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荒このみ訳、福音館、1999年10月15日
冬の嵐の晩、貧しいひとり暮らしのおじいさんのもとに、一ぴきの黒ねこがやってきました。やせ細り、びしょぬれになってふるえている黒ねこを哀れに思ったおじいさんは、わずかばかりのミルクとパンを全て与え、さらにはとっておきの羊の肉までやってしまいます。そればかりか、残っていたまきをすべてだんろにくべて、黒ねこをあたためてやるのでした。そして翌朝、奇跡はおこりました……。
牛島信明?川成洋?坂東省次編、世界思潮社、1999年
ヨーロッパの統合に向けて邁進するスペイン。バスク、カタルーニャ、ガリシア、アンダルシアなど多様な民族と文化。そして今日の王国と17の自治州の制度。数千年にわたり織りなされた「知」の可能性を探り、日本との交遊を明らかにする。
セルバンテス著、牛島信明訳、岩波書店、1999年6月18日
世界文学の英雄ドン?キホーテが新しい日本語になって帰ってきた.世の不正をただすべく冒険の旅にでた主従がかわす愉快な会話.次々と現れる老若男女さまざまな登場人物の雄弁多弁.原文がもつ魅力たっぷりの語り口を見事にうつした新訳によって,名作がここによみがえった.ギュスターヴ?ドレの挿絵120枚を収録.
亀山郁夫著、青土社、1999年12月
ペレストロイカから15年、国家崩壊後の変貌の地を巡礼し、全体主義の歴史を経て模索する人々の生のかたちを直視する。現代芸術、政治、知の現在から、ウォッカと食の楽しみまで、現代ロシアのエッセンスを網羅した異彩の〈紀行物語〉。
ウティン?ブンニャウォン著、University of Washington Press、1999年12月1日
Outhine. Bounyavong is one of the most prominent contemporary writers in Laos. His stories are animated with Laotian virtues of simplicity, compassion, respect for age, and other village mores; they breathe with a gentleness that is fresh and distinctive. Outhine is interested in his own memories, in how to behave with compassion, and in the chain of life among men and women that reaches into the earth.
Rather than writing through an ideological lens, Outhine focuses on the passions and foibles of ordinary people. Their good luck, disappointments, and plain but poignant conversations reveal the subtle textures of Lao culture. The tragedy of war and the threat of environmental degradation are themes woven into his stories.
This book presents fourteen of Outhine Bounyavong's short stories in English translation alongside the Lao originals, marking his formal debut for an American audience.
亀山郁夫著、同朋社、1999年2月
吸血鬼の影に怯え、血の伯爵夫人に恐怖し、魔術の首都を巡る鮮血の魔境へ。菊地秀行のルーマニア?ドラキュラ紀行ほか、東欧に潜むミステリアスな13の世界へ読者を誘う。
ウラジーミル?ソローキン著、亀山郁夫訳、国書刊行会、1999年1月1日
唐突に開始される殺戮、あまりにもグロテスクな描写、簡単に切り離される身体……。「現代ロシア文学のモンスター」と異名をとる過激な作家が、日常と狂気の境界を破壊して造形する乾いた「愛」のかたち。
ヨッヘン?シュミット著、谷川道子訳、フィルムアート社、1999年5月
〈不安〉と〈愛されたいという願望〉-世界的舞踊家ピナの主題と作品、そして人生を余すところなく伝える。巻末に「作品目録」「受賞歴」「ヴッパタール舞踊団の客演目録」を付す。
沓掛良彦著、大修館、1999年11月
陶淵明?和泉式部?サッフォー…漢詩?和歌からギリシア古典まで、詩酒徒?枯骨閑人先生が自在に駆けめぐる、東西の古典詩の世界。
蔡萬植著、三枝壽勝訳、講談社、1999年5月
両親の欲の犠牲で、不正使い込みの銀行員と結婚させられた初鳳。夫が殺害された後、夫の仲間や以前の雇い主によって意にそまぬ生活を強いられる初鳳の悲劇を描いた著者の代表作。
イタロ?カルヴィーノ著、和田忠彦訳、朝日新聞社、1999年10月
父と歩いた坂道、映画少年だったころ、パルチザンの記憶…。心の中にいつも在る遠い過去の風景をリリカルに描いた、カルヴィーノの“自伝”的小説集。
奴田原睦明著、岩波書店、1999年6月24日
欠乏に耐え、足ることを知る者が、一杯の水、一片のパンの本当の味に出会う。欲望の飽和状態を生きる定着民の現代文明に、遊牧の民の生き方は何を問いかけているのだろうか。サハラのベドウィン、トウアレグ族出身の作家コーニーの作品に、苛酷な自然と向き合うノマドの価値観、美意識を読み、異質な生の原理を探ろうとする。
上村忠男著、みすず書房、1999年12月11日
〈「南部問題についての覚え書」のなかでグラムシは、社会生活の地域的?空間的?地理的基盤を、彼と双璧をなすマルクス主義者であったルカーチがなしえなかったかたちで、もののみごとに照明をあてた〉(サイード)
〈グラムシの「従属的諸階級」についての考察は、マルクスの『ブリュメールの18日』の議論をより一般的なコンテクストへと拡大したものである〉(スピヴァク)
知識人とは、サバルタンとは、地政学的考察とは??
本書に編んだ「南部問題についての覚え書」を始めとした5章は、現代を生きるためにイタリアの思想家がのこした貴重な遺産である。
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