が高く、コロナ渦中もまた然りでした。逆に、サラマンカの街中でも観光客を見かけましたが、以前とは比にならないのは言うまでもありません。
9月1日からは大学も夏期休暇を終え、始動しましたが、今年は授業が10月1日からと、例年よりも3週間遅いスタ-トになりました。構内の様子はというと、門は全開してあり(写真1)、観光客の立ち入りを禁止する張り紙が目につきます。消毒ジェルや体温計の設置から、右側通行になるようありとあらゆるところに矢印で示してあるだけでなく(写真2,3)、ロ―プで横切れないようにするなどしてありました。教室では、透明の仕切りの設置、一つ間隔を空けて座る、机には番号を振り、座る席を指定する、といったスぺ-スの問題に対する取り組みに加え、教室の割り当ても一からやり直し、利用スぺ-スの拡大においては、一部大学の図書館までも教室として整備するなどの他、オンラインでの授業に対応するため、全教室にビデオカメラが備え付けられました。9月末には設置が終了し、9月30日、教員向けのカメラ、マイクなどの使い方の説明会も開かれました。また、オンライン授業のためのWebinarも開催されるなど、怒涛の毎日でした。
大学の始業式はオンライン放映され、学部会議、学科会議、学生指導なども基本的にはオンラインで行われています。授業はできるだけ対面で行っていきたいという大学の趣旨が示される一方、夏の休暇中にどんどんコロナウイルスに関する統計が芳しくないなどという状況で、教員も学生も本当に対面授業が開始できるのか、心配が募り続けた一か月でした。
6月 活動日誌
2020年6月30日
GJOコーディネーター 久保 賢子
今年は6月なのに肌寒い日がかなり続きましたが、カラッカラに乾燥した夏が急に到来し、ちょうど春先から自宅にこもりっきりの生活でしたから、日差しがいつもより更に厳しく感じられます。
スペインでは5月下旬からほぼ全土で外出規制の段階的な緩和がリズムよく始まっていましたが、サラマンカが属するカスティ-リャ?イ?レオン州では5段階中、フェーズ2で足踏みをしていました。 6月21日0時をもって警戒事態宣言が解除されましたが、なんとフェーズ移行を全て終了しないまま、解除を迎えました。そして翌22日より、nueva normalidad、つまり「新たな日常」と呼ばれる日々を送ることとなりましたが、突然やってきたこの解放に戸惑いつつも少しずつ日常を取り戻そうとする人々の生活の営みがうかがえました。
警戒事態宣言解除後、大学では制限的ですが、図書館が開館し、利用できるようになりました。図書の貸し出しおよび返却のサービスと閲覧室の座席の半分が利用できます。本を手に取り閲覧した場合は72時間書架から外さなければなりません。他の建物に入る場合は、職員も建物使用許可をとらなければならず、基本的には全てテレワ-クが推奨および継続され、学生指導や会議など、オンラインが当然となってしまいました。大学側としては来年度の授業を基本は対面授業としていますが、状況に応じて遠隔授業となることも思慮に入れ、対策を練っています。
5月後半に始まった後期科目の本試験が終了したかと思うと、立て続けに前期科目の追試、続いて後期科目の追試が行われました。大学の対策として、授業開始当初公表されていた評価方法と異なり、なるべく継続評価に重点を置いたため、学生側は多くの課題をこなさなければならず、当然教員側もその添削?評価に追われた日々でした。更に4年生は卒業論文の提出を控え、今も課程修了のために暑い中最終校正に奮闘中です。
また、日本へ留学予定の人は来年に挑戦しなおすことにしたり、春学期のみと予定を組みなおしたり、まだぎりぎりまで様子を見る、という人もいます。本来のル-ルとしては、一度決定された留学を辞退すると次の申請でマイナス要素となってしまうのですが、今回は辞退してもこのル-ルは適用されないことになりました。ただ、次回の留学の確約はないですし、日本に留学中の学生とも連絡を取り、様々な点を十分考慮の上、慎重な判断が必要だと思います。
さて、早速私もサラマンカ中心地へ出向きましたが、初めはかなりの人出にびっくりしたものの、マヨ-ル広場から文献学部があるカテドラル前、アナヤ広場に続くマヨ-ル通りは、いつもは観光客で賑わっているはずが、閑散としていました(写真1)。連なるお土産屋さんや飲食店は開店していましたが、早く観光客が戻ってくるようにとの願いを込め、励まし合いながら営業に踏み切っているのだろうことがわかりました。混雑しているのを楽しんでいた感じだったバルなど、以前のようにはいきませんが、一定距離に加えマスクを着用しながらも、やっと叶ったバルでの歓談、一服を味わっている様子はちらほらみえました。また、テラス席でも使用ごとに椅子の手すりまで入念に消毒するウェイタ-さんの姿が(写真2)。服の店では試着後購入しないものは48時間販売棚から下ろし、マヨ-ル広場では通行の標識があり(写真3)、行き交う人みんなマスクを着用、知り合いに会っても挨拶のチ-クキスが消え、立ち話中も距離をとるなど、本当にスペインとは思えない風景で、なるほど、これが「新たな日常」で、今後の日常として定着していくのかと思うと、つくづく長くわたる慣習の転換期にいることを実感せずにいられませんでした。
5月 活動日誌
2020年5月31日
GJOコーディネーター 久保 賢子
3月13日から突然始まったオンラインでの授業ですが、サラマンカ大学では5月中旬に無事終了しました。学部によっては少し早く終わったところもあります。というのも、学部ごとにカレンダ-が違うので、在籍している学部以外での授業がある人は教師にとっても学生にとっても、とてもややこしい状況になってきます。日本に留学中の学生によると、日本ではオンライン化に慎重で、e-learningの導入を十分に整えてから、準備万端で開始しているとの印象を受けました。
授業の次は、試験。結果的にはやはりこれもオンラインとなりました。教師側はオンラインでいかに学生個々の能力を測るか、オンライン授業が始まった当初から、悩みのたねでした。テスト形式のオンラインでの試験は割合を少なくし、なるべく継続評価にする、という方法が広く取られました。本来ボロ-ニャ協定が目指す評価の姿が浮き彫りになった形ですが、今まで実現されていなかったため、継続評価に対応するには教師一人一人がかなりの時間を費やさなければならなかったと思います。また、オンラインで試験をしたことがない教員がほとんどで、対策のための様々なコ-スも急遽開かれました。
5月18日、テストは一斉に開始され、10日間以上にわたる試験期間も一旦終了しました。今は続々と評価も出ていますが、いつもより高得点だったのではないか、という教員側の声も聞かれました。いずれにせよ、自宅に閉じこもったこの2か月半、継続的に学習した人にはいい評価が出た、ということでしょうか。
試験が終わった人から順に、今度は来年度の留学の準備に取り掛かかりはじめているようで、質問が立て続けです。留学が中止になるかもしれない、というのは念頭に、状況が落ち着けば予定通りですから、準備を整えておかなければなりません。
生活面では、取り残されていたサラマンカですが、フェーズ0、フェ-ズ0,5を超え、5月25日にようやく規制緩和段階フェ-ズ1になりました。大学への出入りはやむを得ない場合のみに限られていますが、外出制限が緩和されたことは新しい生活への大きな一歩だったと思います。今まで冬眠していた春が突然芽吹いたように、人出も多くなりました。外出時は、マスク着用が義務づけられたことは新しいことです。マスクは大きな感染病を持っている人という印象がつきまとい、差別のもととなるため、コロナウイルスの拡大が話題となっていた3月上旬でさえも、マスクをしている人はいませんでした。3か月たった今、慣れないながらも、大人も子供もルールを守って、マスクを着用し、今までに見られなかったスペインの風景です。
4月 活動日誌
2020年4月30日
GJOコーディネーター 久保 賢子
「新型コロナウイルス」による緊急事態宣言が発令されてから、延長、再延長、再々延長と、とめどなく長引く厳しい外出制限がかかった日々をひたすら送り続けた4月。初めの2週間は、様々なオンライン対策が講じられ、状況適応に戸惑いはあったものの、勉強に集中できた人もいたのではないでしょうか。
4月に入るとすぐ、サラマンカ大学では3日から13日までの11日間、聖週間(Holy Week)による大型連休から始まりました。更に、4月23日は州の祝日(図1)、続いて24日は文献学部の守護聖人(Patron saint) の日で休講。外出制限中に加えてこのような休みがあると、リズムが崩れるという意味であまりよくありませんが、この時期は学期の締めくくりが目前で、大量の課題提出があるため、学生にとってはそれをこなしたりするにはもってこいだったのではないでしょうか。一方、外出制限がかかった環境は気分転換をうまくするのはなかなか難しいですから、今年の聖週間の休暇は違った意味で疲れたのではないかと思います。観光、美術館巡り、コンサ-ト鑑賞、サ-カスに至るまでバ-チャルやオンラインで楽しめ、疲れた脳を休めようとスポ-ツや瞑想などまでオンラインによるクラス参加と、現代の私たちの生活スタイルが、何をするにもコンピュ-タ-やインタ-ネット接続なしでやっていくことは考えられず、頼り切ってしまっていると気づくと同時に、どれだけ技術を利用するか、バランスを見極めることが大事だとつくづく思います。
スペインでは、幽閉生活当初、特に病院関係者への感謝の意を表し、どこからか誰かが拍手をしました。それが広がり、一人ではなく、大きな拍手へと繋がり、町中にその感動的な音が響くのですが、それは今では、スペイン全土での習慣となり、夜20時になると、みんなバルコニ-に出て、拍手をし続けます。歌や楽器演奏のプレゼントになるところもあるようで、またそれが一転、ユ-モアあふれる住宅街では特技披露やダンス大会、ディスコと化すところもあるようです。スペイン人のユ-モアは尽きず、コミュニティ全体がそれぞれのバルコニ-に出てビンゴ大会を繰り広げたり、バルコニ-越しにゲ-ムをするなど、アイデア満載です。また、そのような雰囲気が、近所同士で助け合うという行動に出る背景にあるのだと思います。
また、この幽閉生活期間中、店頭では常に売り切れ続きものがあります。アルコ-ルなどの消毒関係、ペ-パ-類はどこでも起こっているようですが、スペインでは不思議なことに、べ-キングパウダ-の売り切れがずっと続いています。どうやら、みんなお家でお菓子作り、パン作りを楽しんでいるようです。今までできなかったことに取り組む姿勢がこんなところからも窺えました。
大学閉鎖も1か月半になります。オンラインでの試験や最終評価に向け調整され、どうやら今学年はオンラインのまま終了となってしまいそうですが、みな最後まで気を引き締めて頑張りましょう!(図2)