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世界の言語で読む『星の王子さま』?東京外大の記述言語学?

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世界の28の言語を専攻言語として教育し、それを含めて65に上る言語を教授する東京外大は、日本における外国語教育の中心です。その背景には、本学の言語学研究の蓄積があります。言語学研究をわかりやすく紹介する取り組みも行われています。その一環として、11月19日-23日に、本学を会場に、「世界の言語で読む『星の王子さま』」の展示会と講演会が開催されることになりました。

今回のTUFS Today では、その準備に当たられた本学大学院山田洋平さんと本学風間伸次郎先生(記述言語学)にお話を伺いました。

この取り組みを企画した大学院生の山田洋平さんから、ひとこと

この企画は、大学院生として外語祭に関われたらという思いで動き出したものです。

私たちが研究している言語学は、言葉という極めて身近なものを対象にしているのにも関わらず、どんなことしているのか、どんな意味があるのかあまり知られていない学問です。外語祭で、東京外国語大学の特色である言語そのものを題材にした企画を行うことは、東京外大らしさを一般のお客さんに楽しんでもらえるという意義があります。同時に、私たちの日頃の研究活動にも関心を持っていただこうという狙いもあります。

テーマとして “Le Petit Prince” (邦題「星の王子さま」) を選んだのは、言語学という一見とっつきにくそうな企画を、馴染みやすく気軽に触れられるようにしたいと考えてのことです。企画では、各国言語に翻訳された「星の王子さま」コレクションを展示し、言語の多様性を眺めることができるようにしました。

そしてこれに留まらず、分析しグロス(逐語訳や文法的情報)を付けることで、来場者の方々にも未知の言語を読んでみるという面白さを知ってもらえるよう努めました。

(山田洋平さん:東京外国語大学博士後期課程言語文化専攻3年)

風間先生よりひと言

世界には少数民族の言語なども多数存在し、全部で6,000 から7,000 におよぶ言語があると言われています。そのそれぞれの言語が、それぞれ独自の特徴やシステムを持ち、それぞれの文化を十二分に表現するツールとして機能していることは、驚くべきことでもあり、また想像するだけでも楽しくなってくることだと思います。

今回は、世界中の言語に翻訳されたアントワーヌ?ド?サンテグジュペリの作品 “Le Petit Prince” (The Little Prince, 邦題『星の王子さま』(内藤訳)) をきっかけに、世界の様々な言語に触れてもらおうというのがこの企画の趣旨です。言語の多様性の楽しさを少しでも皆様にお伝えできたらと考えております。

(風間伸次郎先生:大学院総合国際学研究院?教授)

12言語で王子の有名なセリフ「肝心なことは、目に見えないんだよ」と言ってみよう

“Le Petit Prince” は世界中の多くの言語に翻訳されています。それぞれ、その言語からさらに日本語に訳したときに微妙なニュアンスの違いが出てきます。日本語訳とともにどうぞ。

フランス語

L’essentiel est invisible pour les yeux.
「大事なことというのは、目に見えない」

イタリア語

L’essenziale è invisibile agli occhi.
「大事なことというのは、目に見えない」

ドイツ語

Das Wesentliche ist für die Augen unsichtbar.
「本質的なことというのは目に見えない」

アイルランド語

Na rudaí is bunúsaí, ní fheiceann na súile iad.
「最も基本のこと、目というものはそれらを見ない」

ウェールズ語

Mae’r hyn sy’n bwysig yn anweledig i’r llagad.
「重要なことは目に見えない」

ロシア語

Суть вещей незрима для глаз.
「物事の本質は目に見えない」

現代ギリシア語

Την ουσ?α τα μ?τια δεν τη βλ?πουν.
「本質というものを、目というものは見ない」

フィンランド語

T?rkeimpi? asioita ei n?e silmill?.
「最も大切なことは目で見えない」

インドネシア語

Hal yang penting tak terlihat oleh mata.
「重要なことは目で見えない」

スワヒリ語

Ya maana hayaonekani kwa macho.
「重要なことは、目で見ることができない」

タイ語

?????????????????????? ?????????????????????????
「重要な本質というものはどんなものであっても、裸眼で見つめたって見えないんだよ」

ベンガル語

1回目(狐)
??? ????? ???? ???? ????? ???? ??? ?? |
「本当のことは目では決して見ることができない」

2回目(王子さま)
??? ????? ????? ???? ??? ?? |
「本当のことは目で見ることができない」

この展示の背景となっているのは、 東京外大記述言語学研究室(風間ゼミ)が、アジア?アフリカ言語文化研究所「LingDy3プロジェクト(多言語?多文化共生に向けた循環型の言語研究体制の構築))」や日本言語学会「言語の多様性に関する啓蒙?教育プロジェクト」の協力や支援をえて行った「世界の言語で読む『星の王子さま』」のプロジェクトです。翻訳された世界の言語のうち17言語(*)の分析を行いました。

*英語、ドイツ語、フランス語、イタリア語、スペイン語、アイルランド語、ロシア語、現代ギリシア語、エスペラント、アラビア語、トルコ語、ウズベク語、モンゴル語、中国語、ビルマ語、朝鮮語、日本語

言語の分析は例えば次のように行います。

読み方は基本的にラテン文字 (ローマ字のアルファベット) に置き換えることで表しましたが、言語ごとにどんなラテン文字をどんな読み方に使うのか習慣が異なります。

特別講演会:フィールド言語学の現場から「おもしろいぞ言語学」!

本展示期間中に講演会も行います。

講演会の登壇者は日本各地からお招きしたフィールド言語学(実際に言語の話されている地域に赴いて現地調査を行う研究)で活躍する方々ばかりです。ふるって、ご参加ください。

会場: 本学アジア?アフリカ言語文化研究所3階303号室

スケジュール:

  • 11月19日(土)13:00-14:00 :風間伸次郎先生(本学教授)
  • 11月20日(日)13:00-13:40:吉岡乾先生(国立民族学研究所)「悲喜交々だよフィールド言語学」
  • 11月20日(日)14:00-15:00:山田祥子先生(北海道立北方民族博物館)「ウイルタ語を話し「王子様」誕生―サハリン先住民族言語の現在」
  • 11月20日(日)15:20-16:00:呉人惠先生(富山大学)
  • 11月23日(水、祝)15:00-15:40:石塚政行先生(東京大学)「外国語はなぜ重要なのか 能格性と他者性」
  • 11月23日(水、祝)16:00-17:00:新永悠人先生(成城大学)「フィールドワークってどんなこと?ひらがなで書けない奄美の音を聞こう!」
  • 11月23日(水、祝)17:10-17:50:江畑冬生先生(新潟大学)「世界の言語の多様性:「語」に含まれる情報に着目して」

東京外国語大学記述言語学研究室 風間ゼミ、アジア?アフリカ言語文化研究所LingDy3プロジェクト(多言語?多文化共生に向けた循環型の言語研究体制の構築)共催
日本言語学会 後援

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