グローバルに活躍できる国際標準化人材育成
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グローバルに活躍できる国際標準化人材育成を促進するために、多摩地区の5つの大学(電気通信大学?東京外国語大学?東京農工大学(西東京三大学)、東京学芸大学、一橋大学)と産業界とが連携し、グローバル企業のトップによる講演会を6?7月に、ルール形成の実務家による集中講義を9月に開講しました。「国際標準化」とそのルール形成づくりについておさらいします。
「国際標準化」とは
「標準化」とは、工業規格などの技術の普遍的な基準を確立すること、技術の普及や発展の前提を整えることを意味します。要するに、グローバルにビジネスを展開する企業にとって国際標準を獲得することは、国際的な競争力を確保?強化する面で大変重要な役割を果たします。
外部環境が大きく変わる中、日本の企業は
すなわち、国際標準化自体が国際ルール形成作りの闘争であり、ダイナミックな交渉や調整のフィールドということです。我が国は、この国際標準化が持つ性質を十分に認識しておらず、国際標準化への取り組みが弱かったために、技術開発で成功していても国際競争力では優位に立てなかったという苦い歴史を持っています。
グローバル企業に必要な人材
2014年に経済産業大臣の主催により設置された標準化官民戦略会議はこうした反省を踏まえ、産学官からなる標準化人材育成WG(座長:武田晴夫(株式会社日立製作所 理事?研究開発グループ技師長))を組織し、2017年1月に「標準化人材を育成する3つのアクションプラン」を策定しました。「標準化人材」を従来の標準化専門家だけではなく、ルール形成戦略を担う経営者層や標準化を支える人材にまで広げて、標準化の主役である企業が取り組むべき3つのアクションとしてまとめています。
国際標準化ルール形成づくりにおける大学の役割
標準化を支える人材の拡大のために、これから国際社会で活躍する大学生にも、社会に出る前に国際標準化についての理解とセンスを涵養する必要があります。この具体的な取り組みの一つとして、経済産業省と多摩地区の5つの大学(電気通信大学?東京外国語大学?東京農工大学(西東京三大学)、東京学芸大学、一橋大学)そして産業界が連携して、今年度前半に大学生向けの講義を実施してきました。
ルールに縛られるか、ルールを作るか
日本の将来を左右する国際標準化(ルール形成)を学ぶ
東京外国語大学で開講された講演会および集中講義を中心に、多摩の5大学での講義をレポートします。
6月21日(水)@東京外国語大学
講演会:標準化(国際ルール作り)はいかに日本の未来を左右するか
講師:野間口 有 氏(三菱電機株式会社特別顧問、産業技術総合研究所最高顧問)
6月21日(水)、本学において、国際標準化のルール形成を学ぶ講義の第1回となる講演会を開催しました。講師には、三菱電機の特別顧問や産業技術総合研究所の最高顧問でいらっしゃる野間口有氏を迎え、「標準化(国際ルール作り)はいかに日本の未来を左右するのか」と題して講演をしていただきました。標準化の効用や人材拡充の必要性などのほか、三菱電機の例も取り上げて具体的なお話がありました。
集中講義:日本の将来を左右する国際標準化(ルール作り)を学ぶ ―経済産業省、産業界との連携による特別講座―
授業を通じて、「標準化」(国際ルール作り)の定義、その歴史、さらに産業ごとにどのような課題が存在しているのかを具体的に学びました。経済産業省の課長として「標準化」問題の最前線を知る一橋大学の江藤学教授の基礎的な講義のあとで、機械、電機?電子、通信、バイオテクノロジーなど多様な産業の具体的な事例に即して講義が進められました。多摩地区の5つの大学の学部学生は、単位互換制度により履修しました。
講師陣と講義テーマのご紹介
- 標準化の基礎/製品標準とビジネス/試験方法標準/認証ビジネス/イノベーションと標準化 担当:江藤学氏(一橋大学教授)
- 通信の標準化 担当:奥村幸彦氏(NTTドコモ先進技術研究所)
- 電機?電子産業の標準化 担当:大隅慶明氏(パナソニック/電子情報技術産業協会)
- ソフトウェアの標準化と認証 担当:武田晴夫氏(日立製作所/日本電機工業会)
- 自動車分野の標準化 担当:高木真人氏(横河電機)
- 国際市場を開拓する標準化戦略 担当:大野香代氏(産業環境管理協会/日本化学工業会)
- 農業分野の標準化と認証 担当:今瀧博文氏(一般社団法人GAP普及推進機構/GLBOALG.A.P.協議会)
- 標準化と教育 担当:白井俊氏(文部科学省初等中等教育局教育課程企画室長)
- 日本の経済外交と国際交渉の最前線 担当:山野内勘二氏(外務省経済局長)
- 国際交渉の経験から学ぶ 担当:泉泰雄氏(オリエンタルコンサルタンツグローバル理事)
- 集中講義のまとめと総括 担当:江藤学氏(一橋大学教授)
このほか、各大学で次の講演会が行われました。
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7月18日(火)@東京学芸大学
「『学校』の外からやってくる教育の標準化の動き」
講師:小宮山 利恵子 氏(リクルート次世代教育研究院院長)
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7月25日(火)@東京農工大学
「「標準化」で世界を動かしてみませんか」
講師:友野 宏 氏(新日鐵住金株式会社相談役)
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7月31日(月)@電気通信大学
「国際標準化新教育プログラムへの期待」
講師:中西 宏明 氏(株式会社日立製作所取締役会長兼代表執行役)
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関連URL:/event/2017/hyojunka2017.html
―「標準化」問題の最前線を知る― 一橋大学の江藤学教授にインタビュー(元 経済産業省 産業技術環境局 認証課長)
——多摩地区の5つの大学でこの取り組みを行うことの意義は?
この一連の共同講義は、国が主導する「標準化官民戦略会議」の後押しをうけて、東京外大、東京農工大、電通大からなる西東京三大学連携を基礎に、さらに一橋大学と東京学芸大が協力して実施される日本で初めての画期的な講義です。これから国際社会で活躍する若いエリート人材のなかにも、「標準化」についての理解とセンスを涵養しようという試みです。多摩地区の5つの大学がその問題提起に呼応し実現しました。文理協働の観点から東京外大の参加は必要不可欠ですし、他大学にとっても価値が高いと思います。
——学生の皆さんに何かメッセージをお願いします。
国際標準化やそのルール形成のための知識は、ビジネスで戦う上で価値が高いにもかかわらず、まだその意識が定着していない分野ですから、これから社会に出る学生、就職活動を控えている学生にとって、即効性のある有効な武器になるはずです。残念ながら今回の一連の講義を受けることができなかった学生の皆さんも、ぜひ様々な場で国際標準化?ルール作りについて学んでいただき、こうした知識を身につけて社会に巣立ってほしいと思っています。