2023年度 活動日誌

3月 活動日誌

2024年3月31日
GJOコーディネーター 久保 賢子

今月は、短期語学セミナーで多数の大学から日本人学生がサラマンカを訪れ、本学の日本語学習者とたくさん交流が図れました。

また、日西文化センターで第二週目に日本週間が行われました。第三週目には文献学部でも日本週間を開催しましたが、文献学部の催しは学生が考えを出し合ったもので、学生が主に係を担当して進行しました。それぞれ内容もカラーも別でしたが、どちらも日本人留学生を誘って参加する様子なども見受けられ、充実した二週間でした。

そのほかにも、卒業後の進路についてハイブリッドで2セッション行いました。一つは進学のためのセッションで、日本政府の奨学金についての説明に加え、日本で修士課程を履修し、博士課程に向けて準備を進めている卒業生の話を聞きました。もう一つは就職のためのセッションで、ワーキングホリデーを利用して日本へ渡航した卒業生、日本のICEXでの研修生、個人で日本へ渡り、就職にたどり着いた卒業生、スペイン国内でアジアの企業との仲介役を果たす卒業生に参加してもらい、貴重な話が聞けました。いろんなところで活躍している様子を知ることができ、現役生は目標がはっきりしてきたかもしれません。教員にとっては、卒業後大いに活躍できる人材の育成に励もうと改めて感じるセッションでした。

3月最終週は聖週間に入り、大学は閉鎖していますが、今年度終盤を迎え、卒業論文、レポート、課題などに時間を充てると言っていた学生も多く、短い休み中、気分転換もしながら目標に向けて進んでほしいと思います。

2月 活動日誌

2024年2月29日
GJOコーディネーター 久保 賢子

今年度は試験明けに一週間の試験見直し期間、もしくは後期開始に向けた調整期間が設けられ、学生も教員もかなり消化して後期の準備を整え、授業が開始できました。言語交流会も、後期のみ留学の学生などの新しい顔ぶれがあり、週に一回ですが有意義に続けられたらと思います (写真1)。

しかし授業に加え、イベントも一気に芽を吹き、なかなか忙しない日々だったと思います。大学内でも学会や講演会、ワークショップが開催されますし、大学が保持するイベントホールなどでは、映画や演劇の上映会、音楽コンサート、詩の朗読会など、実に様々なイベントがあります。更に、サラマンカは文化行事が目白押しで、映画館、コンサートホール、スポーツ施設など、観光を含め力を入れている街だと思います。日本では考えられませんが、こちらでは入場無料が多く、入場料があったとしても、日本に比べるとかなりお手軽に楽しめます。

イベントには日本関連のものも多く、今月は相撲に関する講演会、日本の映画やドキュメンタリーの上映などがありました。

私は今月、カテドラルのオルガンを見に行くツアーに参加したり、作曲家バッハの学会の一部を聞きに行ったりできました。ツアーでは、ヨーロッパ最古、つまり世界最古とされるオルガン (写真2) を見たり、狭い階段を登ってオルガンの傍まで行ったり、専門的な説明や演奏も聴くことができました。何台もオルガンがあったことをこのツアーで知りましたが、新カテドラルにあるルネッサンス様式のオルガンは、日本人が修復を手掛け、日本とサラマンカの交流のきっかけともなっています (写真3,4)。ちなみに、カテドラルには、サラマンカ在住の人は無料で入ることができます。

学会の方は、サラマンカの旧カテドラル内の一室で開催され、それだけでも魅力的な学会でした (写真5)。実は、サラマンカ大学は歴史的に音楽が栄えていました。現在もバロック音楽などは名声を維持しています。

スペイン語学を通して、文学や音楽においても由緒あるサラマンカの色々な魅力を、是非味わってみてください。

(写真1:言語交流会の様子)
(写真2:旧カテドラルの一室にあるヨーロッパ最古と言われるオルガン。仕組みは修復できず、外観のみ保存されている)
(写真左3:新カテドラル内聖歌隊席)
(写真右4:日本人が修復したオルガン)
(写真5:学会「バッハの後のバッハ」における、大学合唱団の指揮者も務める数学者による研究発表)

1月 活動日誌

2024年1月31日
GJOコーディネーター 久保 賢子

(写真1:ドライフルーツの中で一番人気のオレンジだけを飾ったロスコン。手作りする家庭も多い。)

冬休み明けは前期科目の試験が待っています。そのため、新年が明けると、早々大学生たちは試験勉強モードに切り替えていくようです。しかし、1月6日の公現節 (Epiphany) の日のお祝いは欠かせない行事になっていて、再び家族で集まり食事をすることが慣例ですから又特別の一日になります。この日デザートやおやつとして食べられるのがロスコン roscón (king cake) と呼ばれるドーナツ型のパン菓子です (写真1)。ふわふわの甘い生地のパンだけでもおいしいですが、中に生クリームやチョコクリームを入れたバージョンもあります。パンの上には、たいてい砂糖漬けのフルーツやアーモンドスライス、パールシュガーが飾られていますが、実はフルーツの砂糖漬けは、人により好き嫌いが激しく、わざわざ避けて食べる人がかなりいます。それでも彩のためか、このフルーツが上にのっていなければロスコンではないからか、どこで買っても必ずついてきます。オレンジにメロン、すいかやサクランボ、と、昔は大変貴重なものだったのでしょうが、ほとんどの人が口をそろえて苦手だと言います。食べてはいけない飾りのようにお皿に取り残されていく果物たち。「私は好きだけど」と言うと、「年配の人は好きな傾向にある」んだとか。このパンの中には、キリスト誕生を祝ってこの日にやってくると伝えられている三博士を模った小さな人形や、ソラマメが仕掛けられているものもあります。ソラマメは翌年のロスコンのお代を払う番の印ですが、子供たちにとっては、切り分ける時にも食べる時にも、何らかの当たりが出る楽しみとなっています。

今月一か月の天気は全国的に5月の気温をマークするなどいい天気が続きましたが、クリスマス休暇明けの1月10日、スペイン政府は病院や医療機関でのマスク着用を義務としました。振り返れば、11月ころから周囲で風邪が大流行していましたが、かなり長期にわたって風邪をこじらせている人もいました。休暇期間中にピークを迎えたのでしょう。久しぶりに皆マスクをし始めましたが、2週間もしないうちに解除され、また平常に戻ってしまいました。「戻ってしまった」というのは、マスク携行はもちろん手洗いの励行などが維持されない、ということです。これは文化的に日本人にとっては受け入れがたいことかと思います。

3週間の試験期間を終えた学生たちは後期授業開始まで帰省するなどしたため、学生の街サラマンカは、どこか閑散とした一方、日本人留学生と多々すれ違い、春休みを利用したスペイン語短期セミナーへの意気込みを感じました。短期だからこそ集中的かつ計画的な学習があると思います。アンテナを張り巡らせ、スペインをまるごと知ることができますように!

12月 活動日誌

2023年12月31日
GJOコーディネーター 久保 賢子

今年はスペインの全国的な祝日である12月6日の憲法記念日と8日の無原罪懐胎の日(Inmaculada Concepción / Immaculate Conception)が週の半ばにあたりました。その2週間後には冬休みに入りますが、この休みの日、一足先に、クリスマスに向けての買い物や仕事の同僚あるいは友人同士での食事会などが行われるのが恒例です。中日は休みではありませんでしたが、スペインでは休みに挟まれた平日を休みにすることをプエンテ puente (橋)といい、連休にしてしまう人がほとんどでした。大学キャンパスも閑散としていましたが、文献学部があるアナヤ広場(Plaza Anaya)は、カテドラルや大学のファサードを見に来る観光客でいっぱいでした。学部の建物の中は大学関係者以外立ち入りはできないようになっていますが、やはり魅力ある建物を見たい気持ちは誰も同じで、観光客とよくすれ違います。サラマンカでの訪れるべき場所となっていることを象徴するように、今年は移動式のダ?ヴィンチ特別展、移動式メリーゴーランドが設置され、規模が大きくなったクリスマスマーケットと共に、アナヤ広場を埋め尽くしました。(写真1,2,3)

スペインではクリスマスは一大イベント。イブに間に合うように帰省し、家族で過ごすのが慣わしです。そのため、大学の街であるサラマンカでは、毎年クリスマスの一週間前の木曜日に「大学生のための『大晦日』」が行われます。今年とお別れをする、ということですが、大学生もそうでない人も、マヨール広場(Plaza Mayor)で野外音楽を楽しみ、12回つかれる鐘と共に12個のグミを食べる、というものです。かれこれ20年くらい続いているそうで、最近では、他の町も真似をするようになり、以前ほど大型バスで人が押し寄せるということはなくなったように思います。今年は14日。夜20時過ぎころ帰宅する筆者とすれ違うのはキラキラ輝くドレスを着た若者たち。首周りの広いものや丈の短いスカートをはいています。寒さなんてへっちゃら!と言わんばかりはしゃいでいます。日本語の学生も、日本人留学生もマヨール広場に集まって楽しんでいるかな、明日の授業は学生が少ないか夜更かしのにおいが漂うか…、と思いながら歩いていると、後ろから「せんせい!」と落ち着いた声。こんな時間に誰? と振り返ると、日本語の学生でした。今からマヨール広場に行くのか尋ねたところ、「私はパーティーが嫌いなんです」と満面の笑みで一言。手には暖かそうな晩御飯が。なるほど、それぞれの過ごし方、楽しみ方がありますね。

言語交流会は22日で前期分を一旦終了しました。22日は大学の最終日。クリスマス前の金曜日の午後にも集まる人がいるほど、今年は大勢での交流となり、それぞれが良い収穫を得たようです。来年は2月から始めます。どうぞよろしくお願いします。


(写真1: カテドラルの前に置かれたライトは、キリスト降誕を知らせるベツレヘムの星。)
(写真2: アナヤ広場に広がるクリスマスマーケット)
(写真3: 翻訳学部から眺める夜のカテドラル。)

11月 活動日誌

2023年11月30日
GJOコーディネーター 久保 賢子

10 月31 日のハロウィンの翌日は「諸聖人の日 Todos los S antosantos(All Saints DayDay)」という国の祝日があり、それが終わるとあっという間にクリスマスの準備に入りますが、町の至る所でライトアップ用の電灯はもちろん、クリスマスのモチーフが飾られ、準備が進んでいきます。大学近辺にあるキリスト教書籍?聖品を扱う店のショーウィンドウではいろんなキリスト降誕の置物が売られていましたが、実に様々な種類があり、サラマンカの民族衣装を着せた像も発見しました(写真1)。

街中がソワソワした雰囲気になる中、11 月は大学では休みがない踏ん張りどころです。学内では、今年も「言語の日」が行われ、いろんな言語のスタンドが出ましたが、日本語は学生が主体となって実施しているせいか、特に盛況で、一日中人の波が絶えませんでした(写真2)。

また、サラマンカ大学は今年、「日本の年」を開催しており、講演会だけでなく、いろんなイベントがありましたが、それにちなんで、日本スペイン財団が毎年開いているシンポジウムが今月サラマンカで行われました(写真3)。専門家のみで一般には非公開ですが、100 人近くの知識交流となりました。科学や企業に焦点をおいているこの財団。日本語教育に携わる者として、いかに社会で貢献できる人材を育てていくか、目が覚めた思いでした。

一方で、公立図書館の子どもから中高生までのセクションの一角に、「日本」と題したコーナーが設置されているのが目に留まりました。相撲や盆栽などの伝統的なものから、アニメや映画に関するポピュラーなものまで、カラフルに日本文化が紹介されていました(写真4)。サラマンカは小さな町で、内陸の閉鎖的な性格がある町ですが、特に若者に広がっている今のこの日本ブームの勢いに乗って、日本への理解を促進していくべきだと感じました。


(写真1:大学近辺にあるキリスト教書籍?聖品を扱う店のショーウィンドウ。サラマンカの民族衣装を着せたキリスト降誕の置物)
(写真2:学生が持ち寄った書籍やパンフレットが並び、折り紙やけん玉をはじめとする遊びもその場で体験できる。)
(写真3:終日開催されたシンポジウム最後のセッション)
(写真4:公立図書館の子どもから中高生までのセクションの一角)
(写真1:貝の家に面するサラマンカ教皇立大学)

10月 活動日誌

2023年10月31日
GJOコーディネーター 久保 賢子

夏日和がずっと続いていた10月も、命名された低気圧の連続到来で一気に冬の風の冷たさになりました。在スペイン大使館から注意喚起のメール連絡が来るほどの悪天候でしたが、雨風の中でも観光客の足は途絶えることなく、レインコート姿の団体がサラマンカの至る所で見受けられました。夜のツアーなどもあり、ライトアップされた昼間とは違った風景も楽しめます(写真1)。

大学でもイベントが盛りだくさんの月となりました。その中でも、鳥取県から倉吉絣伝統工芸士で無形文化財保持者の福井貞子先生御一行がサラマンカ大学までいらっしゃったことは、参加者の記憶に深く刻まれるだろうと思います。バルセロナ近郊にある紙博物館での展示会を終え、たくさんの展示品をサラマンカにまで持ってきてくださいました。絣に関する説明だけでなく、実際に糸を紡いだり、生地を織ったり、着付けしてもらったりするなど、ワークショップまでしていただきました(写真2, 3)。さらに交流目的での昼食会、歌の交換、学生による市内の案内と、日本語の学生にとって今までにない体験ではなかったでしょうか(写真4)。このイベントに関するアンケート回答からは、日本人のみなさんが丁寧に優しく接してくれたことに感激を受けている様子がよくわかりましたし、文化的にもこのようなイベントをもっとしてほしいとのリクエストが多く得られました。

ところで、市内散策中、文献学部、翻訳学部、地理歴史学部をはじめ、いろんな大学施設を通り過ぎるものですから、ついに「キャンパスはどこですか」という質問が出てきました。サラマンカ大学は総合大学で、学部がたくさんあり、それぞれの学部は、いろんなところにあり、特に歴史あるものは、カテドラル付近に固まっていますが、町と一体化している、と言っていいでしょう。その美しい景観に、「こんなところで勉強ができるなんて…」とみんな揃って呟きます。

そんな貴重な体験ができる留学生たち。今月から言語交流会が始まりましたが、対象を広げたため、50人近くの学生が集まることになりました(写真5)。こんなに大きな会になるとは想像もつかず、初めは対応しきれていませんでしたが、だんだんとやり方もつかめてきました。参加者からは時間が短すぎるといった声も。是非、交流会のあとでも引き続きカフェなどに誘ってみてはいかがでしょうか。

このサラマンカという町は、サラマンカ学派という学問も含め、古くから世界の注目を集めていたのだと、日々その歴史を実感します。スペイン語はもちろん、スペイン文学の研究のために留学や研究滞在をする人は数知れず、20世紀に入ると日本人もたくさん来ています。そしてこの町を拠点として、いろんな繋がりが広がり深まっていく、そのように感じました(写真6)。

写真2:ワークショップ中の学生の真剣なまなざし)
(写真3:どんなふうにするのか興味津々)
(写真4:市内の建物を日本語で説明する学生)
(写真5:初めての人と日本語-スペイン語で会話実践)
(写真6:思想家ルイス?デ?ゴンゴラも、サラマンカ大学の学生だった)
(写真7:10月31日、1755年のリスボン地震で、被害者が出なかったことに感謝する行事。カテドラルの一番高いところまで登る。現在は鐘楼塔で民謡を演奏。)

9月 活動日誌

2023年9月30日
GJOコーディネーター 久保 賢子

3月末、2023年度のカレンダーが大学評議会で決定されました。それによると、夏休み明け年度初めの開講日が、9月1日と、今までで一番早い日程になっていました。学部により授業の開始日は調整できる、とただし書きがあったものの、知らせがあった一時は、皆動揺を隠せませんでした。すぐに文献学部は例年通り9月3週目からの授業開始だという連絡が回り、落ち着きを取り戻しましたが、早くから授業を始める世界中の大学の動向に合わせていきたい意図もうかがえます。

スペインの多くの町では9月8日が祝日と定められているところが多く、サラマンカも、守護聖母ベガの祝日になっています。聖母ベガはスペイン継承戦争の時に、軍の襲撃からサラマンカを守ってくれたと言い伝えられていて、今でも「ベガ」という名前は、たくさんつけられている人気ある名前です。この祝日から10日間くらいは街中がお祭りムードで、仮設遊園地や有名なミュージシャンの音楽コンサート、通りでの曲芸をはじめとするいろんなイベントが行われます。まだまだ夏を名残惜しんだ、長い夏休みの延長線上にあるサラマンカ。大学の新しい方針と、文献学部、もしくはサラマンカ全体の古いしきたりとが、今後どのように適応していくのか、注目するところです。

というわけで、文献学部では、例年通り、新入生オリエンテーションや歓迎会(写真1)が12日にあり、授業が18日に開始し、大学のオフィシャルな開講式典は25日にありました(写真2)。更に今月は、ノーベル生理学?医学賞受賞者である山中伸弥氏が、サラマンカ大学による名誉博士号を取得し、その授与式が行われ、事の始まりと記念すべき行事で埋め尽くされた月となりました。

初めの1週間は、履修科目登録の調整期間ですが、正直に言うと、その一週間のうちに2~3回授業が行われてしまう科目もあるため、あまり迷うゆとりもありません。他学部でも履修をしようと考えている人にとっては特に入念な下調べが必要です。9月中には授業のみならず、サラマンカでの大学生活を軌道に乗せていかなければなりません。総合大学で、キャンパスは町全体といっても過言ではありませんので、大学のアカウントや大学証を作ったりするのでさえも、あちこちに行かなければならないでしょう。それぞれの部署でもオフィスアワーが日本とは違うため、気を付けなければなりません。

それでも、やはり「サラマンカ」という、街が世界遺産となっている大学で、留学生活が送れることは、貴重な経験だと思います。サラマンカ大学の学生証で、大学のファサード内にある図書館へ無料で入館できますし、公式ショップでの割引もあります。サラマンカの住民票があれば新カテドラルも無料で入れるとか。留学中にいろんな特典を大いに利用していただきたいと思います。

(写真1:東アジア学士課程3つの専攻の新入生が集まった)
(写真2:2023年度大学開講式。公式You Tubeチャンネルより)
(写真3:9月14日行われたサラマンカ大学名誉博士号授与式で演説するノーベル生理学?医学賞受賞者、山中伸弥氏。サラマンカ大学プレスより。)
(写真4:9月20日「警官の日」。今年はサラマンカのマヨール広場を中心に行われた)
(写真:笹を発見。図書館、社会科学部、法学部、歯学部などに囲まれた広場の一角。皆さんも探してみてください。)

6月 活動日誌

2023年6月30日
GJOコーディネーター 久保 賢子

長い長い試験期間がやっと終わりました。6 月に入ると一気に気温が上がりますが、スペインではクーラーなどがない建物は多く、いろいろな方法で暑さをしのぎます。朝晩は上着が必要な程涼しくても、お昼には強い日差しで日焼け対策が大変です。湿気がないため、日本のようにタオルを持ち歩いたりする人はいませんが、影を探したり噴水や水場がある公園で休んだり、扇子も大活躍しています。大学では太陽光による屋内の気温上昇を避けるため、外の戸を締めきります。それでもお昼以降は室内の気温も上がってくるため、中旬をすぎると、仕事時間も夏季の時間割を導入し、午前中の 14 時までで終了する所が多いです。プール開き、大学入学共通試験、学年締めくくりの発表会、卒業式、そして小中学校及び高校も修了すると、サマーバーゲンが始まり…6 月に休暇の一部分を使う人もいるので、目くるめく夏の到来を感じます。それもそのはず、夏至の辺りには各地で様々な祭りが開かれます。

そんな中、大学では 4 年生や修士課程の院生が論文の追い込みにかかっています。今年から、学士課程にも論文審査での発表が加わり、それぞれ 20 分で対面の発表をしていきます。教室では入れ代わり立ち代わり審査会が行われています。オンラインは基本的に不可なので、サラマンカを引き上げた学生達もこの 10 分から 20 分のためにやってくるのです。パワーポイントなどのツールをうまく使いこなし、入念な準備の上、発表も読んだりせず堂々としたもので、かなりクオリティが高いプレゼンテーションを行っていました。日本文学、日本文化に関するものは今まで多かったですが、実は日本語に関するものは一本か二本くらいしかなかったと思います。しかし、今年はようやく日本語に関するテーマが何本か見受けられただけでなく、日本人にとってのスペイン語教育などといった言語教育、言語学習などの内容があり、卒業生の今後の進路を見守っていきたいと強く感じました。

(写真 1:涼しげな学部の一建物 Hospedería de Anaya. 教室では追試験の最中。)
(写真 2:学部の裏門の一角にあるバラの園。)

5月 活動日誌

2023年5月30日
GJOコーディネーター 久保 賢子

文献学部でもようやく今年度の授業が終わりました。特に四年生にとっては、大学時代締めくくりとなる授業期間でした。いいお天気が続く中、以前から教室外で授業をしてみたいという密かな思いがありましたが、ちょうど日西文化センター(Hispanic Japanese Cultural Center)で開かれたばかりの、「本質的な特徴 Essential Characters」と題された展覧会に授業の一環として行くことができました。『美智子さまホール』と呼ばれるスペースに、日本の要素を取り入れた「科学を芸術として観た」作品が展示されており、不思議な目新しいものに触れました。実は数が少なかったため、時間が余った場合の案を色々持参していました。しかし、作品ごとに日本語学習者からの視点も加わった、なんとも活発な意見交換が行われ、多角的なアイデアを得ることができ、とても新鮮でした(写真1)。

さて、一年間行ってきた言語交流会も、今月で一旦終了となりました。課題提出や試験などで忙しい中、息抜きの目的もあってか、最後まで集まってくれました。今後は、インフォーマルながらも、もう一つの交流の場、カフェ?ベッケルでの集まりに行くことになると言って、名残惜しみながら解散しました。次回この会を開催するときは、参加者がガラリと一変するのだなと思うと、どんな雰囲気の集まりになるのか、今から楽しみです。
授業が終わるとすぐに試験が始まり、図書館でも自習室でもテスト勉強の追い込みに明け暮れる学生の姿が見受けられました。そして、学生が集まるところは勉強する場だけではありません。図書館の周りのバルやスーパーは、授業期間以上に、休憩をとる学生であふれかえっていました(写真2)。

5月25日は、神奈川大学長のサラマンカ大学訪問に際し、文献学部大講堂において「日本の米とスペインの米」という題で講演会が行われました(写真3)。日本語の講演をスペイン語に逐次通訳する形で行われましたが、分かりやすい日本語でご講演くださったため、日本語で日本文化について話が聞け、それをスペイン語でも確認しながら内容を追うことができたのは、学生にとって貴重で充実した講演だったと思います。スペインでも米料理はよく食べられていますが、日本では食べることの他にも神聖性を得たり、経済活動の担い手となったり、「米」に様々な役割があったことには、日本人として感心を超え、感動せずにいられませんでした。日常のいろんなモノにいろんな意味がある、それが日本とスペインとでいろんな意味のつけ方が違ってくる、そんなことを振り返り、異文化を知ることはそれだけ世界が広がるのだと改めて感じました。


(写真1:課外授業、展覧会「本質的な特徴 Essential Characters」)
(写真2:いつもは静かな図書館周辺)
(写真3:5月25日、講演「日本の米とスペインの米」)
(写真4:5月26日、サラマンカ大学による「日本サラマンカ大学友の会」へのメダル授与式)

4月 活動日誌

2023年4月30日
GJOコーディネーター 久保 賢子

セマナサンタ中、閉館する学生寮がありますが、10 日間ほど強制的に追い出されることになった留学生たちは、そのおかげでいろんなところへ旅行に行くチャンスもあります。今の傾向としては、サラマンカは留学生が多いので、日本人同士でグループになってヨーロッパを旅行することが多いようです。そして、スペインに帰ってくると、ヨーロッパにおけるスペインの占める位置をより認識できるようです。連休が明けて一週間すると「ルネス?デ?アグアス Lunes de Aguas (水の月曜日 Monday of the Waters)」と呼ばれる、サラマンカ独自の午後が祝日扱いとなる日があります。午後からはどこもかしこも閉まり、みんなピクニックに行って聖週間の終わりを祝うという日です。といっても、午前中からどこでだれと過ごすか、このお祭りには欠かせないオルナソ hornazo(肉類が詰まったパイ)はもう買ったか、オルナソを買うための行列がすごかったなどという話で持ち切りで、みんなそわそわしています。また、月末には文献学部の守護聖人の日があり、学部祭が開かれます。開会宣言から始まり、その週の金曜日には、多くの学生は仮装姿で町のマヨール広場まで繰り出し、バルの梯子をしながら賑わいます。(写真 1)

授業も終盤、試験期間に入る前のお祭り気分を楽しんでおこう、といったところでしょうか。

休暇やお祭りが続きましたが、行事も盛りだくさんで、講演会やコンクール、演劇?映画鑑賞会、そして展覧会など、実に多様なイベントがひっきりなしに続きました。その影響もあってか、定例の言語交流会は、ゲーム大会のようになったこともありました。(写真 2)

国際交流基金の日本語?日本研究助成プログラムの説明会では、本学卒業生でこの助成を受けた者 4 名も登壇し、ラウンドテーブル形式で貴重な経験談やアドバイスなどを聞くことができました。院生や研究者向けの説明会でしたが、学部生も関心のある人の出席も見受けられ、自分の将来像を描き、今後の目標ができたのではないかと感じられました。2 か月や 6 か月の滞在だそうですが、ぎっしり詰まった予定をこなしていくようで、4 名揃って、勉強や研究にどっぷりつかった期間だったと述べていました。言語的には 2 か月は短い気もしましたが、日本語はかなり上達しており、短期間でもしっかり計画に取り組むことができれば、かなりの成果が出せるのだと思いました。(写真 3)

また、隣町では個人蔵の浮世絵展覧会があり、北斎、歌川広重、国芳、写楽などの作品が展示され、スペインにいながらこのような作品を鑑賞できたことに驚きを隠せませんでした。至る所に「日本」の存在が感じられるようになってきました。(写真 4, 5)

(写真 1:貝の家の前ではよく音楽演奏がされます。この日は学生バンドで、ラテン系ト ゥナ tuna

(写真 2:言語交流会がゲーム大会の場となりました)

(写真 3:日本研究を視野に入れている学生は多い。)

(写真 4:カテドラルの裏には、藤やあやめが満開。)

(写真 5:通りに新しく植えられた木は、八重桜でした!)

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