数字はつくられた――統計史から読む日本の近代
- 刊行
- 著者等
- 佐藤正広(著)
- 出版社
- 東京外国語大学出版会
内容の紹介
統計制度の歴史が、日本社会の特質を物語る
近代西欧で生み出された統計制度は、幕末維新期に日本に移入され、「場」の論理と折り合いをつけながら、その時々の関心と合理性にしたがって実施されてきた。21世紀の「統計不信問題」にも通底する統計のあり方から、日本における近代化の意味を問う。歴史的統計データの利用法の解説付き。
筆者のコメント
佐藤正広(大学院国際日本学研究院/特任教授)
本書はもともと、明治から昭和戦中期に至る統計書の利用の手引きになる教科書として構想された。本書の第2部がそれに当たる。しかし、執筆を続けるうちに、今日の中央官庁による統計に対する不信問題がクローズ?アップされてきた。この問題は一般には現在の問題として、統計予算や統計手続の問題として論じられることが多いが、筆者にはそのさらに背後に、明治以来の日本における統計の位置づけの問題があるように思われた。西欧起源の統計制度が、社会的?歴史的土壌を異にする日本に移植されたとき、一体どのように機能するのか、筆者の関心はこの点に向かった。西欧では公共財として位置づけられている統計が、日本では官庁の専有物であるかのような扱いをされてきた。その延長線上に今日の統計問題もあると考えたのである。