ロシアとシリア ウクライナ侵攻の論理
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内容の紹介
(出版社HPから)
内戦が代理戦争の様相を帯びるとき、泥沼の悲劇が引き起こされる。ウクライナのドンバス紛争から2022年の戦争に至る過程には、シリア内戦と同様に諸外国が介入してきた。ウクライナは「第2のシリア」になってしまうのか。ロシアのシリア内戦への関与を洗い出し、両国の関係から、ウクライナ侵攻の実相に迫る。
著者のコメント
青山弘之(大学院総合国際学研究院/教授)
ロシアがウクライナ侵攻を初めた2022年2月24日以降、ウクライナの惨状を伝えるメディアでの報道や識者のコメントのなかで、シリアが引き合いに出されること、シリア内戦の悲劇が比較の対象として取り上げられることが増えました。しかし、ロシアとウクライナ、さらには欧米諸国?日本による情報戦のなかで、シリアが経験した苦難は、他者を貶めるため、あるいは自分を正当化するために都合よく解釈され続けました。武力紛争、テロ、難民、混乱などと結び付けられてきたシリアには、ウクライナ侵攻によってさらにネガティブなイメージが上塗りされているかのようです。
筆者は、広い意味でロシアのウクライナ侵攻を取り扱ってはいます。しかし、その主題は、ロシアでも、ウクライナでもなければ、欧米諸国や日本でもありません。ウクライナ侵攻における悪魔化と神聖視の間で、これまで以上に曲解され、そしてその後再び忘れ去られかねないシリアにおける事実に焦点を当てること、それが最大の目的です。
本書を通じて、忘れられたシリアの苦難に改めて目を向け、同国、そしてそこで暮らす人々が安定を回復し、復興を推し進めるのを支えるための建設的な思索や議論を支えることができれば幸いです。