行ってきました!スタディツアー ~国連ニューヨーク、山形~
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2020年春に世界的なパンデミックを起こした新型コロナウイルス(COVID-19)により、2020年度、2021年度とオンライン形式での実施となっていたスタディツアーですが、2022年度から現地体験型を再開しました。
今回のTUFS Todayでは、スタディツアーの中でも学生から特に人気を誇る「国連研修プログラム(通称:国連スタディツアー)と「地 域活性化のためのスタディツアー」(通称:山形スタディツアー)を紹介します。
ニューヨークでの国連研修プログラム
世界教養科目として実施している「国連研修プログラム」(通称:国連スタディツアー)は、2017年度から開始し、今回報告する2022年度の実施で6年目を迎えます。毎年、冬学期の集中授業として開講し、秋学期に渡航にあたって事前知識として国連の諸活動などをキャンパスで事前学習し、米国ニューヨークに渡航して国際連合本部や国連機関での研修に参加します。帰国後には研修の振り返りの発表会を行い、各自が学んだことを共有します。
コロナ禍はオンラインで実施
コロナ禍全盛期の2020年度?2021年度は、現地渡航がかないませんでした。それでもコロナ禍に負けず学びの幅を広げていくために、現地職員に協力していただき、オンライン形式で授業を実施しました。
オンラインでのスタディツアーでは、国連職員による本部施設のバーチャルガイドツアーを含むさまざまなブリーフィングや、国際公務員のキャリアに関するパネルディスカッションを実施しました。オンライン実施の強みを活かし、例えばWHO(世界保健機関)やIOM(国際移住機関)や、アジア各地の支局、国連人口基金インドネシア事務所や国連常駐調整官ベトナム事務所など、ニューヨークにオフィスの無い機関からも現地職員に参加いただき、お話を伺うことができました。
3年ぶり実施、17名の学生が参加
コロナ禍でオンラインでの実施となっていた国連スタディツアーですが、本学における2022年度からの短期海外留学の再開に伴い、昨年度冬学期の国連スタディツアーにおいても現地渡航形式を再開しました。1?2年生を中心に17名の学生が参加しました。
まずは国連の働きに関する理解を深める
参加学生は秋学期に、国際連合地域開発センター(UNCRD)の元所長である髙瀬千賀?非常勤講師による事前講義を受講して、国連の諸活動について学び、関心のある分野にまつわるグループ学習を行いました。授業は主に英語で行われ、国連の働きをより良く理解するために、まず国連の機構について学び、持続可能な開発目標について考察を深め、その実施状況を学びました。
理解を深めてニューヨークへ
事前学習を経た参加学生は、2023年2月6日?9日の4日間の日程(渡航期間は2月5日?12日)で、米国ニューヨークの国際連合本部および関連機関での研修を実施しました。
渡航にあたっては、プログラム担当教員の髙瀬講師と、プログラム学内コーディネーターの大学院博士後期課程の小栗宏太さんの2名が引率、別業務でニューヨークを訪問中だった国際担当の松隈潤副学長もプログラムの大部分に同席しました。
国連本部における研修では、国連各部局?組織の現役職員から、日々の活動や業務に関する全10回のブリーフィング(報告)を受け、国連の働きに関する理解を深めました。
2月6日
ブリーフィング受講に加え、6日には国連内部のガイドツアーに参加して、各施設の概要や国連の理念を学び、さらにダグ?ハマーショルド図書館のライブラリアンから、国連が所蔵する資料の利用方法を学びました。
2月7日
国連日本政府代表部を訪問し、本学卒業生である安保愛一等書記官から日本政府の国連外交に関するブリーフィングを受けたほか、同じく代表部で働く本学卒業生である専門調査員の松本夏季さんと派遣員の武末崇義さんとも歓談しました。
2月9日
国連で働き本学卒業生でもある、国連オペレーション支援局(DOS)の伊東孝一さん、国連平和活動局(DPO)の今井ひなたさん、国連グローバル?コミュニケーション局(DGC)の中野舞子さんの3名を招き、「国連を職場として」と題したパネルディスカッションを行いました。パネルディスカッションには、国連元職員で、国連グローバル?コミュニケーション局とのやりとりなど、今回の研修の国連側との調整などを補佐してくださった佐藤純子氏も司会者として参加しました。この日の夜には、東京外語会ニューヨーク支部会員と参加学生との懇親会(TUFSグローバル?コミュニティ会合)も開催されました。
ニューヨーク市への理解も深める
国連本部の位置するニューヨーク市への理解も深めるため、学生たちは国連での研修だけではなく、研修前日の5日にバスにて市中を視察し、10日には自由行動で各自興味のある施設を訪問しました。
世界を舞台に活躍することを夢見る
卒業生を含め、国際機関で働く方々に直接お話を伺うことは、世界を舞台に活躍することを夢見る学生にとって、自身の将来を考える貴重な機会にもなったはずです。国連本部で4日間を過ごし、そこで働く人々の姿を目にすることで、これまで単なる遠い組織だと思っていた国連が身近に思えるようになったとの声もありました。研修最終日には、国連本部ビルからの景色を名残惜しそうに眺め、将来またここに戻ってくることを胸に誓う学生の姿も見られました。本プログラムに参加した学生たちが、今回の体験を励みに、夢に向かって?ばたいてくれることを楽しみにしています。
関連リンク
- TUFS Today特集「平和への国創り ?国連職員 伊東 孝一さんインタビュー」(2023.04.06掲載)
- 東京外国語大学TOPICS「ニューヨークでの国連研修プログラムを3年ぶりに実施、17名の学生が参加」(2023.02.20掲載)
- 2023年度冬学期国連スタディツアー説明会(準備中)
地域活性化のためのスタディツアー in 山形
本学では、少子高齢化や都市への人口集中といた日本がかかえる課題を、現地を訪れ体験することにより理解を深め、地域を活性化し、持続可能な社会をつくるためにどのような方策があるか、地域の産業を強くし、定住人口や交流人口を増やすことにつながる取組みを地域住民とともに考え提案することを目標に、夏学期と冬学期にそれぞれ事前事後学習と現地スタディツアー(通称:山形スタディツアー)を実施しています。実施にあたっては、山形県、そして山形県の4つの自治体(寒河江市?白鷹町?高畠町?飯豊町)と連携協定を締結し、自治体のご協力を得るとともに、地方企業の海外進出を後押しするJETRO山形のアドバイスを得ながら実施しています。
コロナ全盛期はオンラインで実施、2022年度から現地型再開
山形スタディツアーも、コロナ禍全盛期の2020年度?2021年度は、オンラインと「東京で知る山形」と題し、東京で山形ゆかりの場所を訪れる等の工夫をしながら授業を実施しました。2022年度夏学期より現地訪問型のスタディツアーを再開し、今年度は夏学期?冬学期あわせて46名の学生が参加しました。
地方創生という社会への貢献
日本の各地で起きている少子高齢化による地方産業の後継者不足、「観光立国」といわれるにも関わらず、訪れる側も受け入れる側もお互いに十分な理解のないまま、日本の表面的な文化や景観を「観光化」させる現状の問題など、地方ではさまざまな問題を抱えています。
本学の特色でもある世界諸地域への理解力や、さまざまな国からの外国人留学生の視点を取り入れ、これらの問題の解決に向かう糸口を見いだすために貢献することを第一の目的としています。
日本社会の構造的な問題を理解する
国際的な視点と教養を基礎として世界で活躍するには、自分たちが拠ってたつ日本社会の構造的な問題を理解し、問題解決の道筋を考える姿勢と思考力を身につけることが必要です。日本人学生と留学生とがともに日本社会の問題を見つめなおし、現地でともに考えることで、お互いに成長していくことをめざしています。
まずは山形県に関する知識、
現状と問題点などの理解を深める
山形スタディツアーに参加する学生は、まず府中キャンパスにおいて、事前学習に参加します。事前学習では、山形県庁、山形県東京事務所、JETRO山形などの協力を得て、山形県に関する知識、インバウンドの現状と問題点、日本企業の海外進出などの専門知識を学びます。
地域活性化は「観光」でなし遂げられるものなのか、コロナを経験し、「観光」に依存しすぎることがどのくらい危ういものかを身をもって体験しました。「一過性の観光」に依存するのではなく、他の地域にはないその土地の歴史?産物?景観?人々の暮らし?ものの考え方を知ってもらい、地域を理解してもらい、再び訪れたい、住みたい、と思ってもらうことが大切ではないか。あるいは、地方の産業を活性化するために地域の産物を海外に輸出するにはどのような工夫が必要か、などの問題意識をもちながら、理念と目標を踏まえたスタディツアーとなるよう事前学習を行います。
2022年度、夏は25名、冬は21名の学生が参加
2022年度は、夏学期は、寒河江市?白鷹町?高畠町?飯豊町で合計25人の学生(日本人学生20人?留学生5人)が、冬学期は、寒河江市?高畠町?飯豊町で合計21人(日本人学生12人?留学生9人)の学生が山形スタディツアーに参加しました。
さまざまな国?地域からの留学生が参加しました。インドネシア、オーストラリア、モンゴル、タイ、ドイツ、中国、チェコ、そして日本。コロナ禍前には、カナダ、カンボジア、韓国、ギリシャ、コロンビア、ジョージア、台湾、メキシコ、ハンガリー、フィリピン、米国、マレーシア、ミャンマー、ラオス、リトアニアの留学生も参加しました。東京外国語大学ならではの多彩さです。
現地での活動
4自治体では、それぞれの地域の特性を活かしたプログラムを考えてくださいます。コロナ禍前には1週間滞在し、その間に調査?実践に参加し、最終日に現地報告会を開き、参加学生たちが、地域の現状の課題と、その解決方法に関する提案をまとめたプレゼンテーションをおこないました。2022年度夏冬学期から、現地スタディツアーを3泊4日に縮めて現地報告会をなくし、かわりに事前事後学習の時間数を増やしました。学生たちの報告会は、事後学習の成果をふまえて、全体報告会という形で、大学で実施し、山形県の皆さんにはオンラインで参加していただくようにしました。2022年度夏学期は、寒河江市?白鷹町?高畠町?飯豊町で9月16日から19日の3泊4日で、冬学期は、寒河江市?高畠町?飯豊町で2月11日から14日の3泊4日で実施しました。
たとえば次のような活動をしました。
寒河江市での活動【冬学期の例】
- 「やまがた音と光のファンタジア」スタッフとして参加
- 学びの里TASSHO冬体験メニュー(スノーチューブ、スノーシュー他)
- 寒中いちご狩
- 慈恩寺テラス見学
- そば打ち体験
- ゆ~チェリー 温泉体験
白鷹町での活動【夏学期の例】
- 白鷹町の観光についてインタビュー
- 白鷹町の文化施設訪問
- そば打ち体験
- 鮎まつり
- 深山和紙作り
- どりいむ農園 インタビュー
- 紅花について学習、紅花畑訪問
- 歴史民俗資料館訪問
成果報告参照:https://tufsyamagata.jp/%e7%99%bd%e9%b7%b9%e7%94%ba/
高畠町での活動【夏学期の例】
- 文化財等見学(旧高畠駅舎, 観音岩など)
- 岩壁音楽祭スタッフ
- まちづくりワークショップ
- 町民?方へインタビュー
成果報告参照:https://tufsyamagata.jp/%e9%ab%98%e7%95%a0%e7%94%ba/
飯豊町での活動【冬学期の例】
- どんでん平スノーパークで体験、観光協会へのインタビュー
- 菅を使ったコースターづくり体験
- ヤハハエロ体験
- 餅つき
- 添川小学校で6年生と交流、クロスカントリー体験
- 除雪体験
- NPOまちづくりいいでの方々とお話
- 添川児童センターの子どもたちとそば打ち体験
成果報告参照:https://tufsyamagata.jp/%e9%a3%af%e8%b1%8a%e7%94%ba/
事後学習、成果の還元
府中キャンパスにおいて、成果報告会を開催して、参加自治体ごとの成果を発表します。2022年夏学期は9月29日に、冬学期は2月21日におこないました。山形県の関係者の方々は、オンラインで報告会に参加して、コメントをくださいました。報告した成果をブログにまとめて公開していますhttps://tufsyamagata.jp/。自治体の側では、2018年度から学生たちが提案した方策について、実現可能なものから順次、実施するように検討していただいています。たとえば、高畠町では、海外バイヤーと地元企業との商談会を実現していただきました。
参加学生たちは、全体報告会終了後に、個人レポートを作成し、実践と学びを振り返ります。
ウェブサイトでの発信
参加学生が主体となり、山形スタディツアーのWebサイトを複数運営しています。
下記の公式ブログから、リンクもはられています。ぜひご覧ください!
地域活性サークル「いもに会」
参加学生が主体となり、「いもに会」というサークルを結成しました。山形スタディツアーは、個人で行う旅では得ることのできない貴重な経験をすることができます。地域の方々との交流やつながりを大切にし、その後の人生に活かしていただきたいと、担当教員たちも「いもに会」を応援しています。
関連リンク
※2023年度夏学期から、山形市も参画してくださることになり 、5自治体へのスタディツアーとなります。