〈伝統医学〉が創られるとき――ベトナム医療政策史
- 刊行
- 著者等
- 小田なら(著)
- 出版社
- 京都大学学術出版会
内容の紹介
(出版社HPから)
「われわれの医学」(ホー?チ?ミン)として建国の理念を体現し、息づくとされるベトナムの伝統医療。しかし、その「北ベトナム」中心のナショナリズムの物語を離れて歴史を辿ると、さまざまな権力作用、概念のもつポリティクス、実際の治療行為が結実した複雑な「伝統医学」像が顕れる。独立?分断?統一のなかで、近代国家はいかに医療の知識を制度に組み込んだのか。その担い手たちにとって、いかなる経験だったのか。公定の「伝統医学」をめぐるダイナミズムを描く。
著者のコメント
小田なら(世界言語社会教育センター/講師)
本書は、ベトナムの医療制度と伝統医療の文化を主題とした博士論文をもとに出版されました。対象とした時代が20世紀初頭の植民地期から現代までの長い射程にあることと、文献調査とインタビューを組み合わせて記述しているのが特徴です。
刊行に向けた改稿作業は、奇しくも、Covid-19禍のさなかに進めることになりました。本書はあくまでベトナム研究の本ですが、世界的なパンデミックの中で否応なく、医療制度と、それを取り巻く社会や文化の共通性や差異を考えることの普遍的な意味に、はからずも直面することになりました。本文のほかにコラムや写真も掲載されていますので、多くの方々の手に取っていただければ幸いです。