2021 新任教員?退任教員紹介
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2021年に新規に赴任された先生方、退任された先生方を紹介します。
退任教員紹介
昨年度、定年退職?退任された先生方からのメッセージとオススメの本を紹介します。
今井 昭夫 先生 / IMAI Akio

退職時:理事?副学長、大学院総合国際学研究院 教授
1974年に外国語学部インドシナ科に入学して以来、47年間、本学にはお世話になりました。とりわけ専任教員となった33年間の同僚の教職員の皆様や学生諸君のご支援に心より感謝いたします。
本学は外国語大学ということもあり、きわめて優れた語学の才能をもった教え子が何人もおりました。その能力を十二分に発揮して活躍している人もいれば、必ずしもそうではないケースもあり、後者のケースについては教師として忸怩たる思いと悔いが残っています。また一面的にのみ学生の語学力を判断し、総合的な語学力を見損ない、学生を正当に評価できなかった個人的な苦い思い出もあります。ぜひ本学の英語入試や語学教育においては、四技能をバランスよく考査し、育成していく努力をさらに続けていってもらいたいと思います。
恩師の河部利夫先生、田中忠治先生は本学に外国学?地域研究を根付かせようと努力された先達ですが、不肖の弟子としては、本学での地域研究が一層盛んになっていくことを願うばかりです。本学の特性を活かした本学らしい地域研究があるはずだと確信いたしております。
さて4月から多文化共生センター付きの特定教員を務めさせていただきます。皆様には引き続きよろしくお願い申し上げます。
おすすめの一冊
ロバート?マクナマラ編著、仲晃訳『果てしなき論争』共同通信社、2003年
ベトナム戦争で敵対した米国と旧北ベトナムの指導者が戦後の1990年代後半におこなった対話の記録。「批判的オーラル?ヒストリー」の実践の書。相互理解の「深い共感」(地域研究の目的)が痛感される一冊。
藤井 毅 先生 / FUJII Takeshi

退職時:大学院総合国際学研究院 教授
インドを中心として南アジアのことを長年学んでいますが、そのなかで明治初期から今日に至るまで、そこを訪れた人たちが書いた紀行文や旅行記、それにルポルタージュを可能な限り網羅的に読むことを心掛けてきました。これはもう、習い性となってしまったものですが、対象となる地域には、いつのまにやら自分が訪れた土地も含まれるようになってしまいました。
こうして数多の作品を手に取ってきましたが、描かれた事象や情景が現実に圧倒され陳腐なものと化すこともなく、また、ことばが磨り減り解体することもなく、時の流れを乗り越えて読み継がれうると思われたのは、残念ながらそう多くはありません。これは、書き手には未だなりえていないものの、熱心な読み手ではあったと自負する当方の率直な感想です。
ここではインド以外の地域について、そうした数少ない何冊かの本を取り上げたいと思います。いずれも個人全集に収録済ですが、まずは手軽に読める文庫本を示すことにしましょう。
おすすめの一冊
金子光晴の5著『マレー蘭印紀行』、『どくろ杯』、『ねむれ巴里』、『西ひがし』、『マレーの感傷』(いずれも中公文庫。現行版の刊年は、順に2004,04,05,07,17)
開高健の2著『流亡記/歩く影たち』(集英社文庫、2020)、『ベトナム戦記』(朝日文庫、1990)
その昔、吉祥寺で幾度か金子光晴を見かけたことがあります。後に彼が描いたマレー半島のバトパハまで、そこをただ見んがためにのこのこと出かけて行ったことを思い出します。開高健は、当方が在外研究のためヨーロッパに向かう直前に亡くなってしまい、その音容に接することはありませんでした。しかし、二人の作品は、今もなお生き続けているのです。
楠本 徹也 先生 / KUSUMOTO Tetsuya

退職時:大学院国際日本学研究院 教授
1990年、当時中河原にあった付属日本語学校に欧米かぶれの尖がった若造がやってきました。それから31年の時を経て欧米的価値観に盾突くナンチャッテ保守おじさんとなり大学を去ります。それが私だったように思えます。価値の相対性を認めなければならないが、現実はそこに優劣が生じあるものが絶対化していく、そんな相克の狭間で悩みながら頭の中が平板化していった31年でした。それが成長というならば、そんな自分を育ててくれた東京外国語大学に感謝しなければいけません。極めて世渡りの下手な自分でありましたが、思想的ドグマに陥らず、また時流に乗ることなしに真理真実を追求する姿勢がどれだけ学生に伝わったかなと思いを巡らすこの頃です。退職後は、盆栽にゲートボール(金持ちはゴルフだが自分には縁遠い)とはいかず、まだまだ日本語教育の分野で頑張りたいと思っています……若い人から煙たがれないようにと。
おすすめの一冊
『日本語は哲学する言語である』(小浜逸郎著、徳間書店)
「非論理的で曖昧で情緒に流れる」とされる日本語を、近代において優越的地位を占める西洋論理との離別のもとで考察しています。様々な文法現象の検証を通して「日本語独特の世界把握の仕方を明らかに」し、そこから「人間の本性の解明」を目指しています。私たちの思考が深まる、大変読み応えのある一冊であります。