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八木久美子著、東京外国語大学出版会、2015年6月25日
イスラムの教えに従って生きるとはどのようなことか――。「食べる」という、人間に共通する普遍的な行為をとおして、教義や儀礼を単純になぞるだけでは知り得ない、そこに広がる豊かな意味の世界を読み解く。現代イスラムのリアルな姿に迫る、平明にして深い洞察に満ちた、現代の新たなる宗教論。
アントニオ?タブッキ著、和田忠彦訳、河出書房新社、2015年3月25日
ポルトガルの独裁政権下で地下活動に関わり姿を消した女性イザベルをめぐる物語。リスボン、マカオ、スイスと舞台を移しつつ9人の証言者によって紡がれる謎の曼荼羅。
『インド夜想曲』『遠い水平線』の著者が遺した最後のミステリ
姿を消したひとりの女性の軌跡を辿りながら、語り部の現実と幻想の糸で織りなされる彩り豊かな曼荼羅の中を、私たちは旅をする。——ヤマザキマリ(漫画家)
リュドミラ?ウリツカヤ著、沼野恭子訳、新潮社、2015年6月30日
遠縁のおばあさんに引き取られた、けなげな孤児の姉妹の話…「キャベツの奇跡」、ほとんど目が見えない時計職人の曾祖父が、孫娘にしてやったこと…「つぶやきおじいさん」、いじめられっこのゲーニャのために母がひらいた誕生会で起きた思いがけない出来事…「折り紙の勝利」等六篇。静かな奇跡に満ちた、心揺さぶられる物語集。
アンドレイ?タルコフスキー著、前田和泉訳、エクリ、2015年9月24日
今なお世界中に多くのファンをもつ、ロシアの映画監督アンドレイ?タルコフスキー。 2016年、没後30年を迎える監督が生涯で制作した長編映画はわずか7本。しかし、次作への構想は「ホフマニアーナ」「ファウスト博士」「ハムレット」「白痴」など、いくつも温められていた。 「ホフマニアーナ」はタルコフスキー、幻の8作目である。
大きなシーンごとに書き分けられた本書はシナリオであり、幻想小説でもある。鏡、火事、気球、蝋燭の炎……タルコフスキー映画ファンにはなじみの要素が散りばめられ、読者による映像化が待たれている。 翻訳は『アルセーニイ?タルコフスキー詩集 白い、白い日』を手がけた前田和泉。タルコフスキーとホフマン、時代も作品世界も異なる二人の芸術家に響きあう源を探り明かしていく解題も読み応えがある。 挿画は繊細な指と大胆な構成力で定評のある銅板画家の山下陽子。もうひとつの夢幻世界を堪能できる。
和田忠彦編、ミネルヴァ書房、2015年4月30日
近代国家として誕生した19世紀後半を分岐点に据え、都市国家から国民国家への転換がもたらした矛盾を浮き彫りにし、この一大転換を準備した多様な文化的事件を複眼的に見つめ直す。イタリア文化の立体像を鮮やかに描き出した一冊。
沼野恭子編、東京外国語大学出版会、2015年10月30日
人はその食べるところのもの De Mensch ist was er isst.(ドイツの諺)
東京外国語大学の世界各地?各ジャンルの研究者たちが腕によりをかけて贈る30の「食」文化エッセイ。「ものを食べる」ということは、万人に共通した行為です。でも、食の風景は千差万別。「みんな同じで、それぞれ違う」――食文化は二律背反的なのです。
レヴィ=ストロースの有名な「料理の三角形」が「みんな同じ」を構造的に捉えようとしたものだとすれば、本書は逆に「それぞれ違う」のほうに重きを置き、互いの異質性を具体的にきわだたせようとしたものです。東京外国語大学の研究者たちがそれぞれ専門とする地域の食文化とレシピを、それぞれの切り口で紹介するユニークな地域研究。
柴田勝二?加藤雄二編、東京外国語大学出版会、2015年2月20日
グローバル化へ向かう状況に驚くべき柔軟さで適応し、絶えず新しい状況を作り出してきた村上春樹?Haruki Murakamiは、「文学」そのものがすでに抗いがたく新しい場へと変貌してしまっていることを、他に先駆けて教えてくれている。日本、アメリカ、フランス、台湾、韓国の気鋭の研究者?翻訳家による論考、さらに中国、ロシア、フランス、スペイン/メキシコ、ポルトガル/ブラジルなど、各語圏の研究者によるエッセイの数々を収載。多言語?多文化的な視点から、様々なアプローチと文学的言説を交錯させる試みを通じ、村上春樹文学のグローバルな「現在」を読み解き、捉えなおす―。
ヌー?ハーイ著、岡田知子訳、大同生命国際文化基金、2015年9月18日
本書にはカンボジアで最も著名な作家ヌー?ハーイ(1916~1975)氏の二つの作品が収録されており、『萎れた花』は1949年、『心の花輪』は1972年に出版されました。いずれも同国の国民文学として広く知られた作品です。
封建的な社会の中で一途な愛を貫き通す若い男女を描いた『萎れた花』、愛する恋人と祖国への愛のはざまで心を揺らす青年を描いた『心の花輪』。それぞれの人生で愛と葛藤する主人公の姿が胸に熱く迫ります。
両作品では、1930年代から40年代のカンボジアの若者の流行?生活様式などが当時の伝統習慣とともに細やかに描写されています。彼らの考え方、生き方、悩みなどをあわせて感じ取っていただければ幸いです。
柴田勝二著、世界思想社、2015年3月20日
格闘する知性の軌跡の追究。青年期に選び取った英文学への疑念を掘り下げつつ「東洋」という居場所を見出す漱石。それは緊迫する二十世紀初頭の国際関係の中で「日本」と「西洋」という「非我」をともども相対化する「われ」の在り処だった。
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