2022年度 活動日誌
3月 活動日誌
2023年3月26日
GJOコーディネーター 久保 賢子
朝晩は肌寒いものの、日中は20度ちかくまで上がり、若者の間では、タンクトップやサンダル姿さえ見られました。「寒くないんだろうか」「夏になったらどうするんだろう」といった心配もよそに、全く平気な様子で、芝生で昼寝をする姿も見かけられました。(写真1)
さて、今月中学校や高校では遠足の時期なのでしょう。文献学部の前に広がるカテドラルを訪ねる中高生がグループでたくさん来ていました。主にイギリス、ドイツ、フランスから来ているようでした。また、日本の大学からも、春休み期間を利用してサラマンカへの語学留学をする学生が来ており、大勢と街中ですれ違い、日本の春休みが感じられる月でした。南山大学からはグループでインターナショナルコース及び日西文化センターでの短期研修に来ていましたし、個人でも短期ステイをし、長期留学の下準備としている学生もいました。
さらに、3月13日から一週間は日西文化センターで日本週間が開催されました。俳句コンクール、「オランダのおいね」(Dutch “O-Ine”)をテーマにした講演会、茶道や太鼓などのパフォーマンスがあり、日本人留学生も学部の日本語学習者もこのチャンスを逃さず、イベントを楽しんでいました。
そして、次の20 日からの一週間は、文献学部でも独自の日本文化週間が行われました。今年は、以前にも増して、特に学生が中心になって催しが繰り広げられ、同時に2 つのイベントが開催されている枠もあり、様々な人の関心に沿ったアイデアが満載のプログラム内容となっていました。特に、ゲームやカラオケ、コスプレにはみんな力を入れていたようで、反響もよかったです。中には日本人も知らない遊びなどもあり、日本留学中の経験が窺えるものや、「日本が好き」という思い入れが分かり、授業では見られない学生の活躍ぶりに色んな発見もあり、嬉しかったです。学生のこれがやりたい、みんなに教えてあげたい、といった強い想いを発揮できる場であり、また、クラスメイト同士の絆が深まるという意味でも、このようなイベントは大切だと再確認できた一週間でした。(写真2, 3, 4, 5)
(写真2)各学年の成果物(習字、料理レシピ、川柳)
(写真3, 4)学部の中庭で八つほどの出し物が用意され、一般にも公開されました。
2月 活動日誌
2023年2月28日
GJOコーディネーター 久保 賢子
月が替わったと同時に、一気に春の到来を感じさせられる日々が続きました。そんなのどかな陽気な中、サラマンカ大学での後期の授業を目標に到着してきた日本人留学生たちがかなりいます。以前は一年間留学が主流でしたが、コロナ後は特に半年留学が目立ちます。サラマンカ大学は総合大学で、街中に学部やキャンパスが点在し、小さい町とはいえ、町全体が大学だといっても過言ではありません。事務局なども一か所にはまとまっていないため、初めて来た人にとってはかなり複雑だろうと思います。ロケーションとしても、観光客と入り交ざって、一体ここは大学なのかという印象を誰もが持つようです。日本程留学生に対する対応が細かくないことも加わり、「どこに行って何をしたらいいのかも分からない」という相談は無きにしも非ず。
授業に関しては、たいてい学部間を行き来できる範囲内で色んな授業を履修しているようです。先輩たちやスペイン人学生からどのような科目がお薦めかといった情報を入手し、入念に留学中の学習計画を立てています。このように留学生活が始まると、本当にあらゆるストラテジーを自然と駆使するようになるのだなと改めて思いました。
言語交流会もスタート。今回は4年生を対象としましたが、一部、3年生や修士課程の学生も混ざって、毎週集まっています。日本語学習者と日本人留学生も、今までで一番集まりがいい印象です。実は、盛り上がりすぎて、注意されることがありましたが、それほど話が尽きることなく、みんなが一生懸命に話している姿に、これこそが言語を勉強する理由の一つだということが手にとるようにわかりました(写真1)。
二月半ばになるとアーモンドの花が開花しました。こんなにいい天気が続いているから当然と思った矢先、開花直後に大寒波に見舞われ、冬に逆戻りの寒い日々が続きました。ある日本人からは、厳しい冬の北海道が思い出されるという話も聞きました。モロッコで雪を降らせたというこの寒波。学部から望むカテドラルもあっという間に雪に覆われ、一面の雪景色を見られたことはかなり貴重だったのではないかと思います(写真2)。
一年留学の人もあと半年、半年留学の人も、いいことも悪いこともあるかもしれませんが、気づきさえあれば、この半年が多様な経験で凝縮されたものになること間違いなしでしょう。
1月 活動日誌
2023年1月31日
GJOコーディネーター 久保 賢子
1月、試験期間。
前期授業と試験、試験と後期授業。以前はそれぞれの間に一週間のゆとりがありました。その期間に補講があったり、試験の見直しがあったり、はたまた教員にとっては成績をつける期間となっていて、忙しい中にも区切りがあり、落ち着いていました。ところが今回は、そのゆとり期間がなく、休み明けの試験から全て立て続けで、突然後期授業の開始となり、何ともせわしい月となりました。
スペインの人たちにとっては冬休み中、クリスマス、新年、公現祭(Epiphany)などが続き、行事が盛りだくさんです。イブや大晦日、公現祭前日と、それぞれ前日も祝うとなると、少なくとも6日間は家族で集まる日となり、そんな親族で過ごす日々のあとに来る試験は、さぞ厳しいものだと察します。私も学生にこの期間のことを質問すると、みんな声を揃えて、「試験勉強をしている」と、まるで決まり文句のように返ってきます。そう言われてみれば、前述の祝日以外は、冬休みでもなんと24時間体制で開館している図書館があります。そして大学学内や寮の勉強室は開室時にほぼ席が埋まるほどの勢いです。試験が上手くいった人もそうでない人も、とにかく一番集中して勉強をした充実感120%の期間だったはずです。
さて、先月12月は雨風続きの日々でしたが、1月はぐんと気温が下がり、濃霧に包まれ、または氷点下で霜が降り、雪もちらつき、朝晩の冷え込みに、やっと「サラマンカの冬」を思い出せました。(写真1)
そんなサラマンカで前期に留学した学生が帰国したり、または、後期だけ留学するという人が到着したり…。常時サラマンカに居る者としては、いろんな人の入れ替わりをそばで感じ、その人がどんな経験を積めたかに少しでも触れることができて、学ぶところの多い日々です。
文献学部の後期は1月末から5月中旬まで。4年生にとってはラストスパート区間です。授業が終わる頃にはタイトルにふさわしい日本語能力が備わっているように磨きをかけなければなりません。留学生にとっては、「限られた滞在期間」として、同じように考えられるでしょう。日々の発見、また、いろんな人との交流を大切にぐんと成長できますように!
(写真1)朝8時半。厳かな静けさが印象的なパティオ?メノール(Patio Menor)。
12月 活動日誌
2022年12月31日
GJOコーディネーター 久保 賢子
雨、雨、雨。寝ても覚めても雨の日々。12月にこんなに降り続けるなんて、今までにありませんでした。ほぼ毎日傘を持ち歩きましたが、風がひどいことが多く、なかなか傘もさせません。もともとスペインの人たちは少し濡れるくらいなら全く平気で、傘を持ち歩くより、帽子やフード付きのコートなどでしのぐことが多いです。さすがに今月の雨はかなり大降りになったこともあり、傘の携帯率は上がったものの、朝でさえ濡れて来る人もちらほら。天気予報が当たらない、天気が急に変わる、といった事情も無きにしも非ず、といったところです。
9月から始まった大学の前期の授業は今月で終了し、残すところ試験のみとなります。12月は初旬にある連休、そして23日からのクリスマス休暇と、気分の上ではすでに「授業終了」「休暇開始」と言いたいところですが、1月の試験を前倒しにする科目があったり、いろんな課題の提出期限に追われたりと、街のクリスマスのライトアップとは裏腹です。(写真1, 2)日本人留学生たちの身にも降りかかってきた授業のラストスパートの波はどのように映ったのでしょうか。さらに外はいつも雨か曇りか霧といった寂しげな天気、ついには風、寒さが追い打ちをかけて、大学に行くのにはそれなりの動機と意志が必要です。(写真3)
それでも12月中3回の言語交流会が開けました。来るメンバーはだいたい同じ顔触れですが、日本人側もスペイン人側も誰も来なくなる日というのはありません。誰と話しても会話が途切れることなく、いつも楽しく話が弾む一時です。なぜ楽しく会話が続くのか。今月は集まったのが少人数だったため、全員で輪になって話を始めました。よく話す人とそうでない人が必ずいるため、ペアを組むのが一番いい方法だと信じていましたが、今回改めてグループでの会話の必要性にも気付きました。よく話す人も口数少ない人も、とにかくまず話の筋についていかなければなりません。よい聞き手となり、何らかの反応を出していく。ほかの人の話を聞いている間、自分の話したい事を頭の中で準備し、発話できるタイミングを図ります。話す時は、聞いている人を退屈させないように、また、理解してもらえるように伝えなければなりません。うまく伝わらなくても、大丈夫。ほかの人が話題の切り替えをしたりして、どんどん話は進んでいきます。かなりスピーディーな展開ですが、会話の流れに乗って考えを整理して話していく、ということはかなりの特訓だと思いました。
また、日本人留学生の中から、三味線と民謡についての講演の提案があり、日本語学習者に呼び掛けて実施しました。内容はもちろん、同年代の日本人大学生がスペイン語で説明をするということに刺激を受けたでしょうし、日本人留学生にとっても、このような発表の機会があるということは、留学のもう一つの大きな目標となり、今後はこのような場をもっと提供していけたら、と思いました。
(写真1)郵便局に設置された東方の三賢人Reyes Magos, Three Kings への手紙入れ。どんなプレゼントが欲しいか意思表明する。
(写真2)サラマンカにも細々とクリスマスマーケットが。夜になると賑わう。
(写真3)どの角度から見ても美しいアナヤ宮殿Palacio de Anaya。
11月 活動日誌
2022年11月30日
GJOコーディネーター 久保 賢子
10 月最後の土曜日、毎年サマータイム終了の日となっていますが、今年は 10 月 29 日でした。その日曜日から全く違う世界に来たように、晩が暗くなります。朝はというと、スペインはもともと夜明けが遅く、サマータイムを脱出しても、やはり朝が遅い印象はぬぐえません。朝 8 時からの授業はかなり厳しいですが、科学系の学生は友達と一緒に通学するようにしているようで、毎朝大勢の学生とすれ違います。ちなみに人文系の授業は、9 時や 10 時開始がほとんどで、日本語も、インターナショナルコースのスペイン語も、その時間です。(写真 1)
サラマンカの町並みは、10 月 31 日のハローウィンと 11 月 1 日の諸聖人の日(Día de Todos los Santos / All Saints' Day)のあと、一気にクリスマスの準備へ。街路のクリスマス用の照明も準備され、その点灯の日を今か今かと待ち受けています。店先にはクリスマスの時期のお菓子が並び始め、クリスマス用の飾りの品で彩られ、一年のくくりを感じます。
いつもちょうどこの頃、不思議と朝晩の霧の立ち込みも深くなり、大学内でも暖房が入ったことに気づきます。(写真 2)どんどん気温は下がり、スペイン内陸の寒さを思い出しますが、今年は一体どんな寒さの冬になるのか思いがめぐり、皆一気に冬支度に取り掛かります。今年は雨がよく降り、寒さが一層身に沁みます。ボイラー音が聞こえ、暖炉を焚いている家からは、煙突から煙が。すでに氷結を回避するための塩が撒かれていたり、「冬の秋」というニュースタイトルも目にしました。
大学では、カレンダー上、祝日から始まる月ですが、あとは全く休みがなく、それぞれの科目が前期終盤に向け、テスト日も視野に入れつつ、ペースを上げていく、一番厳しい勉強期間かと思います。日本人留学生の中からは、学部のスペイン語の授業で、同じクラスに出席しているノート取りが上手そうな人を見つけて、ノートを取らせてもらうなどし、授業中は先生の話をしっかり聞くようにしている、という話も聞きました。授業への出席、ノートチェック、復習と、普通の学生の何倍もの注意力、労力が必要です。そんな学部での授業以外でも、活動範囲は広くなり、あちこちの日本語授業からお声がかかっているようです。その授業参加を通じて、更に知り合いが増え、小さなサラマンカの町で、馴染みのある顔と通りすがることが多くなった人もいるようです。(写真 3)
ハードな授業に加え、講演会や行事も続き、休む暇もありませんが、留学が充実すること間違いなしですね。(写真 4)
10月 活動日誌
2022年10月31日
GJOコーディネーター 久保 賢子
まるでこの間行ったかのように思い出す「言語の日」のイベント。そうです。前年度である 2021 年度は、このイベントは 2 月に行われました。今年度は通常の 10 月開催に戻ったため、新学期明けすぐの時期に、慌ただしく参加することになりました。それにもかかわらず、東アジア学士課程日本語専攻の三、四年生が中心になり、紹介したい本やお気に入りの本を持ち寄ったり、漢字や折り紙のワークショップなど、話し合いから実行まで、手早くスムーズで、学生の主体性に目を見張るものがありました。参加した分科には、ドイツ語、ポルトガル語、イタリア語などもありましたが、今回も日本語をはじめとするアジア言語の存在が抜きんでていました。特に日本語コーナーについては、学生の積極的な姿勢が印象に残ります。(写真1)
また、今月からは言語交流会も再開しました。金曜日は日本人留学生が旅行で不在になったり、スペイン人学生も帰省することが多いことから、毎週木曜午後に設定しました。しかし、サラマンカで行われているもう一つのカフェでの交流会も同じ木曜日。更に、今年はバディ制もとったことから、今年は来る人が少なくなるかもしれないと少し不安になりましたが、雨が降っても寒くても、逆にお天気が良すぎてどこかへ行きたくなっても、毎週日本人もスペイン人も同じくらいの人数が大学の教室に集まりました。趣味、料理、音楽、と、各回テーマを絞って進めますが、初めは緊張して考える時間や沈黙する時間もあったものの、徐々に調子が出てきて、今では弾んだ会話が教室に響きます。(写真2)
さて、10 月 26 日から 28 日はスペイン日本研究の学会が文献学部で行われました。スペイン国内のみならず、日本やラテンアメリカからの参加がありました。発表者の中にはサラマンカ大学学士課程の卒業生もおり、いろいろなところで活躍していることが分かりました。参加した日本語学習者にとっても、どのような日本研究がなされているかを知る、充実した三日間だったと思います。スペインでの日本研究も、徐々に確立していっていると実感した日々でした。
それに合わせて、10 月 24 日には、サラマンカ大学の環境対策部(Oficina Verde – Green Office)主催の、「粘土団子(Pelota de semilla – Seed ball)」作りのワークショップに参加しました。日本生まれのこのアイデア。日本語学習者たちも参加し、日本語を交えておしゃべりしながら作ってみました。実はこの日は「気候変動に反対する国際デー(Día Internacional contra el Cambio Climático - International Day against Climate Change)」とされています。調べてみると、国連からはまだ承認はないそうですが、スペイン政府はこれを推し進めているようです。また、学会後の 29 日にはサラマンカを流れるトルメス川(Río Tormes – Tormes River)のほとりを散策(写真6)。身近にあって気づかないことはたくさんあるものですね。
皆さんも穴場を探してみてください!
9月 活動日誌
2022年9月30日
GJOコーディネーター 久保 賢子
9月に入り、だんだん朝晩の寒暖の差が激しくなってきました。9月8日はサラマンカ市の祝日で、その前後は出店や街頭コンサートがひっきりなしにあり、まだまだ夏休み気分は抜けません。文献学部では、授業の開始が今年は少し遅めの19日でしたが、それまで半日のみの開校、つまり15時のお昼の時間までで大学は閉まってしまうのです。文献学部があるカテドラル付近ではいつも観光客を大勢目にしますが、特にグループツアー客をガイドが連れて歩く姿を至る所で見かけ、「あー、こんなところも観光スポットなのか」とサラマンカの知られざる魅力を再認識することもあります。
大学は1か月の夏休みを経て、2022年度が開始しました。厳かな大学全体の開講式、各学部の開講式、各課程の新入生歓迎会、新入生歓迎オリエンテーション、留学生歓迎オリエンテーション…と、様々な場所で次々と式や説明会が開かれていきます。ちなみに、文献学部の開講式は、学部が所有する劇場で行われ、400席近くがあっという間に全て埋まりました(写真 1,2)。
今年は留学生の数がぐんと増え、日本からは29人の学生が交換留学としてサラマンカ大学に来ています。私費留学を入れると、その数はもっと増え、ほぼ以前の活気が戻ってきたように思います。さすがスペイン語をブランドにして栄えている町だと実感する瞬間です。さて、コロナの制限を終えて、晴れて留学を達成した人の中には、学部の授業にきちんとついていけるように、語学コースや公立語学学校にも並行して通う人も見かけます。日本ではスペイン語が専攻ではない学生も多くいます。私自身が学生の頃、言語専門でそれ以外何も手を付けられないタイプだったので、自分の専門にプラスで語学留学をしている人に出会うと、立派だと思わずにいられません。
そんな中、日本留学から帰ってきたスペイン人の日本語学習者からバディを組もうと提案がありました。なんでも、自分が日本に行ったとき、困ったことがたくさんあり、学生同士のヘルプがあったら助かるのではないか、と考えたそうです。早速日本人留学生と3,4年生の日本語学習者に連絡をとると、ほとんどの人が集まり、24組も成立しました(写真 3)。サラマンカに来てすでに 1 か月近く経っていますが、新しい土地で生活を始めるだけでなく、これからはスペイン人の友達も作っていき、どんどん土地に馴染んでいけるように、バディのスペイン人学習者が助けになるのではと願っています。
6月 活動日誌
2022年6月30日
GJOコーディネーター 久保 賢子
アフリカからの影響で40度の猛烈な暑さを記録したかと思うと、また15度くらいの肌寒い日が続くなど、幅広い気温変動で体調を崩す人も少なくありません。サラマンカ市の祝日には花火大会、野外コンサートなどの催しが目白押し、その後もプール開き、そして村の至る所で祭りが次々と開かれていきます。
そんな中、学生にとっては、後期の本試験に続き、前期の追試、後期の追試、追試がない人は論文のラストスパートといった、学業面では一年の中で最も大切な時期。その間に在学中の一大イベントである卒業式が入ったりと、本当に目まぐるしい日々です(写真1)。しかも文献学部のキャンパスはカテドラルの目の前。6月に入ってからというもの、さらに観光客が増え(写真2)、至る所で観光を楽しむ層と勉強の合間の休憩を取る層が入り混じった不思議な風景が見られます。拍車がかかり、5月の授業で日本人留学生と取り組んだ環境保護についてのメッセージをビデオに収録することもできました。授業では3分の発表や、1分の録画提出など、問題なくできるものの、実際に他の人にとってもらっているカメラを前にし、間違わずに言おうとすると、準備に1時間はかかりました。このように場所や人を変えてやってみると、また一歩日本語やそれに関連した能力が磨かれるのだなと実感しました(写真3)。
スペインで留学している日本人はというと、ネイティブと同じ条件で、レポートだけではなく、厳しい試験を受けなければなりません。言語学や文学から音韻論に至るまで、皆さん
日本語でも難しい内容をスペイン語で頑張っています。それに加えて、留学生は帰国に向けた準備にも、大忙しの日々です。一年近く過ごしたサラマンカでの生活。お気に入りのもの、あげるもの、捨てるもの…。スーツケースは重さをしっかり量って、郵送などの方法も考えたりと、あらゆる情報を収集し、いろんな案を張り巡らせているようです。お土産も持って帰りたいし、サラマンカでの友達ともお別れをしたい。荷造りは重さ、選択の問題だけではなく、どんどん時間との勝負にもなってきます。いいこともあれば、悪いこともあり、早く帰りたいと思いながら過ごした人もいれば、もっと長くいたいと思う人もいて、千差万別ですが、とにかく「留学」を境に、日本での一年とは全く比にならないほどの経験を積んで、人生の振り返りや将来の見通しへとつながっている、そのように感じられます。
5月 活動日誌
2022年5月31日
GJOコーディネーター 久保 賢子
五月に入り、急に夏日が続きます。日本人留学生も、声を揃えて「春がなかった」と言っていました。ただ、この辺では、「五月の四十日まではコートをしまうな」という言い伝えがあります。四十日というのは、つまり六月上旬まで。暑い日が続いても、突然寒くなる、というこの地域の特色を物語っています。今年もその言葉を裏切ることなく、五月末でも「あんなに夏日だったのに」と思いながら冬物のコートを着る日が何日かありました。
さて、東アジア学士課程では、五月初めに日本週間が行われました。(写真1-1, 1-2) 学生が主体となってプログラムを練り、また、学生が主体となって進行されました。今年は各学年からそれぞれ参加することになっていて、今までと比べて、内容も数も参加状況もよかったといえます。人気があったのは、茶道、縁日の遊び、書道で、特に茶道や書道は、他の文化的行事でもよく行われていますが、定員に入れないことがあるようで、今回体験できることができてよかったようです。開催後のアンケートにより、他の授業と重なって参加ができなくなることが分かり、来年には催し物の組み方を訂正できそうです。
また、4月にようやく日本に留学へ行った学生たちとオンラインセッションを行い、日本の今の様子、到着時のこと、授業や日本の生活について話を聞くことができました。(写真2) 日本留学を目指す学生が、質問できたことや、いろいろな留学先の比較も一度にでき、有効な情報交換の場となりました。
ここで、オンライン留学をしている学生の存在も忘れられません。夜中に授業を受けることは苦労が多く大変ですが、一方では、充実感に満ちている様子が見受けられます。
このように、盛沢山の行事で始まった五月ですが、その後は授業終了にむけてのラストスパート。授業が終わったら間髪入れず試験期間です。四年生はさらに卒業論文や卒業式が目の前で、皆それぞれ自分の目標に向かって着実に進んでいます。
授業終了と共に言語交流会も一旦終了しましたが、参加していたメンバーは、いつからか会の後に場所を移してカフェへ行っていたようで、今では同じ時間に直接カフェでの待ち合わせとなり、交流が続いています。日本語学習者もスペイン語学習者も、この場のおかげで話せるようになった、会話力がアップした、という感想を頂けました。そう言われてみれば、大人しくなかなか話さない学生も、頑張って話していたな、という印象は確かにあり、言語には、授業だけではなく、様々な活動が必要なのだなと思いました。
写真 1-1:書道は満席。いつも勉強している漢字が全く違うもののよう。
写真 1-2:金魚すくい用のポイは日本から取り寄せた。一回ではなく、何度も挑戦していました。
写真 2:コロナ後やっとの思いで日本留学を果たせた学生の生の声は貴重だった。
4月 活動日誌
2022年5月5日
GJOコーディネーター 久保 賢子
セマナ?サンタ Semana Santa とよばれる聖週間(Holy Week)の時期がやってきました。今年こそ、スペイン各地で祝われ、サラマンカでもパソ paso とよばれる御輿や山車の行列がブラスバンドとともに街中を練り歩くことができました。イエス?キリストのエルサレム入城の日とされ、「枝の主日(Palm Sunday)」と呼ばれる日曜日から、イエスが復活する日曜日まで、聖書に基づいた場面のパソがその出来事の曜日ごとに出されます。様々なパソが、それぞれの教会から、色々なルートをたどり、街を巡るので、一時通行止めや、人混みで動けなくなることもあります。三年ぶりとあってか、コロナ以前よりもずいぶん多くの人出で、二年間の旅行規制からの解放感も感じられ、どこも多いな賑わいでした。週末?祝日は休業、という今までの習慣を覆し、休日を返上してどこも遅くまで開店していたくらいです。なんと私は今まで夜遅くの行列をテレビ以外で見たことがなかったのですが、今年は聖金曜日 Viernes Santo (Good Friday) に思いがけなくパソに出会い、セマナ?サンタの中でも最重要とされる日だということを目の当たりにしました。
このようにカトリック教の文化にとっては大切なイベントで、祝日続き。大学も11日間の大型連休となり、学生は実家に戻る人がほとんどです。留学生は旅行にサラマンカ散策、と同時に、課題や試験準備も並行で、あっという間に過ぎてしまったようです。
コロナについては未だに収まらず、終わるやら終わらないやらで、疲労感、飽きた感じがあるものの、濃厚接触者はもちろん、陽性でも隔離がなくなったことは、少し前の規制からは考えられない程です。「驚異的なコロナの勢い」から「一種のかぜ」というイメージになっており、ほとんどの人がかかる、という意識です。少し早まった決断ではないかとの意見が多い中、連休直後の20日からは政府によるマスクの屋内着用義務もなくなってしまい、まさに各自の責任に任せる自由型社会の姿勢が伺えます。
言語交流会も軌道に乗り、少数ではあるものの、充実した一時間が過ごせているようです。今月のテーマは、「セマナ?サンタとゴールデンウイーク」そして、「名前」でした。セマナ?サンタ中の旅行の話、この時期の休みとして日本ではゴールデンウイークがあるが、どんな過ごし方をするかといった話から、それぞれの大型連休の捉え方の違いが浮き出てきます。また、名前については、自分の名前がどういった意味か、日本語のみならず、スペイン語名にもやはり深い意味があり、誰がどういった意図でつけた名前かなどを話せたのは新しい発見などが多くあったと思います。また、スペイン語でもニックネームなどがありますが、自分の国の文化の事でも知らないことは多く、スペイン語でも日本語でも内容の充実した交流会でした。
セマナサンタのパソ用に階段には大きなスロープが設置される。
今年新しく各信徒団体の写真が壁面に張り出された。
ルートを何時間もかけて、立ち止まったりしながらゆっくり進む。
イエス?キリストが十字架から降ろされた場面を表すパソ。